セラムン二次創作小説『Mercury Aqua Mirage(ゾイ亜美)』
ある良く晴れた午後、私は大学帰りに散歩をしていた。暖かくて気持ちがいい。こんな時に亜美もいて、デートだったらどれだけ良かっただろうかと恋人の顔を思い出さずにはいられなかった。
ここ最近、亜美とは会えていない。大事な第一志望の大学入試が近く、暫く集中したいからとお預けを食らっていた。
まぁ会えたとしても引きこもり。外でこうしてデートなんて天地がひっくり返ってもないわね。なんて虚しい考えが浮かびため息も深くなる。
「はぁ……」
そんな事を思いながら歩いていると前の方に見覚えのある人が見えた。
金髪に赤いリボンーーそう、美奈子だ。
そして、その隣にもう一人。短髪の女性がいる。間違いない。亜美だ。
「亜美!」
大きな声で二人組、と言うか最早美奈子はどうでも良くて、亜美の名をいっぱい呼んだ。
でも、亜美は気づくことも無く、隣の女、即ち美奈子と話し込んでいて気づかない。え?私、美奈子に負けたの?あのアホの美奈子に負けたの?きーーーッ悔しい!
美奈子に満遍の笑顔を向けている。それがなお悔しさを増す。
「亜美、無視しないでよ!」
亜美だと確信した私は、意を決して肩を叩いて話しかけた。振り向いた亜美は、私の顔を見ると、アホ面を引っさげて私をキョトンとした顔で見つめ、頭を傾けた。
え、何?どう言うこと?
「亜美、どうしたの?」
「あなた、誰ですか?」
まさかの返答。何で私の顔忘れているの?
たった二ヶ月会っていないだけで忘れるもの?受験勉強で色々詰め込んだ結果、彼氏の顔ド忘れするなんて事、ある?
なんか、亜美なら有り得る気がしすぎて自分の妄想に凹むわ。
しかも怯えた顔のオプションまで付けてさ。流石に傷付くわ。
「ヤダもう!彼氏の顔、忘れちゃったの?」
「は?彼氏?」
ダメ押し。意味わからんとばかりに困惑顔を向けられる。
「亜美、どうしちゃったのよ!もう!」
「あの、失礼ですが誰かとお間違えじゃ無いですか?」
「間違えるわけないでしょ!亜美じゃない。水野亜美!」
全く、しっかりして欲しいわ。どんだけ忘れっぽいのよ。恋愛に奥手もここまで来たら引くわ。
ここで今まで黙っていて添え物状態になっていた美奈子がやっとか口を開いた。
「やだぁ、彩都っちったらなぁに勘違いしてんのよぉ!アハハハハ」
「何よ、美奈子!黙りなさいよ!」
爆笑するなんて、失礼しちゃうわ。ったく。前々から失礼な子とは思っていたけど、本当に失礼ね。
「確かに似てるけど、この子は亜美ちゃんじゃないわ」
「え、どう言うこと?」
「うん、この子の名前はね、空野ひかるちゃん。私の小学校からの親友よ」
「は?え?は?」
状況についていけず、私はあからさまに混乱する。先程までは亜美、に似たこの子が混乱していたのに、逆転現象。
「亜美じゃ無いってこと?」
「うん、そうだけど」
「ドッペルゲンガー?」
「そうなりますね」
「え、あなたは驚かないの?」
「美奈から瓜二つの友達が出来たって聞いていたので。あ、改めまして。私、空野ひかると申します」
「私は南沢彩都よ」
美奈の古くからの親友は、亜美と見た目が瓜二つだからか、兎に角しっかりしていると言う印象を受ける。
いや、それにしてもよ!この世に同じ顔の人が三人いるとは知っていたけれど、こんなに近くにいるなんて。あと一人揃ったらビンゴでアウトじゃない。恐ろしいわ。
友達が出来たって言ってたらしいけど、そもそも亜美の方が早いはず。ってそんなのどうでもいいけど、美奈子は亜美の顔好きなの?
っていうか私にも事前に言っておきなさいよね!紛らわしいのよ。現に間違えて大恥かいたし。
「アハハハハ」
「ちょっと、美奈子!笑いすぎよ」
ひかると私の軽い自己紹介を見ながらなおもツボにハマり、大笑いしている美奈子に怒る。
「あんた、この事はくれぐれも黙ってなさいよ!」
「ええ〜、どうしよっかなぁ」
間違えた私が悪いんだけど、、上から目線で美奈子に釘を刺す。
「それは彩都っちの頑張り次第じゃない?」
美奈子も負けじと見返りを要求して来る。しっかりしてると言うか、ガメツイと言うか。そんな美奈子に呆れ返る。
本当に、毎回思うけどなんで公斗はこんな奴がいいのかしら?趣味悪わ。
「何が欲しい?」
良いわよ。乗ってあげようじゃない。何でも来い!
「そーねぇー、ブランド物のバッグで手を打ってあげるわよ?」
「チッ」
「ん、舌打ちした?亜美ちゃんに言っちゃってもいいの?」
「分かったわよ。仕方ないわね」
その後、ひかるも一緒に美奈子に引っ張られ、連れ回されてブランド物のバッグは買わされ無かったけれど、美奈子の欲しがるもの全て買わされ、持ち金は見事スッカラカンになった。
でもまあそれだけ私が亜美を愛してるってことなんだから大目に見て欲しいわ。日常的に眼鏡をかけるか、コンタクトレンズを入れないといけないと気付きと学びを得た。
決して安くない口止め料を払い、安心したのも束の間、結局暴露され亜美を不安にさせてしまった。
なぁにが愛の女神だ。悪魔の間違いじゃないの?と間違えたのを棚に上げ、美奈子を呪った。
おわり
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