セラムン二次創作小説『運命を乗り越えて(旧作まもうさ)』


うさこと付き合うようになり、普通の幸せな日常を満喫していたある日、その日常が一変する出来事が次々起こった。

空から突然落ちて来たうさこと似た様な髪型をした女の子。そして何故だか知らないけどその女の子は銀水晶の存在を知っていて、探している。

更には何故かこの子が敵から狙われているらしい。

こんな小さい子が何故?そう思っていた矢先、俺自身にも不幸が舞い落ちてきた。


“地場衛、お前は月野うさぎに近づいてはならない。2人が結ばれし時世界は崩壊し、月野うさぎ即ちプリンセス・セレニティに不幸が起こるであろう”


うさこと結婚式を挙げると言う幸せな内容とは相反して、世界が崩れると言う映像になったかと思えば、謎の声からの不吉な予言めいた予知夢……。


ただの夢だと割り切って無視する事も出来ただろう。

割り切る事が出来れば楽だろう。

しかし俺は“幻の銀水晶”探しの時から夢が予知夢であると言うことが証明されて来た。ーー経験から来る感ってやつだ。


この夢を毎日見るようになってから俺はこの夢について苦悩する日々を送る事になってしまった。


うさこに近づけばうさこ自身に不幸が起きる上に世界まで崩壊?何だよ、それ……。

俺はただうさこと普通に幸せな日々を過ごしたいだけだと言うのに、何故こんな夢を見続けなければいけないんだ?俺になんの恨みがあるんだ?声の主は誰だ?

うさこに不幸が起こるって、一体どんな不幸だよ?


「俺に馴れ馴れしくしないでくれ!お前には愛情を感じられなくなった。終わりと言う事だ」


とうとう白昼夢としても見るようになり、より具体的になって行った。

その直後にうさこと出会い、彼女を守る為に苦渋の選択をする事に。

出来れば別れなんか告げたくはなかった。

しかし、どれだけ考えてもこれしか彼女を守る方法がなかった。

何も詳細を告げず突然別れる。

うさこに余計な事を悩まずに済むし、俺だけがこの問題を抱えればいい。

それに別れることでうさこが幸せで元気であればそれで俺は救われる。そう思ったから。


けれど、タキシード仮面としてセーラームーンを守りたいと言う気持ちだけは嘘をつく事が出来ずにいた。

地場衛として近づく事で不幸になるのであればタキシード仮面として守る事はそうならないのではないか?との結論に至った。

そうする事で少しでも地場衛として酷い事をした事への罪滅ぼしが少しでも出来ればと思った。

しかし、その考えは浅はかだったと考えを改めさせられることになった。


地場衛として冷たくあしらっている一方で、タキシード仮面としては彼女をサポート、この相反する行動は彼女を更には混乱させ期待させてしまうことになってしまった。


突然の別れに戸惑ううさこは一方的に絶縁した俺にしつこく泣いてすがってきた。

突き放しても突き放しても……。

それでも彼女は諦めてはくれなかった。

それが更に俺の中のうさこへの愛情を苦しめた。

どれだけの断腸の思いでうさこと別れたのか、知りもしないで。


同時に彼女の俺への深い想いも伝わって来た。それ程までに俺の事を……。

いや、うさこはずっとそうだった。

ゾイサイトにやられ傷ついた体で目的地に向かう時も心配して危険を顧みず着いてきてくれたり、敵の手に落ちた時も根気強く説得し続けてくれたり、記憶を失くして彼女に冷たくしていてもずっと寄り添ってくれた。

ずっと俺を一途に思ってくれていたことを改めて思い出し、そんな彼女にまた俺は突き放して酷いことをしている事に我ながら鬼畜だと自身を呪った。

彼女に申し訳ない、そんな想いが込み上げる。


そして同時に俺自身がどれだけ彼女に救われ、どれだけ彼女が必要で、どれだけ愛していて、自分にとってどれだけ大切で大きな存在であるか気付かされた。

うさこといると心が安らぎホッとした。

うさこと距離を取っている今はまた広い部屋に一人きりで孤独だ。いや、うさこといたことによってうさこと付き合う前よりもっとずっと孤独だった。


これを選んだのは俺だ。

突然俺に拒絶され、訳が分からず苦悩するうさこの辛さに比べると俺の苦しみなんて大したことは無いし、苦悩する事も許されないだろう。

しかし、どれだけ時間が経ってもあの夢は終わらない。

それどころか益々強くなる。

何故こんな夢を見せる?

何故こんな夢を見なければいけないんだ?

一体なぜ……?


俺はただうさこと一緒にいたい、ただそれだけなのに……。

前世で許されない恋をした報いなのだろうか?

まだ前世の因縁が続いていて断ち切れないでいるのだろうか?

うさことの未来を思い描いては行けないのだろうか?

考えれば考える程分からなくなってしまう。


そんな事を毎日繰り返し考えていたある日、うさこが夜に凄い勢いで聞きたいことがあると神妙な面持ちで訪ねてきて一変する。

何とうさこも同じ夢を見たという。うさこまであの夢を見るなんて……。

“ただの夢かもしれない”と割り切っていたが、毎晩同じ夢を見続けている俺は未来を予言する夢だと警戒していた。


「私、まもちゃんと一緒なら死んでもいいよ」


そんな事簡単に言わないでくれよ……。

俺がどんな思いでうさこを遠ざけてきたと思ってるんだ……。

俺だって一緒にいたいさ。でも、そうする事で不幸になるなら本末転倒じゃないか。

いや、分かってる。うさこはそういう子だ。分かっていたから余計言えなかったんだ。


「例え地球が壊れたって私が死んじゃったって私はまもちゃんと一緒にいたいよ」


そう言われても、君を不幸にしたくない。

散々傷つけた俺に優しい言葉をかけてくれるうさこに縋りたいと思った。


しかし、また敵が現れてセーラームーンを助けて必死で戦う彼女を見て心を動かされ、気づけばこれからも共に戦おうと歩み寄っていた。今の俺の素直な気持ちだ。


こんな不器用でどうしようもない恋愛下手な俺にうさこは最後まで信じてくれた。

一緒にいたら不幸になるなんて夢、確かに確信なんてないのだから2人の気持ちが、俺たちが今どうしたいかだと思った。


どんな運命が待ち構えていても、俺は今うさこと一緒にいたい。

この気持ちだけはやはり譲れない。

うさこと一緒にこのどうしようもない運命さえも乗り越えていける。そう信じている。


だって俺たちは“どうしたって結ばれちまう運命”にあるのだからーー。





おわり



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