セラムン二次創作小説『LOST MEMORY』


「衛、次の休みに2人で出かけるか?」

「うん!」

「よし決まりな!どこに行きたいか、何をしたいか出かける日まで考えといて」

「わぁーい、パパとお出かけ~♪」


衛の父親は子供が好きで子煩悩。

子育てにも積極的に参加している。

そんな父親は普段は祖父から受け継いだ会社を幾つも経営し、多忙な日々を送っているが、子供や妻との時間もとても大切にしている為、家族で過ごすプライベートな時間もきっちりと取っていた。

そして次の休みには衛と2人でゆっくり過ごそうと考えていた。


「あら、衛と2人だけ?私は?」

「ごめんごめん。君もたまには子育て休んで1人でのんびり羽を伸ばしたいかと思ってね」

「とか何とか上手いこと言って、衛を独占したいだけでしょ?妬けちゃう!」

「はは、参ったな。ヤンチャな男の子だから大変だろ?」

「まぁ助かるけどね。でも全然手がかからないのよ?確かに活発な男の子なんだけど……うさぎちゃんのお陰かな?」

「よく2人で遊んでるんだっけ?仲良いなぁ~。お兄ちゃんとしてしっかりして来たってとこか?」

「なら良いんだけど……」


言い淀んだ母親は一物の不安があった。

2人が仲がいいのはいい事だが、それ以上の何かを感じ取っていたからだ。

まだ小さい子供同士なのにあまりにも仲が良すぎる。

そんな心配をする母親を他所に父親は鼻歌を歌いながら衛と楽しそうにしている。

呑気で良いなと羨ましく思う。



そしてあっという間に日は経ち、父親の休みの日がやって来た。

空は青く澄み渡っていてお出かけ日和。

まるで2人のお出かけを歓迎しているかのように雲ひとつ無い正に快晴だった。


「すっごい天気いいね♪パパがお仕事頑張ったからだね!」

「衛が良い子で待ってたからだよ」

「じゃあ僕達2人が頑張ったからだ!」

「そうだな。で、衛、どこへ行きたい?したい事とかあったら何でも言ってくれ」

「うん、公園でパパとキャッチボールしたい!」


活発で元気な男の子らしく、リクエストはキャッチボールと体を動かす事だった。

グローブとボールを物置部屋から取り出し、近くの公園へと歩いていくことにした。

お互い、自分のグローブを持ち2人は手を繋いで目的の公園に向かう。その間も衛は楽しそうにスキップしている。歩幅の大きい父親の足の速さと丁度いい速さになる。


公園に着くと早速キャッチボールを開始しようとお互いの距離を置く。

衛がどれだけの距離を投げられるか分からないため、最初は5m位から距離を置いてみることにした。


「この位の距離でいいか?」

「そんなの楽勝だよ!」


そう言いながら衛が投げると、得意げになっていただけあり、グローブに球がズッシリ重く入って来た。


「おお、衛やるなぁ~。じゃあもう少し距離とろう」


投げては距離を離すを繰り返す。

距離が遠くなるにつれて父親は衛の成長を感じて、子供の成長の速さに驚いた。


「結構遠くなったぞ!衛、凄いじゃないか!」

「えへへー男の子だからね!ママやうさちゃんを早く守れるようになりたいんだ!」

「男としての責任って奴だな?早いなぁ」

「責任?」

「男だから女性を守りたいと言う気持ちの事だ。まだ衛には難しい言葉だったな」

「そんな事ないよ!責任!何となく分かるよ?」

「背伸びしてるなぁ~」

「してないよ!」

「衛はうさぎちゃんの事、本当に好きなんだな?」

「うん!うさちゃんは僕の大事な人だよ!結婚するんだ」

「そっか、約束したのか?」

「うん、うさちゃんもしたいって」


ボールを投げる度に会話をする。

文字通り言葉のキャッチボールだ。

その会話の過程で衛がうさぎと将来の約束までしている事を知り、驚く。

確かに仲が良いとは思っていた。

だがまだ子供だ。その範囲で仲が良いのだと思っていた。

けど実際は違っているようだ。

結婚の約束までしているとは……。

いや、まだ意味も何もわからずただ一緒にいたいだけなのだろうと父親は思い込もうとした。


「そうか、良かったな!」

「うん!」


それ以上の事は言えなかったし、聞けなかった。

話題を逸らすことにした。


「保育園はどうだ?友達は出来たか?」

「うん、和永くんでしょ、彩都くんでしょ、勇人くんに公斗くん!」

「4人も仲良い子が出来たのか!凄いじゃないか」

「みんなすっごくいい奴らだよ!」

「良かったな!大切にしろよ」

「うん!僕、疲れてお腹すいてきちゃったよ」

「じゃあキャッチボールは止めて何か食いに行くか?」

「僕、チョコパフェ食べたい!」

「よし、じゃあ喫茶店行くか?」

「うん!」


活発で元気とは言えやはりそこは子供だ。

ある程度キャッチボールをすると当然の様に疲れてくる。

そして動けばお腹が空くのも自然の事。

キャッチボールは切り上げ、休憩兼ねて喫茶店へと向かう事にした。



適当に公園近くの喫茶店に2人で入って行く。

チョコパフェを食べたいと言っていた衛は当然チョコパフェを頼み、父親はナポリタンを注文する。


「昼食になるけど、チョコパフェだけでいいのか?」

「うん、大丈夫!運動して喉乾いてきたからチョコパフェが良いんだ♪」

「衛は本当にチョコが好きだな」

「パパもチョコ好きじゃん?」

「甘くて美味しいからな」

「お子ちゃまだね♪」

「お、言ったな~!大人になればなるほど甘い物食べたい時があるんだよ!まだお子ちゃまのお前には分からないと思うけどな?」

「あー!バカにしたぁ~!早く大人になりたい」

「まだまだ先の話だな!後15年近く先だ」

「うぅ……遠い。後どれだけ寝れば良いの?早く成長したい!」

「まぁ気長に頑張れ!大人になったら今度はお酒一緒に飲もうな?」

「うん!」


注文した物を食べながら楽しそうに喋る2人。

まだまだお酒を飲めるような年齢では無いものの父親は衛が男の子として生まれた時から大人になったら一緒にお酒を飲みたいという夢を持っていた。

当の本人である衛は弾けんばかりに返事をしたが、何のことかはいまいちよく分かっていない。


「ごちそうさまでした!」

「完食だな。お腹いっぱいになったか?」

「うん、美味しかった♪」

「ママにはパフェ食べたのは内緒な?」

「どうして?」

「羨ましがられるし、甘やかしてって怒られるからな……」

「パパでも怒られるの嫌なんだね笑」

「そりゃ嫌だよ。ママ、怒ると怖いもんな」

「アハハ、そうだね」


余り甘い物を食べさせて虫歯になったり、甘い物しか食べなくなる事を嫌がる母親は、普段衛に食べさせる物に気を配っていた。

それを知っている父親だったが、中々2人で出かけることがない為ついつい甘やかしてしまう。

しかし、この後バレると自分が怒られる事を分かっていただけに口止めは必須だった。

怒ると怖い事を知っていた衛も父親の約束に素直に従う。

チョコパフェを食べて満足した事もあり、どうでも良くなっていた。


「さて、次はどうする?」


会計をすませた父親は衛に次にやりたい事を尋ねる。


「うさちゃんに上げるお菓子買いたい」

「衛は本当にうさぎちゃんが好きだな」


お菓子が買いたいと言うので駄菓子屋へ連れていくことにした。

駄菓子屋では終始うさぎとの事を嬉しそうに喋りながら彼女が好きそうなお菓子を幾つかピックアップしていた。自分にはチロルチョコを幾つか買う事を忘れずにーー。


「パパ、ありがとう!うさちゃんの分も買ってくれて」


会計を済ますと笑顔でお礼を言ってきた。

当たり前の事を出来るいい子に育っていると父親はジーンときた。


「どういたしまして。次はどこ行きたい?」

「……おうち帰る!」

「もう良いのか?」

「大満足!あと……眠くなってきちゃった。えへへー」

「じゃあ帰って昼寝だな笑」


朝早くに起きてキャッチボールをしたり、チョコパフェを食べたりした為だろう。

体を動かしたり、食べたりすると眠くなるのは当然の事で、衛も睡魔に襲われた様だ。

久しぶりに衛と2人で時間を過ごし、父親も満足した為家路に着くことにした。


家に帰ると衛はすぐに寝てしまった。余程疲れたのだろう。その様子を見て父親も眠くなってしまい、夕飯まで2人で爆睡してしまった。





おわり



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