青白き月光の肌を撫でる

　

　昨夜から吉本ばななさんの『ムーンライト・シャドウ』が公開日だったらしく、パンフレットがあまりにも魅力的すぎて、パンフレットだけでも欲しいと思いながら眠り、朝から映画館へ行った。とても幸先のいい夢をみたので、起きた瞬間から、今日はなんだかいい日になる気がすると思っていた。が、基本的にやる気になったら時間に余裕をもって行動したい私、人の混み具合を考えて運転したいし、映画館も同じく人がたくさんいるのであればパンフだけにしようと思い、全てを巻きのつもりでせかせかと用意して向かっていたら、教習車を追従するわ、みょうに速度制限以下の車に遭遇するわで予定していた時間に間に合わないような気がしてきてそわそわと焦ってきた、これではいけない落ち着かねばと久々に車内で音楽をかけた。YUIの曲をランダムにしていたらどの曲も覚えているし歌えるしで楽しくなってきて、マスクしていてよかったなって思うくらいに熱唱していた。そんなこんなでついたのが上映の10分前。想像以上にがらんとしていて、パンフレットを買った直後まで観るか悩んだが、なんか流れで飲み物も買っちゃったしで、悩みと裏腹に本心は観る気であったらしく、チケットを買ったら4番スクリーンへと案内された。館内ではいちばん小さいスクリーンだったが、まばらに客は座っていた。カップルだったり、男性一人の客が多かった。ばななさんファンの方かな。映画館は基本上のほうの端っこで観るのが好きなので今日もいつも通りの場所で座った。ここ数年邦画を映画館で観ていなかったので新鮮な気持ちだった。頭の中で高速で原作のおさらいをしながら（ほとんど忘れてしまっていたのだけど）本編を観た。アレンジは加えられていたけれど吉本ばななさんの世界観は崩されることなく、むしろとても、美しかった。久々に観た邦画がこの作品で良かったと思う。『海のふた』も良かったし、ばななさんの作品の映画化はハズレないなと個人的に思っている。原作読んでて映画化して残念、みたいなことってよくあるのだけどね。私の理想が変に高いだけかもしれないけれど。なんにせよとても良かったです。原作を読み直したくなった。鞄には一応、入れておいたのだけど、ほとんど開けぬままだった。

　そしてまたこのパンフレットがとっても豪華だった。写真よりも活字が多め。本だよ。装丁は美しいしスピンだって綺麗だし、収録されている谷川俊太郎さん、岡野大嗣さん、木下龍也さんの詩や短歌が書き下ろされていて、観終わってから読んだことで詩からも短歌からもそのシーンが脳裏にパッと浮かぶ。それだけ、『ムーンライト・シャドウ』という作品が愛されているんだよね。愛を強く感じた。原作読めばまた印象が変わるかなと思っている。好きな歌人が寄稿されているというだけで欲しかったパンフレット。（すみません）原作知ってるから映画見なくても…なんて思っていたけど、観た方がいいわどう考えても。観たからいいけど。良かった。

　午前中は映画で心が潤い、夕方からも買い物へ行った。『ONE PIECE』の99巻と100巻（101巻と繋がる表紙なんだもん欲しいに決まっとる）『ルックバック』を買い、小説はチラッと棚を見たけど心から読みたい本はないな、（家の本棚の方が読みたいのあるわ）、なんて思って特に買わず、珍しく雑貨を買った。スリーコインズでアロマキャンドルとその周辺の雑貨、洗い物で割ってしまったグラスを再購入。あとシルバニアファミリー。この歳になってこんなにハマると思わなかったよ。可愛い天使たち。夜な夜な動いて遊んでくれてても私は動じないよ。それくらいであってくれいっそ。可愛いから許せる。

　中古品は基本的になんでも除菌シートで拭いたり人形や衣装も洗ってあげたりする。洗濯用洗剤やらハイターやら使ってやると、綺麗に見えて案外汚れているのを目視できるので、うちへ来た限りは大綺麗にしてあげるし大事にするから心配しないでおくれよ…と聖母のような気持ちになる。これを母性と言うならそれでもいい。しかしこの妖精のキャラクターたちが破格で手に入るとは思わなかった。（ちゃんと相場見て値段つけたのかと心配になるレベルだった）シルバニアに目覚めた当初は妖精はあまり可愛くないのでは…？なんて思っていたがとんでもない。めちゃくちゃ可愛い。ちょっと小さめサイズなのもまたいい。猫にやられないようにすることだけは気をつけておきたい。空気読んでるのか今のところシルバニアには興味はないようなのでずっとそうであって欲しい。

　夜、家族の会話が久々に盛り上がって読書の時間はなかった。ギターを少しだけ弾いた。近隣住民がいないので（マンション、周りが空室）迷惑にならないのでありがたい。このまま眠りの限界が来るまで短歌を作ることにする。連作って難しいね。でもやりがいあるね。

　嬉しかったこと楽しかったことを経験して心がちょっと動き出した。熱を持っている。エンジンがかかっている。エンストしないで動き続けている。結局、日付が変わるまでに気持ちを収めることはできなかったな。まあ、いいことだからいっか。明日も引きずっててもいっか。前向きな気持ちだし。リセットする必要はない。

　頭を空っぽにして、満たして、また空っぽにして、満たす、を繰り返している。満たしてばかりではパンパンになるので、どこかで整理整頓して、清涼な空気が通り抜けられる隙間を意図的に作らないと普通と保てないタイプの人間だな、とちょっと気付けた。さっき。

　嬉しい気持ちのまま眠って海へ行きたい。せめて夢の中だけでも。