セラムン二次創作小説『痺れるくらい愛してる(ネフまこ)』

 

 いよいよ寒い冬の到来。ここ東京も例に漏れず、とても寒い。勇人は寒いのは嫌いではなかった。鍛えていてガタイがいいからというのもあったが、冬にしか出来ない。冬だからこそ出来る事がある。

 

 その、冬にしか出来ない事とはーー


「さっびぃー。まこと、暖めてくれ」

「わっ」


 勇人は、後ろからまことを勢いよく抱き締めた。まことの温もりを感じて暖まろうと考えたのだ。

 そしてこれが勇人が冬が好きな理由だ。合法的にイチャイチャ出来る。こんな季節は冬以外に見当たらない。

 しかし、そんなオープンスケベな下心の持ち主の勇人に、まさかの展開が待ち受けていた。


「いってぇっ」


 まことに抱きついたその瞬間、バチバチッと音がしたかと思えば、静電気が体中を駆け巡ったのだ。

 驚いて瞬時にまことから体を離し、勇人は痛がった。


「な、静電気かよ」

「ああ、あたし、帯電体質だろ?冬は顕著に出るんだよ。気をつけな」

「う、マジか!?」

「ゴメンな、勇人。イチャイチャ出来ないんだ」

「はぁ?無理だって!抱き締めたいしキスしたいしヤりたいんだけど、どうすりゃいいんだ?欲求不満で爆ぜる」

「んなオーバーな。まぁ、突然じゃなくて申告してくれたら大丈夫だと思うぜ」

「そんなの分かんねえよ。体が勝手に動くもんだから、口なんて動かねぇって……」


 勇人、天国から地獄である。丸で崖の上から突き落とされたような、雷が落ちてきたような衝撃。死刑宣告を受けたような気分だ。

 本能で生きている勇人にとっては死んだも同然。何より一番楽しみにしていただけに、静電気は正に電流が走った。


「じゃあまこと、抱き締めさせてくれ!」

「どうぞ、おいで勇人」


 何なんだこの自己申告制度は。何のコントなんだと思いながらも勇人がそうしたいことをまことに申告すると、女神のような笑顔でまことが両手を前に出してハグを待ってくれるというオプションが付いてきた。

 まことの可愛い行動に、勇人はこれはこれで有りだなと嬉しくなった。


「ん〜、まことぉ〜♪」


 広がった手の中へと勢いよく入って、ギュッとまことを抱き締める。


   バチバチッバチッ


「いってぇよ!何でだよ?ちゃんと申告したろ?」

「ごめんごめん。やっぱダメか」


 申告して抱き締めたにも関わらず、静電気が出て激しく拒否され不満を漏らした勇人は不貞腐れた。

 申告してもダメなら八方塞がり。打開策はないのか?


「ええい!感電してもいい!まこととくっつきたい」


 最早、欲求不満過ぎて脳みそが上手く回らず、本能のまま覚悟を決めて勢いよくまことを抱き締める。

 こんなに愛しているのに、ここに来てこんな障害に阻まれる事になるなど勇人にとっては考えられなかった.

 愛で、この障害を乗り越えて見せる!そんな気合だった。


   バチバチッ


 抱き締めた瞬間、やはり電流が走ったが今度はお構いなしにキツく抱き締め続ける。すると、静電気はしなくなり、痛くなくなった。

 やっと何の障害もなく抱き締められた勇人は、幸せを噛み締め、長い時間くっついていた。


「痺れるくらい愛しているぜ、まこと」

「はいはい」


 静電気の痺れも愛の深さだと勇人は納得することにした。

 勇人とまことの間には、何の弊害もなくこれからもずっとラブラブ街道まっしぐらだ。


 しかし、冬が来てまことに触れる度に勇人は、静電気に悩まされる人生を送ることになるのであった。





おわり




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