セラムン二次創作小説『桜色舞うころ(エリちび)』



春になり、ここエリュシオンの花園にも今年も満開の桜が咲乱れる。

枝垂れ桜、ソメイヨシノ、エドヒガンザクラ、豆桜、山桜、大山桜と大小様々でらら色んな種類の桜がとても綺麗なピンクの花を咲かせている。

毎年桜を見ては「今年も咲いた。綺麗だな」くらいの月並みの感情しかわかなかった。

勿論、今年もそんな感情で終わる予定をしていた。

でも今年はそれだけで終わらなかった。

“乙女に逢いたい”と言う感情が自分の中で芽生えていた。

ピンクに色づき元気よく咲き乱れる桜が、トレードマークのピンク色の髪の毛を持つ乙女を思い起こさせる。

そして寂しさが募る。

彼女は今どうしているだろうか?

ふとそんな事を考えてしまう。

素敵なレディになる為にパレスで日々勉強や公務にと忙しくしているのだろう。

いずれクリスタルトーキョーを統司するクイーンとなるお立場にあるのだから。

私はここで小さな乙女を想い、祈る事しか出来ないけれどー。


乙女と同じピンク色の桜を願わないとは分かっていてもやはり一緒に見たいと思ってしまうのはわがままと言うものなのだろう。

だけど、彼女にもこのエリュシオンの桜並木を見せてあげたい、一緒に歩きたいと思ってしまう。


そんな事を思って黄昏ていると風が吹き、桜の花びらたちが散っていく。

その様子がまるで彼女その物でー。


「エリオス来て!早く早く!」


あの日の様に戦いが終わったあと、美しさを取り戻したエリュシオンの庭園を弾けるような笑顔で駆け出して行った乙女がそこにいるような錯覚に陥る。

あの時の乙女を彷彿とさせる。

彼女がここにいるはずないのに。

ただの桜の花びらが舞っているだけだというのに。

幻影を見る程に恋焦がれているのだろうか?


ボーッと心ここに在らずで桜の花びらが散っていく様子を見ていると人影が近づいてくる事に気づく。


「エリオス!」


目を疑った。近づいて来た人影は、たった今まで想っていた想い人。

彼女はいつも突然で、予測不能。

今日も突然現れ、私を驚かせる。


ピンクのドレスを翻し、歩いてくる姿はまるで桜の花びらが舞うよう。

桜の妖精かと見間違えそうな小さくて儚い乙女の姿。


「どう、して…?」

「エリオスに逢いたくて、許可を貰って来ちゃった」


弾けんばかりの笑顔でそう言う乙女はまるで太陽のように輝いていた。


「エリオス、行こう!」


そう言って僕の手を引いて桜並木を進んでいく。


「桜、綺麗だね?」

「そうですね」


同意しつつも毎年見なれた桜よりも乙女を見ていた。

“貴女の方が綺麗ですよ?”その言葉を口には出さずに胸の中で反復する。


「クリスタルトーキョーも桜満開でママとお花見してたんだ」


草花や自然が好きなクイーンとジュピターのお陰で王宮内にも桜が咲いている。


「桜を見てたらママが私と同じ色だからエリュシオンも満開ならエリオスが思い出してるかもって」


まさにそのとおりだった。

流石はクリスタルトーキョーを統司している全知全能の神、何もかもお見通しと言う訳だ。

クイーンの計らいで今逢えている事に感謝の意を心に唱える。


「乙女の様に美しい桜色だと貴女を想っていましたよ?クイーンにも乙女にも敵わないですね」

「ホントに?嬉しいな」


横で照れたようにハニカむ乙女の頬もまた桜色で染まっていた。


そして僕達は時間が許す限りお花見デートを楽しんだ。





おわり



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