セラムン二次創作小説『君と過ごす特別な日(ネフまこ)』



まことの誕生日から早一週間。

結局またそれ以降、互いに忙しく会えない日が続いていた。


しかし、今日この日だけはとバイトを入れず開けていた。12月13日は俺の誕生日だ。

まことの誕生日も予定は入れない。

そして、まことにも何も入れないよう伝えている。


とは言えお互いの誕生日を過ごすのは2回目で。

付き合ってすぐの時にお互いの誕生日を聞き、驚いた。


「まことの誕生日っていつだ?」

「12月5日。勇人は?」

「俺は12月13日だ。すげぇ近いな!」

「だな」

「やっぱり俺とまことはそう言う運命なんだな」

「前世から惹かれあってたもんな。現世でもこうして出会って、また恋に落ちたし」


なんて話していたのはもう1年半ほど前のこと。

昨日の事のように思い出すが、結構前で、あっという間だと時の流れの速さを実感する。

頻繁に会っていた付き合いたての頃と違い、今は2人ともバイトに忙しく、まことがバイクの免許を抜きにしても恋人の時間は確実に減っていた。

だからこそ、お互いの誕生日だけは2人で会ってお祝いしたかった。


そして、一週間ぶりのこの日、俺は当然の様にまことのマンションへと向かった。


「まことー、来たぜ!」


大声を出してまことがいるダイニングへと入って行く。

そこには既にまことが腕によりをかけて作った豪華でカロリーの高そうな料理の数々が並んでいた。


「ん~いい匂いだな。それに美味そう♪」

「へへ、腕によりをかけて作ったんだぜ!」


そう得意げに話す料理上手か彼女。

ガタイがいい俺は、人より食べる量が多い。

だからという訳では無いが、彼女の料理上手なところにも惹かれた理由の一つでもある。


「勇人、誕生日おめでとう!生まれてきてくれて、ありがとう」


そう言いながらプレゼントを手渡され、驚いた。大きな箱だった事と、プレゼントが用意されていたこと。

この当たり前の事に単純に驚いた。


「こっちこそ、ありがとう。開けていいか?」

「ああ、開けてみて」


俺としては“プレゼントはあ・た・し”を期待したのだが……。

そりゃまぁ、物を貰うのも嬉しい。

思い出として一生残るからな。

なんて雑念を抱きながら梱包を雑に破いて中身を開ける。


「これは……」

「うん、そう。まだ乗ってないから」


そう、中身はヘルメットだった。

この前のまことの誕生日にバイクをプレゼントした俺。二ケツが出来ると喜んでいたが、結局メットを1つしか買っていないという痛恨のミスにより、合法バックハグがお預けをくらっていた。

そしてその後もまことを食う事も見送りになってしまい、溜まりに溜まっていた。


「まだ一回も?」

「ああ、だって約束したろ?一緒に乗ってくれるって」

「ああ、俺が優しくリードしてやるから、任せとけ!そして、死ぬ時は一緒だ」

「不吉な事言うなよ。うさぎを置いて死ねるかよ!」

「そうだな。俺もまた衛置いて死ねねぇわ」


お互い、かけがえのない大切で愛しい存在だ。

だけど同時にその命は共にお互いのためには無い。

前世からの主、衛とうさぎちゃんの為の命だ。

お互い、その事には理解が深い。

彼女のことも守ってやりたいが、彼女もまた内部戦士一の強さを誇る。守ってもらうなんぞ、プライドが許さないだろう。

俺の誕生日と言うこの日にまた、まこととその事を確認出来たことは有意義な時間になった。


「これでいつでも乗れるな?」

「うん」


今日一番の笑顔が弾けた瞬間だった。

本当にバイクに乗りたかった事が伺える幸せそうな顔。思わず、こっちも笑顔で幸せな気持ちになる。

そして同時にスケベ心があった事に多少の罪悪感が生まれた。


「勇人と乗りたかったから楽しみだ」

「俺と?」


意外な答えに驚き、思わず聞き返す。


「ああ、一緒に乗れるのはやっぱり心強いからな」


頼られてる?ってかめっちゃ信頼されてる?

うわ、嬉しくて何か泣きそうになって来た。

と同時に自分のスケベ心を呪った。

俺がエロい事考えてるなんて微塵も考えてない笑顔が眩しい。眩しすぎる。


「一週間会えず、乗れなくてごめんな。今からひとっ走りすっか?」

「うん。あ、でもその前に料理食ってくれよな。勇人の為にいっぱい作ったから」

「おお、是非!いっぱい食うぞー」


空腹だった俺は、美味しいこともあり、ほぼ間食して、満腹になった。

そして、楽しみにしていたバイク二ケツのことを忘れ、事もあろうか爆睡をかましてしまった。

起きた時は夜もすっかり落ちていて、バイクでドライブなんて危険な暗さになっていた。


「やっちまった……」


己の愚かさを呪いたくなった。やっと二ケツ出来ると思ったのに……。

まことも楽しみにしてくれていたのに……。

バイト激務のバカヤロー!


「疲れてたんだな。爆睡してたから起こさなかったんだ」


怒るでもなくまことの顔は慈愛に満ちていて、その表情は正に聖母マリアそのもの。癒される。……じゃねぇよ、オレ!


「ごめん!楽しみにしてたのに」

「大丈夫さ。また今度の楽しみが出来たって事で」


なんて優しいんだ、俺のまこと。


「今度、絶対バイク乗ろうな!」

「ああ」

「先ずはバイクの安全祈願兼ねて火川神社に行こう。まだしてないだろ?」

「言われれば!忘れてた。レイちゃんにやってもらえれば百人力だ」


そうして俺は次こそはバイクを乗り、火川神社へと祈祷をして貰う約束を取り付けた。

最初から遠出は流石にハードルが高いと思い、近場を敢えて提案した形だ。

和永は余計だが、長らく会っていないレイちゃんに会えるのは俺も楽しみだ。

クールで目も合わせてはくれないが……。





おわり



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