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3月に読んだ本



 3月は、2月に比べて読むペースは遅かった。読めるときに読んで、再読が多かった気がする。好きな本を何度も繰り返して読んでいた。


 今振り返っても思い出せないくらいに空虚な3月が一週間と少しくらいあったけど、読書をしていた記憶はあるので、本以外のことは消去されたらしい。なんとスペックの悪い。悲しい気持ちにのまれていたからだろう。読書をしようにも文字が追えない日もあった。


 出会いも別れもなくフラットな日々だったが、焦りと罪悪感に追いかけられていた気がする。今のわたしは落ち着いている。感情にのまれやすいのでもっとオンオフを切り替えられるようになりたい。


 3月も読んだ本たちにたくさんの刺激をもらった。本を読むことで新しい自分を見つけた。思想も表現も際限がない。楽しい。際限がないのが嬉しい。芸術のシャワーを全身で浴びたい。何色でもいいので染み込ませたい。



 そんな3月、読んだ本たち。 ※(再)は再読の意


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・ムーミンシリーズ トーベ・ヤンソン 

   ムーミン谷の仲間たち 

   ムーミンパパ海へ行く

・うたうおばけ(再)   くどうれいん

・発光地帯        川上未映子

・夏物語         川上未映子

・水の聖歌隊       笹川涼 

・のどがかわいた(再)  大阿久佳乃

・バームクーヘンでわたしは眠った(再) 柳本々々

・蕎麦湯が来ない(再)   せきしろ×又吉直樹

・若草物語(再)      L・Mオルコット

・えーえんとくちから(再) 笹井宏之

・たやすみなさい(再)   岡野大嗣

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 でした。ほとんど再読。というのも1ヶ月本屋に行ってなかったので、ひたすら本棚から読みたいものを取っては読むを繰り返していた…な…



 ムーミンシリーズを去年の冬に買ってから、ゆっくり読んで楽しんできて、全9作品あるうちの、7作目までたどり着いてしまった。あと2作品。残りも時間をかけて読みたい。

 ムーミン谷の住人はみんな個性溢れていて、登場人物それぞれがしっかり自分を生きているところに憧れを抱いている。わたしは、なんでも人に合わせがちで、自分の意思を抑制しちゃうので、自分の意見というよりは、「相手はきっとこう言ってもらいたいんだろうな」とか、「こうするのが求められていることだ」とかを考えてやっちゃう性格。よくないと思いつつもそれで生きてきた人生。

 でも彼らを見ていると、思うままに言葉を発して、思うままに行動することって、生きていく上でとても必要なことなんだと気付かされた。それがわがままだと捉えることができる場合もあるんだけども、彼らは受け止めるんですよね。「それが彼だから、彼女だから、それでいいし、その気持ちもなんかわかるから、うまいことこっちが合わせるよ。そのかわりいつか、何かの時には、こっちのことも理解してもらうことはあるだろうけど」っていうスタイル。そこがいい。なんと寛容な世界。自分にも相手にも世界にも寛容な世界。

 できるだけ優しくありたいし争いたくもないと思っていても、そうはいかないから人間らしいんだね。傷つくことも傷つけることも、ちょっとはあっていいし、(本当はできるだけ傷つけたくないし傷つきたくもないけど)そのたびに受け止めたり流したり、いろんな言葉や態度で向き合って、いろんなことに折り合いをつけて行くものなんだろう。人生穏やかに生きていくためのアドバイスを教えてもらったのでした。彼らと同じ世界には生きられないけれど、同じように考えることはできるしね。少しずつ活かしていきたい。


 そのほか歌集やエッセイを再読しまくってたくさんの刺激をもらっていて、想像力高めたり、心を落ち着かせたり、作者の見てきたもの感じたものを分けてもらって、わたしの生活では知れないことを知って、心の海を豊かにしていった。自由律俳句も短歌も川柳もそれぞれとても魅力的。お気に入りの一句や一首を、心の漢方薬がわりにしているから、ほぼ毎月再読している。

 その中でも、新しく迎えた笹川涼さんの『水の聖歌隊』がめちゃくちゃよかった。

椅子に深く、この世に浅く腰かける 何かこぼれる感じがあって

 という短歌からはじまって、いきなり胸を…もう…撃ち抜かれるというか…青い宇宙へ飛んでっちゃうというか、無になっちゃうというか…

 素敵な批評がまったくできないし、鑑賞している自分に湧いてくる感情をどう表現したらいいのかわからないし、表現しちゃったらせっかくカタチあるものが流れ落ちてなくなっちゃうような感じがしちゃうから難しいけど、わたしのこの感情は、今頭の中で漂っている青っぽい世界すべては、どこからいらしたんだろうか。笹川さん、あなたはわたしにあたらしい世界を作ってくださったのです。ありがとうございます。と言いたくなった。

 鑑賞して想像してその空間を「感じる」という経験。感情じゃなくて空間を感じる。シーン。その一瞬を止めて見ているわたし。時間。文字を目で見て飛び込んでくるすべて。スローモーションよりも走馬灯に近いような。笹川涼さん、あなたは一体何を見ているのです、何を感じているのです、何を生んでいるのです。素敵です。

 創作することの素晴らしさも再確認した作品。短歌も自由律俳句も、もっともっとたくさん鑑賞したいと思ったし、生み出したいも思ったのでした。


 そして川上未映子さんの『夏物語』。これも頭と心がよく動いた作品だった。

 わたしの3月のベスト本かな。『水の聖歌隊』と並んでるかも。

 『夏物語』が発売される前に『乳と卵』を読んでいたのだけど、これは先に読んでおいてよかった。『乳と卵』を少し広げて書かれていた第一部。母である巻子と娘の緑子の話。第二部は巻子の妹である夏子の話。視点はどちらも夏子中心だったので、(第一部は緑子の日記があったので、日記を通して緑子の視点もあった)第二部が今作のメインだったのだろう。そっちも合わせて『夏物語』な訳だけども。

 実はこの作品、読みたいな〜と思いつつもなかなか手が出せず、ブックオフで見つけて買ったもののずっと読めなかった。さわりだけ読んで、エネルギーを使う作品なんだろうな…と察してから、読む勇気が湧いてこなかった。なんだか自分の中の何かを見透かされるような気がして。でも読んだ後に、もっと早く読んでおけばよかったな〜〜。と少し後悔した。天邪鬼め。

 後悔したけども、本を読むタイミングって結構大事で、買ってすぐ読んでも楽しめるけど、今じゃなかったらこの気持ちを抱けなかったかもしれないと思うと、結局これはこのタイミングで読めてよかったんやな、偶然であり必然なんだな、というとこに落ち着いたのだった。

 女として生きていくうちにある女だからこその悩みが詰まっている作品なので、共感することはたくさん。だからこそ感情移入してしまって、ノートにたくさん殴り書きしたのを思い出す。ただ、わたしはこの作品を、誰かにわかってもらいたくて読むというよりは、自分が自分を理解するために読む、という感じだったので、また別の記事で感想をまとめようとは思っている。

 わたしのことでもあり、また、いろんな人たちのことでもある、そんな物語だった。


 すんごい作品に出会ってしまった、3月でした。


 4月はどんな作品に出会うだろう。そしてどんなわたしを見つけるだろう。


 青野佑季



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