セラムン二次創作小説『先んずれば人を制す(ネフまこ)』


「俺たち、結婚するんだ」


美奈子達はいつもの様に学校帰りにレイも加わりクラウンで五人、楽しく喋りながらお茶をしていた。

そこに、男が一人合流して状況が一変した。冒頭のセリフは、その男から発せられたものだ。

そいつの名は、勇人。言わずもがな、まことの恋人である。

女5人の楽しいガールズトークに、一人場違いにも男がいる。それだけでも美奈子は面白くなかった。ガタイのいい男が、何故か自然とこの場に溶け込み、馴染んでいる。

しかし、そこに加えて主導権を握りまさかのこの発言である。美奈子はこの言葉に怒りを露にした。


「なぁんですってぇ?」

「だから、俺たち結婚するんだって」

「誰と誰が?」

「俺とまこと」

「いつ?」

「近い未来」

「チッ」


一通り質問し終えると美奈子は、あからさまに面白くないと言う顔をして店に響き渡るほど大きな舌打ちをして不貞腐れる。


美奈子を始め、今はみんなそれぞれ彼氏がいる。付き合いの先には結婚もあるだろうとは考えていた。

けれど、それは高校を卒業して学生生活をそれぞれが終えた後、就職して仕事が安定してからだ。まだまだ遠い未来。

そして、その結婚は衛とうさぎが先なんだと漠然と思っていた。それが四天王と四守護戦士としての望ましい姿だと美奈子は考えていた。

それなのに、目の前にいるこの男はまるでその立場を忘れ、弁えずに欲望のまま突っ走った。なんて事だと美奈子は腸が煮えくり返る思いだった。


(やってくれやがったな、コイツ)


別に嫌いでは無いが、色恋になるとこういうところがあるのを美奈子は知っていた。危惧していたし、要注意だと感じていた。

まさか、こんなに早く危惧していたことがやって来るとは予想だにしていなかった。


(何考えてんだ、コイツ?)


美奈子と同じで、まことも恋には積極的で恋多き女性だ。恋人が出来たことに喜んだし、幸せになって欲しいと心から願っている。

それに、うさぎを除くとこの中で一番最初にくっ付いた。難なく、自然な流れで。

だから、四人の中では一番ゴールインも早い。そう踏んでいた。二人とも、経済力や家事力もある。付き合いは順調で、安定している。まことには両親はいないし、障害は何も無い。いつ嫁に出しても恥ずかしくない。

しかし、だからと言って学生の分際で結婚はまだ早い。認められない。


「まだ早い!認められない!」

「何で美奈子ちゃんに認められないといけないんだ?」

「まこちゃんの親友であり、リーダーであり、愛の女神だからよ!この、オープンスケベ!」

「大事なのは俺とまことの気持ちだろ!」


オープンスケベと言う単語がオシャレな喫茶店に響き渡り、ザワザワするが勇人はお構い無しに反論した。


「こんなの認められないわ!公斗だってそう言うはずよ!」

「だから、何でアイツの名前が出るんだ?」

「公斗は貴方のリーダーだからよ!それに、私と公斗はいつだって意見は同じだから」

「応援してくれると思うぜ?」

「応援は私もしてるわよ!ただ、学生結婚のみならず、主君であるまもちゃんとうさぎを置いて先に結婚は認めないって言ってるの!ねぇ、うさぎ?納得いかないわよね?」

「う、え、あ、あたし?」


ボルテージが上がる美奈子に全員呆れていたが、急に自分の名前がでてきたかと思えば、美奈子に呼ばれて答えを求められたうさぎ。急な事に驚き、しどろもどろになる。


「ちょ、ちょっと待て!」


まことが不味いと思い、助け舟を出した。


「美奈、何か誤解してないか?」

「誤解?何がよ?」

「勇人も、言葉足らずの説明不足だ!」

「何も間違って無いだろ?」


さっぱり分からない美奈子に加え、悪びれることの無い勇人。これでは埒が明かないとまことは考えた。


「ごめん、美奈。勇人が説明を端折りすぎた」

「何それ」

「結婚式の予約を入れたってだけなんだ」

「やっぱり結婚するんじゃないのよ!裏切り者ぉ~~~~~」

「結婚式も、籍を入れるのもずっと先だよ」

「え?でも、今にもするみたいな言い方だけど……」


まことの補足説明に対しても、納得出来ない美奈子。


「取り敢えず結婚式場に五年後に予約を入れただけでまだ何にも決まってないんだ」

「結婚式場に予約入れてる時点で結婚決まってるじゃない!」

「まぁ、そうなんだけど……」

「裏切り者ぉ~。ってか、プロポーズは?」

「済ませてるぜ?」

「は?いつ?私、聞いてないんだけど」

「付き合う時。『付き合いを前提に結婚してくれ』って」

「何それ?それってプロポーズなの?」


美奈子は、勇人のプロポーズの仕方に納得いかず、腑に落ちないでいた。


「美奈子ちゃんは公斗にプロポーズされてねぇの?」

「ああん?」


そんな美奈子に勇人は質問をし、睨まれる。

公斗にプロポーズ、されてはいない。

しかし、両親への挨拶と、将来自分と結婚したい旨は伝えられていた。直接のプロポーズだけは、まだである。

結局、美奈子は羨ましかったのだ。


「公斗に聞けば?」

「はっはーん。されてねぇんだな。アイツ、昔っから奥手でお硬かったもんなぁ」


可哀想にと謎の同情の眼差しを勇人にされ、更に不機嫌になる美奈子。


「亜美ちゃんは、どうなの?」


そして、仲間に振る事で美奈子は逃げた。

傍観して、会話に一切入らないで参考書を広げて勉強に集中している亜美。


「今はお互い勉強が大切で、それどころじゃないわ」

「レイちゃんは?婿養子計画、進んでるの?」

「育ってるわよ」


二人とも、美奈子への対策が出来上がっていた。


「じゃあ、うさぎちゃんはどうだ?衛からプロポーズされてるよな?」


左手薬指に光る指輪を見ながら、わざとらしく勇人がうさぎに聞いた。

うさぎが答えようと口を開いたその時、美奈子が遮る。


「うさぎの事は良いのよ!」

「何でだ?不公平だろ?」

「お腹いっぱいになるから!!!」 


だから絶対に聞くなよ?と言う顔をする美奈子だが、勇人は空気を読まずにうさぎに聞き続けた。


「なぁ、うさぎちゃんは?」

「うふふっ毎日してくれるよ♡」


そう言いながら、うさぎはそのまま惚気話に突入する。

美奈子は、あーあやっぱりこうなったとウンザリした。

勇人は、美奈子の言う事を素直に聞かなかったことを激しく後悔しながらも胸焼けしながら聞き出しっぺとして最後まで付き合う事にした。


うさぎの話を上の空で聞いていた美奈子は、勇人とまことの結婚式が五年後でまだ先である事に少なからずホッとしたのだった。




 おわり




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