セラムン二次創作小説『カミツレ』




それは突然の出来事だった。

コルドロンから放たれるオーラが力強く、しかしとても懐かしい優しいオーラが放たれているのを感じる。

このオーラは間違いない。

ずっと古から待ち侘びていた人。会いたいとずっと願ってやまなかった人。

ずっとずっといつの時代もその人だけを選んで来た。かけがえのない、私には絶対に必要不可欠な人。


「まもちゃん?まさか、そんな……」


期待と共に不安が入り交じる。

今までも散々待ち続けては裏切られて生きてきたから、そんなはずは無いと思ってしまう。

過度な期待は裏切られた時のショックがデカイから。期待をしないようにどこかでストッパーをかけていた。

でも、今回は違う。今回だけは。勘がそう言っているの。心がときめく。弾んでいく。期待が膨らむ。


どうしよう?どうしたら、良い?

コルドロンへ向かった方が、いいのかな?

それともここで待つべきだろうか。

今の私を見て、あの人は私の事を分かってくれる保証も無い。かつての姿とは違ってしまったから。信じてはいる。だけど、自信なんて無い。

あの人が私を求めているかも……

正解が分からず、身動きが取れずにその場に留まった。


「うさ、なのか?」


暫くその場で固まっていると、後ろから不意に懐かしい名前で呼ばれる。

ドキンと高鳴る胸の鼓動がとても騒がしく鳴り響いている。うるさい程に。

この呼び方をするのはあの人以外いない。あの人以外は有り得ない。

かつての名前を呼ぶ声も、深くて優しい。記憶の中の声と同じ。

けれどその中でも少し、落ち着いた声だった。


「……まも、ちゃん?」


呼ばれた私はその場でクルッと回り、声の方へと振り向いた。

するとそこには記憶の中の彼がいた。

でも、その姿は記憶とは少し、いや、大分違って見えた。

髪の毛の色は、エンディミオンやまもちゃん時代の黒でもキングの時の淡いラベンダーでもなくて、短い髪はそのままに黄金色にキラキラ光っていて、月野うさぎだあった時の髪の毛の色をしていた。まるでそう、まもちゃんが所有していたゴールデン・クリスタルのあの色だ。

体格はそのままに、衣装も大分様変わりしていた。

エンディミオンの時の甲冑姿でも、タキシード仮面の様に漆黒のタキシードでもなく、キングの時の白いタキシードでも無かった。

かつての地球を思わせる青い空色のマントに身を包み、タキシードの色は星が散りばめられていた。


「ああ、地場衛の生まれ変わりだ。君も、うさの生まれ変わりだろ?」

「本当に、まもちゃん?正真正銘?」

「ああ、強くなってうさと肩を並べてこの宇宙を守れるようになったんだ。いや、それ以上にうさを上回る力を身につけた」


まもちゃんの生まれ変わりだと言うその人の顔つきは、昔とは違い自信に溢れた凛々しい表情で誇り高くそこに立っていた。

生まれ変わりだから、衣装も外見も見た目が変わったのね。私もそうだから、納得出来る。

それに私がそうであるように、まもちゃんも昔と同じ私のオーラで私だって分かって見つけてくれたのだと思う。


「生まれ変わり。それにその姿。貴方の新しい名前は、なぁに?私はセーラーコスモスよ」


まもちゃんはまもちゃんだけれど、どこか違う。私もそうだ。

生まれ変わりだと言うのだから、違う名前を与えられているはず。その名前が知りたいと単純に思った。


「セーラーコスモスか。宇宙を守護に持ったんだな。俺の名はアストライオス。星空の神としてこの名を与えられた。使命は君とこの宇宙を守ること」

「アストライオス……星空の神様」


私は宇宙を守護する最強の戦士となった。

そして彼はその宇宙の星空を司る神様としてこの地に君臨した。

同等の、ううん。それ以上の位を与えられたから、自信に満ち溢れていたのね。


「嬉しい!また一緒に生きてゆけるのね。守り、戦って行けるのね」


彼がタキシード仮面でも、エンディミオンでも力が私には及ばなくても彼以外は考えられない。彼と共にこの世界をずっと生きていけるなら、どんな姿形だって私は嬉しい。


「ああ、うさ。いや、セーラーコスモス。またずっとよろしく。もう、一人にはさせない。寂しい想いはしなくていいから」

「まもちゃん!いいえ、アストライオス」


私は躊躇すること無く、真っ直ぐにその胸の中へと飛び込んだ。

それに答えるように彼は優しく抱きしめてくれる。懐かしい温もりにホッとする。

今まで一人で耐えて来て良かった。


「ずっと、一緒に生きていってくれる?」

「ああ、もう離れないと約束するよ」


この先もずっと離れずに一緒。その安心感に私はホッと胸をなで下ろした。

そして神となったまもちゃんを連れて、私は宇宙を旅に出た。





おわり




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