セラムン二次創作小説『アイドル戦士はやめられない(アル美奈)』



アルテミスは愛野家の食卓に置かれた夕刊の記事を目にして絶句した。

予想だにしていない内容が目に飛び込んで来たからだ。

そして、自分の目と記事を疑った。

そんなはずは無い。思い過ごしだ。何かの間違いだと頭がバグをおかしそうになっていた。


その記事とは、“セーラーV、再び活躍!!!”と言う内容だった。

しかも、ご丁寧に写真付きだ。

そこには間違いなく、あの頃より少し成長したセーラーVの姿が写っていた。


デス・バスターズを倒して以降、敵は現れていない。

それなのに何故セーラーVをやる必要があるのか?アルテミスは疑問でしか無かった。


「ともあれ、美奈に話を聞こう」


夕方だから、学校が終わってそろそろ帰ってくる頃だ。

詳しく話を聞いてみよう、とアルテミスは決意して美奈子を待つ事にした。


「ただいまぁ~~~」


程なくして渦中の人物が陽気に帰ってきた。

そのまま階段を上がり、2階の自分の部屋へと美奈子は直行する。

階段を上がる音が聞こえたアルテミスは夕刊を口にくわえ、後を追って2階の美奈子の部屋へと入る。


「おかえり、美奈」


口にくわえていた夕刊を無造作に床に放りながら、挨拶をする。


「これ、どういう事だ?」

「なんの事?」


無造作に置かれた新聞を前足で叩きながら美奈子に問いただす。

しかし、張本人は新聞など素知らぬ顔で読もうともせず、無関心だ。


「“セーラーV”が記事になってるぜ?」

「うっそぉ~~~ッやったぁ~~~」


自分が記事になっていると聞くや否や、喜びを露わにして新聞を手に取り、セーラーVの記事を探し始めた。

全く、普段は新聞なんて全然興味無いのにこういう時ばかり読もうとして、厳禁な奴だな、とアルテミスは美奈子の行動に呆れる。


「何度も目撃されてる様だけど、これは美奈で間違い無いか?」

「ええ、間違いなく私よ!」

「なんたって今更“セーラーV”で人助け?」

「アイドル戦士だからよ」


美奈子曰く、セーラーVの姿の方が柔軟に対応出来るし、人気も知名度も圧倒的にあるからやり易い。との事。

デス・バスターズとの戦いの後から敵が全く現れず、体がなまって仕方が無くて動かしたかった。いつ敵が来ても戦える様に訓練の一貫だ。とそれらしい事を羅列していたが……。


「それは単なる現実逃避って奴だな」

「うっ」


そう、デス・バスターズとの戦い終了後、美奈子たちは本格的に受験勉強をする事になった。

勉強嫌いな美奈子にとっては、この状況はストレスでしかないとアルテミスは理解していた。

勉強よりも戦って死ぬ方が良い。そう言う考えの持ち主。

じっとするとイライラする。動きたい。美奈子とはそう言うタイプの人間だとアルテミスはよく知っていた。


「受験勉強が苦なだけだな。実際、ダークキングダムやブラックムーンとの戦いの後はそんな事、して無かったろ?」

「だぁってぇ……勉強やテストばっかなんだもぉ~ん。頭も体もおかしくなりそうで……」

「言い訳無用!ちゃんと勉強しなさい」

「えぇ~~ッそんなぁ……お代官様ぁ。慈悲を!」


勉強ばかりで気が狂いそうだと訴えかける美奈子。


「実際、セーラーVの活躍で世の中、平和になってるのよ?」


記事を読み上げて、どれだけ自分が世の中の役にたっているかを訴えた。

確かに、かなり役にたっているようなのが見て取れる。


「……勉強に差し支えないよう、程々ならまぁ認めなくはないけど」

「本当?やったぁ~、アルテミスありがとう」


バンザーイと泣いて喜びを爆発させる美奈子。


「やっぱり、アイドル戦士は辞められないわ」


美奈子の本音に、呆れてガッカリするアルテミスだった。





おわり



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