セラムン二次創作小説『あたしはあたしよ』


sideちびちび



うさぎに会いに行かなきゃ!

そう思い立った私は大人の体を小さな体に変えて、いるべき場所を離れ、地球へと向かった。


時空を超え、銀河の彼方の大冒険。

ちゃんと行けるかは正直分からない。

だけどどうしてもあの戦いがある地球へと行きたかった。


時間を費やし、私は無事あの時代へと降り立った。その場所は、まもちゃんとよく待ち合わせやデートに使っていた場所ーー一の橋公園。

まもちゃんはもうクリスタルを抜かれた後だって分かっていたから、この世にはいないし会えないけど、変わらない公園に懐かしいと同時にホッとした。


遊具の船から金木犀が降り注いで来たから、タイヤの遊具をよじ登って船の中に入った。すると、ドレスに身を纏った綺麗な人が倒れていた。キンモク星の火球皇女。

セーラームーンを、私を頼って長旅で疲れてここで寝ていたんだね。

うさぎの所に連れていかなきゃ!守ってあげなきゃ!そんな使命感にかられ、彼女を香炉に入れてあげた。


今はちょうど昼間だから学校に行っている時間だよね?

月野家に行こう!

そう思い立った私はそのまま真っ直ぐ月野家へと向かった。


久しぶりに家の前に来ると、育子ママが出迎えてくれた。

“ちびうさちゃん!?”って、懐かしい名前で叫んでた!

そのちびうさがやった様に、私も育子ママの記憶を改ざんして、うさぎと進悟の妹としてなりすまして、ここでうさぎを見守る事にした。


学校から帰ってきたうさぎは、びっくりして驚いてた。

妹だって言われて更に驚いてた。


月野家にいる間は、兎に角本当に何も分からない幼女を演じ続けようと心に決めた。

その方が楽だし、うさぎの事を癒してあげられる。傍で寄り添って、守ってもらう存在として見守れるから。

これから仲間が次々殺られ、守るべきものが無くても強く立ち向かい、戦わなきゃいけない。仲間や愛する人を糧として戦って来たうさぎの、守る存在として、謎の女の子を演じなきゃ。そう思ったの。


うさぎと会った次の日、まさかのみんな勢揃い。

新手が来たって驚かれちゃった。

まぁそうだよね?ちびうさの時と手口が似ているもん。

うさぎの二人目の子供とか、ちびうさの娘とか好きかって言ってて楽しい。

見た目がそっくりだもんね。でも、実際はどっちでも無くて、遠い未来のうさぎの変装した姿。


幼女を演じ続けようと決意したから、人の言葉にオウム返しを貫こうと決めた。

そこで楽しかったのは美奈P。オウム返しされるって分かっているのに、話しかけて相手してくれるんだもん!やっぱり美奈Pと話してる時が一番面白い。


今回一番気がかりだったのがせつなさんを始めとする外部の三人。時空だけじゃなくて太陽系外から遠路はるばる地球に降りてきたから、何か察知されてしまうかと思ったけれど、どうやら取り越し苦労だったみたい。


私がここに来る頃は流星雨が多くて、そこから外敵が侵入しちゃってたから、私も何とかその影に隠れられたみたい。

でも、はるかさんもみちるさんもせつなさんも、もっと身を引き締め無いと、易々と太陽系外から侵入させちゃって、ダメじゃない!なんて、人の事言えないし、お陰で思い通りの時代の地球へと来られたから、単純に感謝だわ。


最も敵意がない分、外宇宙から侵略しても察知出来ないのかもしれない。それに、元はこの星の出身だし。


創造主って程では無いけれど、宇宙を守護する戦士。言わばセーラー戦士の頂点。だから感知出来なかったのかも。


でも、こうして楽しくバカをやれるのもこの日が最後なんだよね……

もうすぐ次々とみんなのクリスタルは奪われてしまって、過酷な戦いに身を投じる事になるんだもんね……


少しでもうさぎの癒しや心の拠り所となるならと思って、夜は一緒に寝たいと思った。昔の自分と寝るって、何だが変な気持ちだけど、落ち着く。

部屋もベッドも使っていたものだから安心感があるし、やっぱり我が家はホッとする。

育子ママも優しくて、謙之パパも抱擁力があるし、進悟は相変わらずの生意気。

ああ、何でもない平凡な家族だけど、幸せ。

ルナとアルテミスも、小さな私を可愛がってくれた。

ほたるちゃんと砂場で遊んだりしたのも、楽しかった。


ちびうさを見習って、小さな体に変えて良かった。

大人の見た目だとやっぱり怪しいし、こうしてみんなに歓迎されなかっただろうし。子供の見た目はやっぱり得だと思った。

馬鹿なふりするのもお手の物。元々難しい話が苦手だから、返って都合が良かった。



最終決戦までは力の解放もしないつもりだった。正体を隠し続けて、なぁんにも知らない女の子を続けようと思っていた。


だけど、そうもいかなくなっちゃった。

香炉の中で身体を癒している火球皇女に、秘めたパワーを気付かれていた。

セーラー戦士だと言い当てられて、素直に正体を明かす事にした。後悔はしていない。いつか明かさなきゃいけなかったから。遅かれ早かれ、バレていたと思う。

流石、火球皇女だと思ったわ。


セーラームーンが遠くで戦う気配がしたから、スターライツと一緒にセーラー戦士の姿のまま加勢に行った。

うさぎにも私がセーラー戦士だとバレちゃったけど、後悔なんて全くしていない。

もう、最終決戦はすぐそこまで来ているんだもん。勿体ぶっている場合じゃない。ルナとアルテミス、それにダイアナまで襲って来るんだもん。敵も相当焦ってるんだと思う。


火球皇女とうさぎが顔を合わせることになった。難しい話になったけれど、私が知っている事を概ね火球皇女が話してくれたから、私が話さなくて良くなって負担が減ったから有難い。


帰りの公園でちょっとだけ遊ぶ事にした。

久しぶりに難しい話を聞いたから、癒されたくて夢中でブランコを漕いだ。とっても楽しい。


「お前はだあれ?」


うさぎからそう聞かれる。


「あたしはあたしよ」


そう私はニッコリと答える。

今はこれしか言えないし、この答えが全て。あたしは、あたしでしかないから。他の誰でもないから。

うさぎだけど、うさぎじゃないし。

セレニティだけど、セレニティじゃない。

セーラームーンだけど、セーラームーンじゃなくて。


“ちびちび”


それが私の名前。育子ママが付けてくれた、素敵な名前を持つ小さな女の子。

ちびちびである自分も大切にしたいし、大事な時間。

こうして何も考えずに子供をしている私もちゃんと肯定したいんだ。存在しているって思いたいの。


うさぎははぐらかされたって思ったみたいだから、それでいっか☆


うさぎと楽しい時間を過ごしていたのに、ソイツは突然現れて平和な時間が壊されてしまった。

容赦ない攻撃。強い!幻覚まで見せてくる。精神攻撃。

不意を付いて攻撃して来るなんて、許せない!

わざわざ来なくったって、こっちから行く決意をしていたのに。その前にうさぎの心も身体も傷付けないで!

ギャラクシアの精神攻撃で気を失ってしまったうさぎに代わって、力を解放して追っ払う。壊されかけた街も再生して元通り。後はうさぎが元気を取り戻して、目を開けてくれるのを待つだけ。


夢でうなされていたうさぎ。寄り添って支えると目を覚ましてくれた。感謝されて、天使って言われてくすぐったい気持ちになる。


いよいよ最終決戦の日。うさぎはルナ達を育子ママに託して、出発の場所ーー一の橋公園べとやってきた。

先ずは外部戦士の城へ。ギャラクシアに殺られた後だった。悲しむ暇もなく、仇を打ちに射手座Aスターへ。驚きの真実と、過酷な運命と立ち向かう場所に、いよいよ行くのね。


射手座Aスターでの最初の敵、レテとムネモシュネ。二人の口から語られる未来の真実。セーラームーンの存在が戦いを引き寄せることを聞かされる。

その真実に、セーラームーンは凛として“あたしを殺して”と覚悟の一言。強くかっこいいセーラームーンがそこにいた。


二番目の敵、セーラーヘヴィメタルパピヨンに窮地に立たされたけれど、未来からの刺客セーラーちびムーンとセーラーカルテットがタイミング良く到着。

ここまでナビゲートして助けて貰った。

まだみんなの前で本当の力を解放する訳にはいかなかったから、ちびムーン達によって助けて貰ったという構図になってホッとした。


助けに来たちびムーンから、未来でみんなが倒れたことを聞かされる。仕方が無いとはいえ、ここで死んでしまうと未来のヴィーナス達も無事ではいられない。

お互い、置かれている状況を説明し合って驚き、ショックを受ける。

未来が変わる可能性がある。ちびうさが来たことでとっくに色々変わっているだろう30世紀。


ちびムーンが、うさぎの声を感じたって話してくれた。地球からはるか遠くの射手座Aスターまで導いたのはうさぎだと信じて嬉しそうに話してる。本当にうさぎのことを信頼していて大好きなんだと感じた。



「そちらの小さな戦士の方は?」


セーラーセレスにそう問われる。

どう答えようか?いつもの様にすっとぼけようとしたら、うさぎが笑顔で助け舟を出してくれた。


「このコはセーラーちびちびよ」


なーいす☆

その手があったか!


「セーラーちびちびっ?」

「そう!これでも立派なセーラー戦士なの。

セーラーちびちび……

そいえば あんた その後にムーンは付くんだっけ?」

「け?」


私自身もこの小さな体でのセーラー戦士名を決めていなくて、返事に困った。だから、やっぱりとぼけて見せた。


確かにムーン付けたくなるよね。

でも私は、何度も生まれ変わった先の未来のうさぎだけれど、月は守護していなくて……

あたしはあたしだから、セーラーちびちびが一番しっくり来るかな?

うさぎに付けて貰ったんだし、わざわざムーンを付けなくてもいい気がするの。


ちびムーンに妹かどうか確認するうさぎ。

二人にそっくりだというセレスに対して、ミレニアムの女王は第一王女しか産まないと否定する三人。

うさぎの子供じゃないならちびうさの子供かと美奈P達と話していたことをそのまま質問するうさぎ。


「……違うわ!お前は一体誰……?」


感も頭もいいちびムーン。即否定して、私の正体を探ろうとしてきた。見透かされたくなくて、咄嗟にうさぎの足に隠れた。今はまだ、バレたくない!

もう少し、本当の戦いが始まるまではーー。


今はそのタイミングじゃないの。然るべき時が来たら、私から絶対に言うから待って欲しい。

何事も、話すのにタイミングって奴がある。だから、あの時ちびうさも言いたくても本当の事を言えなかったんだよね?

今なら分かるよ、その気持ち。

言ったら信じて協力してくれるのは分かっているけど、説明出来なかったって事。ちびうさ自身も把握出来ていない戦いに、どう説明して協力してもらうか頭が混乱していたんだって。

なのに、あの時の私は余裕が無くて攻めてしまって、本当にごめんね。


奇しくも、ブラックムーンの時の状況が似てる。次々捕らわれる仲間。時空を超え、未来での戦い。敵となったちびうさがまもちゃんとキスをしているのを目の前で見ているしか無かった。


今回は時空も銀河も超えた壮大で壮絶な戦い。先に待ち受けるは、絶望だらけ。


タイミング良く霧が晴れて来て、ギャラクシアの城が聳え立った。

待ち受けていたのはスターライツのクリスタルを奪って行ったセーラーΦとΧ。ギャラクシア直属の配下で一番容赦が無く残忍な二人だ。

セーラー戦士に変身した火球が仇を取ろうとしたけど、ダメだった。また目の前で一つ、命が潰える。


そして、進んだ先で、遂にーー


次に敵として立ちはだかったのは、クリスタルを抜かれ、ブレスレットで一時的に再生した仲間のヴィーナス達。そして、恋人であるタキシード仮面。


セーラームーンを助けに入ったカルテット達がやられてしまった。

ちびムーンもブレスレットを外そうと加勢しようとする。


ダメ!


必死で止めようと、ちびムーンの手を握り、何があったのかを見せる。みんながどんな風になったか、映像を送る。

ちびムーンに、セーラームーンの目を覚まさせて貰う役目をして貰う。

必死で戦うセーラームーン。だけど、予想以上にみんなの力は凄くて。セーラームーン自身もまだ戦う覚悟が出来なくて、苦戦を強いられる。

ちびムーンは迷いなく立ち向かおうとする。


「ーーダメ!手を出しちゃいけない!これはセーラームーンの戦いだから。銀河の行く末がかかってる、セーラームーンの戦いだから。だから、セーラームーンを信じてーー」


ちびムーンの戦いじゃない。セーラームーンの戦い。辛いけど、私たちは見ているしかない。見守るしかないの。

他でもない。ギャラクシアとの戦いも、その先に待ち受ける本当の敵と真実と向き合い戦うのはセーラームーンだから。


「ちびちびーーお前は本当は何者なの?」


再び投げかけられた私の正体への疑問。

今回も何も言わず、セーラームーンとギャラクシアの戦いに集中した。


そして、遂にギャラクシーコルドロンへと到着した。

今までで一番残酷なショーの時間ーー仲間のクリスタル、そしてタキシード仮面がそこにほおりこまれてしまう。

最後の希望ーーちびムーンが消えてしまった。


セーラームーンの絶望の絶叫に、カオスが遂に動いた。そして、カオスの口から今まで戦ってきた敵の真実を告げられる。


愛する人や仲間を失って、何のために戦えばいいのか。戦いの必要性を見失って、セーラームーンは完全に戦意を喪失してしまった。


「セーラー戦士が一人残らずいなくなる。今こそ戦いの終わる時か」


「いいえ、戦いは終わらない。ずっと続くわ」


戦いが終わると感じた二人に、とうとう私の口から更なる真実を告げる時が来たと感じた。


「だから、あなたの手で“今度こそ”今 戦いを終わらせるのよ。銀河ほ未来を救うために。セーラームーン、あなたの最後の力で、全ての敵の源 カオスとコルドロンを消滅させ、戦いを終わらせるのよ!」


辛いけど、分かって欲しい。コルドロンと一体化したカオスを完全に消滅させなければ、戦いは終わらない。みんなも、戻って来られない。


「あなたが背負ってゆくのよセーラームーン!きっと後悔するわセーラームーン!」


銀河に平和を呼ぶには、もうそれしか方法が無い。その役目はセーラームーンにしか果たせない。

そして、その事を言うため、導くために私はセーラームーンに会いに来たの。


「ちびちび、あたしは諦めない。いつだって皆が教えてくれたもの。戦いの終わりには希望と未来があるって。あたしは作ってみせる。皆との未来を。だから、あなたも希望と未来を捨てないで。信じて。あたし達の希望の星は決して消えたりしない。星が輝き続ける限り、あたし達は大丈夫。負けないから」


「……うん」


これだけ辛い事ばかりと直面して、絶望したのに、セーラームーンは前を向いて未来を信じ始めた。

愛する人や仲間を失っても、皆と過ごす未来を諦めていなかった。

辛い現実を突きつけられたのに、それでも信じる事を止めないセーラームーンのその強い言葉に私は、そんな気分になって信じてみたいと思って、つい頷いていた。



side セーラーコスモス




セーラームーンの言葉に救われた私は、正体を明かそうと頬にキスをした。


「……ちびちび?」


戦いのさ中に気を抜いて、隙を見せちゃダメじゃない!

我ながら、相変わらず緊張感がないんだから。ま、そこが私のいい所で、私らしいんだけど。




……そうね

負けたりしない

だって、あたし達はセーラー戦士だもの



遂にセーラームーンは、持てる全ての力を解放してコルドロンの中へと飛び込んで行った。

師・ファラオ・90の中へと飛び込んだ時のように、なんの迷いもなく美しく包み込む。


全てのセーラー戦士の力を借りて、全ての力を使い、コルドロンを浄化している。


「シルバームーン・クリスタル!!エターナル・パワーーーッ!!」


すごい力。すごい輝き。

これが本当のセーラームーンの力。


「ーーこの光の洪水は!?一体ーー!?」


また、星が生まれそれぞれの場所へと帰って行く。

セーラームーン達もまた元の地球へと戻って、私が知る人生をやり直すのね。


カオスを完全に消すことは出来なかった。

だかどそれでもセーラームーンは、皆と過ごす未来を選んだ。

待ち受けるのはまたカオスとの繰り返す戦いの未来。

それを何度も後悔したからここへ来た。今度こそやり直すために。やり直させたくて。


正しい道を選ばせたくてうさぎに寄り添って、支えたけれどーー


選んだ道は間違ってなんてなかった。


誰も星の生まれるところを消すことなんて出来ない


もう逃げたりしない

前へ進んで行けるわ

エターナルセーラームーンから授かった大きな力でーー


“全て捨て去る勇気の力と、全てを受け入れる勇気の力ーー!忘れかけていた無敵の力ーー!”


「エターナルセーラームーンの様に全て捨て去る勇気と、全て受け入れる勇気を持てたら、その時こそわたしが 真のセーラーコスモスになれる時」


ありがとう、エターナルセーラームーン!

未来を信じる勇気を教えてくれて、ありがとう!

あなたのように、未来を信じて私もカオスと強い心で戦うわ。

全てを捨て去って、全てを受け入れて戦っていくわ。


「さあ、あなた達もお戻りなさい!あなた達の戻るべき場所へ、守るべき人の元へ」


ありがとう、セーラーカルテット達よ!

あなた達とセーラーコスモスとして、また話せたこと、未来を語れて良かったわ。

あなた達の記憶は消さないでそのままにしておくわ。ちびムーンやクイーン、キングに語って聞かせるかは、あなた達にお任せします。

どうか、娘をよろしく。そして、お元気で。


ちびムーンに会えた事も嬉しかったわ。

心配して、セーラームーンの援護に来てくれてありがとう。心強かったと思うわ。

戦おうとしてるのを止めてしまって、ごめんなさい。強敵に立ち向かおうとする姿は立派なセーラー戦士だったわ。

もう見習いなんかじゃない!

未来でも、立派にクイーンが務まるわ。私が保証する。

みんなを頼りながら太陽系を治めてね!


火球皇女やセーラースターライツとも会えて良かった。

太陽系外惑星の守護戦士やプリンセスと交流する機会なんて中々ないから、貴重な体験だし、いい経験が出来て刺激になったわ。

これからもセーラームーンを、太陽系の戦士たちを宜しくね。


月野家のみんな。優しく接してくれてありがとう。また一緒に過ごせて楽しかった。癒された。

さよなら言わずに出ていってごめんね。

きっと今頃はもう魔法は解けて、私の事は忘れていると思うけど、私は月野家で大切にされた事は一生忘れないよ。

この想い出を胸に、強く戦っていける気がするの。


ルナ、アルテミス、ダイアナ。

守ってあげられなくて、ごめんね。

この光の洪水の中、うさぎ達と蘇っているといいな。


最後に、うさぎ!

正しい道を選ばせるため、そして支えたくて会いに行ったけれど、結局、私が支えられた。これが一番正しいんだって教わった。

そう、その時の決断が一番正しい道なんだよね。気付かせてくれてありがとう。

そして、お疲れ様。これからも幾つもの困難が待ち受けているけれど、貴女の選んだ道は正しいから。だから、自信と誇りを持って真っ直ぐにその道を進んで生きなさい!

その先の未来には、希望も再生も救いも必ずあるから!

それを貴女に気付かせてもらったの。

ありがとう。


さて、私も私がいるべき場所に戻らなければいけないわね。

はるか遠く未来のギャラクシーコルドロンへと戻らなければ。随分と長く離れてしまったわ。


恋人も仲間もいない、孤独な場所ーーセーラーカオスが待つ、射手座Aスターへ。カオスと戦う為に。


そしてその先に、希望と再生ーー恋人と仲間がまたコルドロンから産まれてきてくれることを、願ってーーー



side うさぎ




また敵が現れた。

まもちゃんもちびうさもいない中で、新たな敵と戦わなきゃいけない。そう気を引き締めながら帰宅すると、玄関に知らない靴が置いてあった。


「ニコッ♡」

「だっっ誰っこのコっ」


小さな女の子が笑顔で出迎えて来て驚く。

しかも育子ママの言葉で更にびっくりする。


「いやねぇ、うさぎ。自分の妹のちびちびちゃんのカオ、忘れちゃったの?」

「ちゃったのっ??」


……はい?


勿論、妹なんていない。忘れるはずない。

これはちびうさの時と手口が似ているから、流石の感の悪い私にもピンと来た。

ちびうさの様に未来から来て、ママ達を何らかの術で家族と思わせたんだって。


私と顔が似ているから私と関係があるんだろうなってことは何となく察する。

敵も現れたし、何か警告なのかな?

とか色々考えたんだけど、ちびうさより小さいし、オウム返しばっかで意思疎通が出来ない。どうしよう……


美奈P達に会わせても、一緒だった。

ただ、私の二人目の子供か、ちびうさの子供と言う結論に。

もしもちびうさの子供なら、孫って事になるのよね?どーしよう。16歳でおばあちゃんになっちゃったよ?


どんな子かは正直分かんない。だけど敵意は感じられない。単純に可愛い♡

ちびうさと違って人懐っこい印象。

そのお陰で一緒に寝る事にしたんだけど、いい匂いがする香炉を持ってて癒される。


もしもこの子が未来の私の子孫なら、敵から守ってあげなきゃ。

ちびうさが来た時のように狙われて助けを求めているなら、力になってあげたい。


連絡のつかないまもちゃんの家に電話をする。不安になりながら呼び鈴を鳴らしているとちびちびが寄り添ってくれた。

不思議な子。何でも分かってる感じがする。ちびちびを抱き締めると癒される。ホッとする。


ジュピターやマーキュリーだけじゃなく、ヴィーナスとマーズまでクリスタルを抜かれてしまった。

ヴィーナスとマーズのクリスタルを抜いた奴の顔を見て、封印していた記憶ーーまもちゃんのクリスタルが抜かれた事を思い出す。耐え切れなくて、気を失ってしまった。


次に目を覚ますと、家で自分のベッドだった。傷ついた私にちびちびはずっと寄り添ってくれていた。

本当に何でもお見通しみたい。


セーラーティンにゃんことの戦いにセーラー戦士姿のちびちびが駆けつけてきて驚いた。

セーラー戦士、だったのね?

こんなに小さいのに、もうセーラー戦士になれるのね……


帰りの公園で、無邪気にブランコを漕いでいる姿は本当に小さい女の子そのものなのに、セーラー戦士だなんて……


「……不思議なコね、あんたってば。あたしにはなーんにも教えてくれなくて」


本当、あたしにはなーんにも教えてくれない。

ただただ笑顔で、あたし達の言葉を繰り返すだけ。

なのに、すんなり火球皇女やスリーライツにはセーラー戦士である事を明かしてる。信用、されてないのかな?それとも心配させない為?


分からないけれど、敵では無い事は分かるわ!


妙に懐かしくて、憎めなくて安心する。

なんにも言わなくても何かが分かるような……


「お前はだあれ?」


思い切って聞いてみた。

ちびちびの事をもっと知りたい。


「あたしはあたしよ」


あたしはあたし……


「コラッ☆またはぐらかしたわねっちゃんと答えなさい、ちびちびっ☆」

「きゃははっ」


あたしはあたし、か……

そう、だよね?

私も、色んな顔を持つけれど、私は私だもん!他の誰でもない。何者でもない。

私は私でしかないんだもんね。


はぐらかされちゃったけど、やっぱりまだ言えないのかもしれない。

言えるようになったら、話してくれる、よね?


直後、ギャラクシアの攻撃を受ける。

不意を着いた攻撃に、為す術なく倒れてしまった。ちびちびを守ってあげることが出来ず、不甲斐ない。

そう思いながら見た夢でギャラクシアに引きずり込まれそうになった。

そんな私の手をずっとちびちびが握ってくれていた。ちびちびに、助けられた。助けるハズの子なのに……


「ちびちび……おまえが助けてくれたのね」


ーーずっと感じてた

あたしの手を引っ張る柔らかくて温かい手


「ありがとう、ちびちび。ホントに不思議で頼りになるコね、お前って」


セーラー戦士だからかな?

私の事をなんでも知っているみたい。お見通しって感じ☆

私よりも、ずっとずっと頼りになるし、しっかりしていると感じる。


射手座Aスターで敵からの攻撃で数多の窮地に立たされる。ヘヴィメタルパピヨンの攻撃で窮地に立った時、ちびムーンとカルテットが到着する。

私の声を感じて導いてくれたとちびムーンは言うけど、私はちびムーン達が来る事すら知らなかった。

プリンセス火球のナビで来たと思っていたのも違っていた。


そんな時、ちびちびに注目が集まる。

ちびムーンに妹でも子供でも無いと否定される。

じゃあ、ちびちびは一体、何者なの?



「戦いは終わらない。ずっと続くわ」


頼みのクリスタルがコルドロンへと消えて戦意喪失した私に、ちびちびがそう語りかけて来た。


「あなたが背負ってゆくのよセーラームーン!きっと後悔するわセーラームーン!」


やっぱり、ちびちびはただのセーラー戦士じゃ無かった。未来を、遥か先の未来を見てきたんだ。知っているんだとちびちびの言葉で確信した。

そして、戦いが続く未来に傷つき、絶望して私に救いを求めてきたのね。

そんなちびちびに、私がしてあげられること。それはーー


「戦いの終わりには希望と未来があるって、あたしは作ってみせる。皆との未来を。だから、あなたも希望と未来を捨てないで」


未来に救いがある事。希望がある事をちびちびに教えてあげることくらい。


「信じて。あたし達の希望の星は決して消えたりしない。星が輝き続ける限り、あたし達は大丈夫!負けないから」


信じる心を持つ事の大切さを、諦めない心を持つ事の意味を伝える。

すると私の頬っぺにキスしたちびちびは、その姿を大人の姿に変えた。

そっか、やっぱり立派なセーラー戦士だったんだね!

ずっと、不思議な子だって思っていた。

何もかも知っていて、寄り添ってくれていたんだね!


ありがとうね、ちびちび。

ここまで導いてくれて。

今まで守ってくれて。

私を頼ってくれて。

未来を教えてくれて。


最後まで見ていて。

私の戦いを。

そして、その先の希望と再生を。

私の全てを持って、終わらせてみせる!

そして、もう一度また人生を歩めるんだってところをーー





おわり



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