セラムン二次創作小説『悩める小さな美少女戦士たち(ほたちび)』


「……ちゃん?ほたるちゃん?」

「え?」


学校での帰り道、いつもの様にちびうさちゃんと一緒に帰っていた。

考え事をしていて、心ここに在らずになっていた私はちびうさちゃんの話をほとんど聞いていなかった。


「どうしたの?いつもの元気が無いみたいだけど……」


ちびうさちゃんには心配させないようにと思っていたのに、心配させちゃってるみたい。

こうしていつも一緒にいるだけで嬉しいのに、大切な時間を台無しにしちゃってる。

ダメだなぁ、私。ちびうさちゃんといる時は楽しまなくちゃ!


「ごめんね、ちびうさちゃん心配かけて」

「ううん、全然!私たち友達でしょ?」


ちびうさちゃんは優しい。

初めて会った時も、発作で苦しんでいる私に優しく寄り添ってくれた。いつも気にかけてくれた。

また転生して、こうしてちびうさちゃんと過ごせる様になったのだから、今度は私がちびうさちゃんの支えになってあげたい。そう思っていたのに……。

実際はまた私の方がちびうさちゃんに心配されちゃった。

生まれ変わっても、何も変わらない自分に怒りさえ覚えてくる。


「大丈夫!心配させちゃってごめんね」

「ほたるちゃんは私の大切なお友達だもん!心配して当然だよ!」

「でも……」

「何か悩み事?クラスの男子にいじめられたとか?いじめ返してあげるから言ってね?あ、でもほたるちゃんも戦士だから強いよね?」

「うふふっちびうさちゃん面白い」

「ほたるちゃんが笑顔になった」


言われてハッとなる。自然と笑っていたから気づかなかった。

ちびうさちゃんは本当に凄い子だなって感じた。

一緒にいると自然と元気になれる。ちびうさちゃんはそんな子だった。


「ありがとう、ちびうさちゃん。男の子にいじめられたんじゃないの。あのね?」

「うん」

「悩んでたのは身長の事なんだ」

「身長?」


意外な答えにちびうさちゃんはとても驚いていた。

それもそうだと思う。身長で悩んでいるのはちびうさちゃんの方だから。

だから余計にちびうさちゃんに打ち明ける悩みじゃないのかな?と思ったけど、隠しておけることでもないと感じた。

ちびうさちゃんは勘のいい子だし、頭も良いから。


「ごめんね?身長に悩んでるのはちびうさちゃんの方なのにね?」

「ううん、気にしないで。同じ悩みを持つ先輩として、相談に乗ってあげられるかもしれないし、何か嬉しい♪」

「え?嬉しい、の?」


意外な言葉に、今度は私が驚く番。


「あ、ごめんね?悩んでるのに。同じ悩みを持てて嬉しいなって。やっぱり私たち、運命なんだよ」

「ちびうさちゃん……」


エリオスって運命の人がいる今でも、屈託のない笑顔で私との事を“運命”なんて言ってくれるんだね。優しさに泣きそうになる。

それに言われた通り、確かに同じ悩みだし、私たち、似た者同士なのかな?って。


「で、身長がどうしたの?」

「うん、あまり伸びなくなったんだ……」



今日、身体測定があった。月並みだけど、牛乳飲んだりして頑張ってた。

けど、結果は前回に測った時より数ミリ程度伸びただけ。

赤ちゃんから転生して、凄いスピードで成長をしていた私は、ここに来て伸び悩みしてしまったみたい。

デッドムーンとの戦いの時はちびうさちゃんより背が高かったのに、今はそれ程変わらない身長になってしまった。

これじゃあ、ちびうさちゃんを守ってあげられない!


「ちっちゃい私じゃ、何かあってもちびうさちゃんを守ってあげられないよ」

「ほたるちゃん……。その気持ちで充分だよ」

「でも……。私、転生前の身長まで一気に伸びると思ってたんだよね」


デッドムーンとの戦いの時は確かに前の身長まで成長していた気がした。

なのに、戦いが終わると不思議な事に前世や前の土萠ほたるとしての記憶を取り戻した直後の身長に戻ってしまった。


「きっと急激に成長しちゃったから歪み、みたいなものが出てきたんじゃないかな?バランスとってるとか?」

「そうなのかな?戦士として戦ってた時は前と同じくらいの身長になってた様な気がしたんだけど……」

「そう言えば、私より高かったかも」

「でしょ?なんで縮んじゃったんだろう……」

「また戦いになって危機が迫れば成長出来る、とか?」

「だったら良いんだけど……」


だけど正直、やっぱり戦いで身長伸ばしたくないなってのが本音。伸びたり縮んだりってのも嫌。一喜一憂だもん。

そりゃあ私も戦士だから、ちびうさちゃんやみんなをこの星を護りたいと言う気持ちは持ってる。


「私もね?どうして成長止まっちゃったんだろうって大分長い間悩んでたんだ。なんでだろうって。何か理由があるのかなって」


そうだ、ちびうさちゃんは実際は902歳。

小さいまま止まってしまってから相当の年月が経ってしまっている。悩みの年期が違う。


「こっちの世界に来て、うさぎやまもちゃんに“ちびうさ”って呼んでもらって、最初は嫌だったけど、そのうち慣れたら何か良いなって思ったんだよね。それにね?」

「うん?」


頬を少しピンクに染め、照れ臭そうに過去の両親のまもちゃんとうさぎお姉ちゃんの話をするちびうさちゃん。とても幸せそう。


「こうしてほたるちゃんと一緒に学校通えてる事が嬉しい♪だから私が成長出来なかった理由ってほたるちゃんとこうして同じ学校に仲良く通ったり、同じ悩みを共有したりする為だったんじゃないかな?って思ったんだよね!」

「ちびうさちゃん……」

「だから身長伸びないのは悩ましいけどさ、同じ学年で同じクラスで仲良く出来るんだもん!小さい時期も楽しもうよ、ね?」

「うん、うん、そーだね!私もこの身長に縮んだのはちびうさちゃんと、より長くいられる為だって気がしてきたよ」

「そうだよ!やっぱり私たち、運命なんだよ」

「そうだね!運命だね♪」


私よりも長く悩んでた分、もっと傷は深いはずなのに、前向きに考えてるちびうさちゃんに励まされる形になっちゃった。

戦士として支える側が、支えられちゃって不甲斐ない。だけどおかげでとても元気になった。


「それにね、昔、額に印が無くて、成長も止まっちゃった時にプルートに相談したらこう言われたの。“貴方はれっきとしたクイーンの娘です。額に印がないのは、貴女が地球人として産まれたからだと私は推測してます。貴女は貴女です。例え額に印が無くても、貴女は立派なシルバーミレニアムの一族ですよ。成長もきっと出来ます!自信を持って”って」


流石はせつなママ。言いそう。


「せつなママ、いい事言うね」

「本当だね♪あの時、あの言葉にすっごい救われたんだよね」

「私も、さっきのちびうさちゃんの言葉、とっても励まされたよ!」

「えへへ、嬉しいな♪」


そう言ってちびうさちゃんはまた照れ臭そうに頬を少し赤らめて笑った。


ちびうさちゃんの本当の居場所は30世紀の未来でここではなくて。いつか帰ってしまうけれど、それまで、未来のプリンセスを護ってあげたい。

そしてこの先、まもちゃんとうさぎお姉ちゃんがキングとクイーンになってスモールレディが産まれたら、その時は全力で護ってあげたいなって、改めてそう思った帰り道だった。


あの時感じた“運命”は、やっぱり間違いじゃなかったんだ。そう感じた一日だった。





おわり



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