セラムン二次創作小説『回想(遠うさ)』



学校帰り、ふと気がつくとうさぎはいつの間にかゲームセンター“CROWN”の前に来ていた。

何も考えずに一人ボーッとしながら歩いていると自然とここへと足が向いた様だ。


「久しぶりに寄っていきますか!」


ギャラクシーコルドロンでの戦いから一年。あれから敵は現れない。司令室があるクラウンはそれ以来一年以上疎遠となっていた。

この後の予定は特に無い。ならば気晴らしにゲームでもやって行こうとうさぎは中へと入る事にした。


「やあ、うさぎちゃんいらっしゃい」

「古ちゃんお兄さん!」

「久しぶりだね。最近来ないから寂しかったよ」

「えへへ、ごめんなさい。まだ働いていたんですね?」

「ああ、一応ここは継ぐからずっと働くつもりさ」


うさぎが入って行くとここのオーナーの息子でバイトをしている元基に話しかけられる。

一年以上顔を出さなかったことで、心配をかけていたようだ。


「ゆっくりしていってね」

「ありがとうございます」


元基の笑顔に、うさぎはホッとした。

店の雰囲気も元基が作り出したのか、変わらず楽しい雰囲気に懐かしくなる。


「あ、セーラーVゲーム!まだあったんだ」


目に映ったのはセーラーVのゲーム機。まだ数台置かれていた。まだまだ人気なのだろうとうさぎは嬉しく思った。

元基はうさぎ達の正体を知る数少ない一般人。気を使って置いてくれているのかもしれないとも考えた。

自然とその中の一台に腰掛ける。

そこでうさぎは、急激にある日々の事を思い出してしまい、セーラーVゲームを開始する事ができなくなってしまった。


「この席……」


空いているセーラーVゲームに何気無く腰掛けただけに過ぎなかった。しかし、そこは一時期、毎日座っていた機械だった。


「遠藤、さん……?」


そう、うさぎは遠藤と名乗った衛に瓜二つの元基の大学の親友だと言うその人とこの機械で毎日セーラーVゲームをして心を通わせていた。ダメだと、衛では無いと頭では分かりつつ、止められなかった。


「そう、言えば」


うさぎはふと脳裏を過ぎった。

そう言えば、遠藤と知り合ったのはちょうど秋になり涼しくなってきたこの時期だったことを思い出したのだ。


「そっか、だからか……」


何も考えていなかった。その上、一年以上来ていないのに急にここに足が向かい、引き寄せられるように中に入ったのは偶然では無かった。

遠藤に、俺を思い出せと言われているのだとうさぎは結論付けた。

二年前は夢を見て思い出したが、去年は戦いの中にあり思い出すことが無かった。遠藤は今年も忘れ去られるのを懸念して、うさぎがここに来る様仕向けたのかもしれない。


「遠藤さん……」


遠藤は衛が敵の手に落ちた闇の姿だった。

言わば同一人物。無事に地場衛として記憶を取り戻した事により、遠藤は消滅したのだ。別に遠藤を思い出さなくても、今は衛がいる。


「会いたいな……」


いや、その衛も今はうさぎの傍にはいない。留学してかれこれ半年以上。会えなくて寂しい思いをしていた。

そんな日々を送っていて心にぽっかり穴が空いてしまったからなのだろうか。そんな心の中に、遠藤が励ましてくれているのかもしれない。

遠藤は、衛がいない時に傍で寄り添ってくれた人だ。今回も、もしかしたら……

衛の中で昇華されたと分かっていても、もしかしてと可能性にすがりたくなった。


「ダメよ、うさぎ!もっと強くならなきゃ!」


うさぎは弱っている自身の心を鼓舞した。


「久しぶりのセーラーVゲーム、楽しむぞ!」


あれ以来のセーラーVゲームだったが、セーラー戦士として経験を重ねたうさぎは次々とクリアして行き、部活終わりの美奈子がまだ大事に持っていた変身ペンの警告音が鳴り響いてしまい慌ててクラウンへと駆けつける騒動となった。





おわり




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