セラムン二次創作小説『心優しき彼女と無慈悲な女神』


学校帰りにうさぎは美奈子とコンビニに寄っていた。お目当ては自分達の相棒の顔のお餅。

「私達が買わないで誰が買うの?」と言う美奈子の鶴の一声で一緒に買いに来る事になった。

勿論、食べる事が大好きなうさぎは大賛成で乗った形だ。

自分の分、彼氏の分、そして猫への土産で合計3箱ずつ購入してウキウキ気分の2人。

そしてその後、お互いに彼氏の家へ向かう事になった為、コンビニでそのまま別れてお互い目的地の彼氏のマンションへと向かう。

道中、ばったりルナと出会ったうさぎはそのまま一緒に衛のマンションへと向かう事に。


「まもちゃん、お餅買ってきたよ!」


ルナを従えて衛の家へやってきたうさぎは嬉しそうにコンビニ袋からアルテミスとルナの餅を取り出した。

「みんな1つずつあるからね」

「サンキュー。じゃあお茶入れるからちょっと待ってろ」


無類のお菓子好きのうさぎの幸せそうな笑顔を見てこの笑顔が堪らないと心温まりながらお茶を入れる衛。


「いっただっきまー…」

お茶が入るのを待てず食べようとしたうさぎだが、“す”を言う事が出来ずそのまま固まってしまう。一体何事かと心配する衛。


「うさ?どうした?」


聞くとたちまち笑顔から涙目になり始める。


「まもちゃん、ルナが可哀想で食べられないよぉぉぉ~」


言いながら大泣きし始める。何だそんな事か?食べ物のルナに対しても気遣いが出来る優しさに、やはりうさは優しい子だと胸が熱くなる。


「私は全然平気よ、うさぎちゃん」

慌ててフォローするルナを見ると自分の顔をかぶりついて美味しそうに頬張っていた。異様な光景に呆気に取られる衛だが、うさぎを慰めようと言葉を発する。


「そうだよ、うさ。されど食べ物だ、可哀想でも食べないと勿体ないぞ。ルナ見てみろよ?自分食ってるぜ?」


チラッとルナを見るとうさぎは尚も悲しむ。


「でも食べようとすると笑顔のルナと目が合うんだもん!辛いよぉ…」

「じゃあ見ないで食ってみろよ?」


落ち着いたうさぎは衛の助言通り目をつぶって食べてみる事にした。


「ん、おいひぃ~。でもルナが可哀想~」


食べながらルナを想いまた泣き出してしまううさぎを微笑ましく愛おしそうに見つめる衛。

それを見て2人に呆れるルナ。

食べては可哀想だと泣くを繰り返すうさぎだが、結局ルナを完食したら泣きやみ、次のアルテミスは割と何の躊躇いも悲しみも無く美味しい美味しいと笑顔で完食した。

アルテミスは良いのか?と思う衛とルナだったが、仕方ないか?と思いつつ、やっと完食したかと胸を撫で下ろすのであった。




 

☆☆☆☆☆



一方、公斗の家へと向かっていた美奈子も途中でアルテミスと出くわす。彼氏の家へ行くと言うと嫌がっていたアルテミスだが、お餅があると聞いて食い気に負けた白猫はやむを得ずついて行くことにした。


「お餅の差し入れ持ってきたわよ」

元気よく入ってきた美奈子を確認すると視線に白猫がチラッと見え、天国から地獄へと突き落とされる思いをした公斗だが、嫌な顔を見せず表情を崩さずお茶の用意を始める。


「ルナとアルテミスのお餅よ!みんな1つずつあるからね、食べましょ」

「わざわざすまんな」

「いいのよ!私も食べたかったし」

「色気より食い気だな美奈は」

「アルテミス!何か言った?」

「別に…」

「…気を取り直して、いっただっきまーっす♪」


ガブッと躊躇いなく食べる姿を見たアルテミスは「いってぇ」と思わず声を荒らげる。


「何であんたが痛がるのよ?」

「そうだけど、何か痛い気がする。身体と言うより心が…。よく張本人目の前にして何の躊躇いも無く食えるよな?慈悲とかないのか?」

「食べ物なんだから食べなきゃ損でしょ?」


一体何のやり取りを見せられているんだ?と呆気に取られる公斗だが、余りの美奈子らしい言動と不憫を極めるアルテミスに柄にも無く珍しく大声で腹を抱えて大笑いする。


「美奈子の言う通りだ。アルテミス、観念するんだな」


いい気味だと思いながら本人?本猫?の目の前で餅をパクつく公斗。どこか楽しそうに食べる公斗と美奈子を見て殺意を覚えるアルテミス。


「お前ら…覚えとけよ!」


涙目になるアルテミスは残酷な行動をする公斗と美奈子を見て、なるほど、コイツらこう見えて似たもの同士なんだ!合うのか?と思っていたが案外お似合いのカップルって奴じゃないか、酷いと言う意味で!と心の中で悪態をついていた。

いくら悪態をついたとはいえ気持ちは沈んだままのアルテミスはお餅を前にため息をつく。


「俺、ルナ食えないよ…」

「じゃあ私が食べてあげるから寄越しなさいよ!」

そう言って結局ルナを取り上げ食べ始める美奈子。


「お前、自分のは食えるのか?何なら俺が手伝ってやってもいいが?」

「…」

絶句して食べられないでいるアルテミスを横目に残りのお餅も公斗が取り上げ、してやったり顔で食べてしまった。

食い気に負けてついてきたはずの公斗のマンションで結局食べられず、性格の悪いリーダーカップルの似た者度合いを見せつけられただけで損して終わっただけだった。

美奈子が食べてる姿は愛の女神とは程遠く、悪魔の生まれ変わりで、公斗の方は純潔と慈愛の騎士とは真逆で無慈悲な野郎だと思うアルテミスだった。






おわり



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