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雨は降らないと思っていた



 最近日記が滞りがちだ。続けられるだけ続けていくつもりではいるけれど、毎日投稿の目標はとっくに達成できていないのだけど、書く余裕がないくらい落ち込んだり、体調がすぐれなかったりする時もあれば、書く手間を省いて今は読むことに集中したかったり、つくることに集中したかったりもするので、なんにせよ、毎日とりあえず生きているので、ゆるゆると続けて行こうと思う。そのうちこの日記のサムネイルも違うものにイメチェンしちゃおうとしてる。思案中。


 今日は通院日だった。雨が降るよと昨日から聞いていて、だからなのか朝はそれほど寒くなかった。布団から出るのも苦じゃなくて、そのままリビングに行って、今日は寒くないねと家族にいうと、ええ?そう?と言いながらこたつにすっこんでいる妹と母がいた。寒そうね。私はそうでもないんだよね〜と言いながら白湯を飲んだ。とはいえずつーがすごい。頭痛。雨降るからかなあ。曇っているのは窓越しにわかっているのだけど、降ってはいなかった。もしかしたら降って、冷え込むかもしれないなと思って、寒くないのだけど寒くなっても大丈夫な格好に着替えた。傘も珍しく持っていった。いつも忘れるから。

 いつも通りの診察とカウンセリングを終えて帰った。結果、雨は一滴も降らなかった。寄り道までしたけれど降らなかった。降らないんかい。これだけ降りそうな、重たい灰色の空がべったり張り付いているのに、今にもポツポツと雨粒がフロントガラスに落ちてきそうなのに。一滴も降らないんかい。珍しく傘なんて持ってきたからか。その代わりのずつーがすごいよ。目の奥がすんごく痛い。どうしたらこれは治るのだろう。この気候のせいだと思いたい。

 そうこう思いながらの運転途中、少しだけ渋滞に巻き込まれた。堤防沿いが道路整備をされていて、行きも片道を塞がれて、警備員が白い旗を振ってくれるまで待ったので、帰りも然りだった。止まっている間に川を眺めていたら、川面がだんだん粘土のように見えてきてびっくりした。どんよりした雲を反射した鼠色の川が、風に煽られて絵に描いた波のように小刻みにギザギザしているので、嘘モノのように見えた。いつもなら数羽、鴨が浮いているのにそれすら見当たらなかった。そこら変の草むらで凌いでいるのだろうか。


 ぼーっと眺めているうちに前の車が進み始めたのでアクセルを柔らかく踏んだ。ふと前の車のナンバーを見ると、見覚えのあるナンバーだった。でも私がずっと覚えているナンバーとすこしだけ違っている。これは三桁。私が覚えているのは四桁。高校時代好きだった人の車のナンバーと一文字違いだった。

 人の車のナンバーを覚えることは基本的に苦手なのだけど、その人のナンバーだけはどうしても忘れられずに未だににたナンバーを見かけると好きだった頃を思い出す。片想いで終わった人で、それはもうどう頑張っても片想いで終わるしかなかった恋だった。切なくはない。

 好きだった人の車のナンバーの最初の二桁が、おそらく彼の名前の頭文字に当たる数字だった。(例えばヒフミさんなら123みたいな)そして、下二桁はどういう意味でつけられているかわからなくて、でも、語呂はいいので覚えていた。新しい車に変わっても同じナンバーだった。何か意味があるからその数字を当てているのだと思っていた気もするけれど、最初の二桁が名前の頭文字の時点で察するべきだったと思う。でも、若かったあの頃の私も、その後似た数字を見かけるたびに思い出していた私も、全く気づかなかった。

 今、この日記を書いている今は、その意味もすっかりわかってしまっていて、どうして今、そんなことに気づいてしまったのだろうと思いながら書いている。

 今日も、似たようなナンバーを見かけたその時は、今までと同じようにその時代を思い出していた。好きとちゃんと言わなかったこと、3年間しっかり片想いしたことなど、なんか若かったな〜なんて少し恥ずかしくなったりもした。そうして、前を走る見知らぬナンバーは一桁足りなくて、一桁足りないのでは意味ないんだよな〜とひとりつぶやいた。

 その時、好きだったその人が結婚した知らせをSNSで知った時のことを思い出した。当時すでに3年間の片想いを終えて別の恋愛をしている時だったのだけど、ひえ、だかえっ、だか、よくわからない悲鳴をあげていたことを覚えている。ショックだったような、マジかよ〜〜だったような。色んな意味で衝撃を隠せない知らせだった。そこから先のことは、なんでだかいろんな因縁が絡みついて、すっかりグレー色した思い出になってしまった。祝福の気持ちはあれど後味は最悪というモノだったのであんまり思い出したくはなかった。

 でも、今更、結婚相手の名前を思い出した。いや、お相手も十分知っている名前だったので知らないはずもなかったのに、なぜ、今まで、その可能性に気づけなかったのだろう。

 至極簡単な話で、私があの人と出会って、好きになる前から二人はすでに恋人関係で、だけど公には一切しない代わりに、車のナンバーを二人の名前の頭文字で並べていただけだったのだ。3年間の片思いは、ときめきを感じたあの瞬間からすでに終わっていたのだった。それのことについて、今日、ついさっき、知ったのだった。なんと長い。軽く10年。むしろ今まで気づけなかったことがすごいと思う。馬鹿すぎると思った。果てしなくいつまでも、ずっと平行線以外の何者でもなく、交わることなんてたったの一回もあり得なかったのだった。些細なことで嬉しかったり、名前を呼ばれただけでくすぐったく感じたりしていたあの頃の私の気持ちは、ただほんとうに、私だけのものだった。

 頭の中で眠っていた電気回線が急につながって脳内が光ったような気がした。名探偵しかり、謎が解明された時ってこんなにスッキリした気持ちになるのだなあと冷静に思った。

 未練なんてさらさらなくて、もはや不快な気持ちで幕を閉じていた分、ここで納得できたのでよかった。今更深く掘り下げて思い出す必要もない。

 何もかもを全く知らなかったから、健全なつもりで片思いをしていた私は、健全に、密かに、愛を育んでいた二人の邪魔をしていた私の話になっている。なんて恐ろしい。何もなくてよかった。永遠に幸せでいてくれよとも思わない。

 ただそうであった、という話。



 久々の日記がこれってどうなの、という感じだけれども、供養のつもりで。


 夜更けまで読書をしよう。そうしよう。



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