セラムン二次創作小説『聖夜のバカヤロー!(旧作まもうさ)』



クリスマスイヴの夜、衛とうさぎはうさぎの家の近くでデートをしていた。

二人だけのささやかな夜。


12月に入り、うさぎの期末テストや衛の論文の締切が重なり、すれ違っていた。

この日も衛の論文執筆の為、会えない事になっていた。


しかし、せっかくの聖夜。衛としても愛する彼女と会えないのは寂しい。

いてもたってもいられず、ノープランでマンションを飛び出し、うさぎの家へと向かう。

すると、同じ気持ちで家から飛び出したうさぎと、途中で鉢合わせ。


「まもちゃん!!?」

「うさこ……」


うさぎは衛を見るなり、衛の胸に飛び込んだ。

衛はそんなうさぎを優しく抱き留める。

そのまま熱い抱擁を暫くの間、交わす。


「まもちゃんも、同じ気持ちだったんだね?嬉しい」

「考えてる事、同じだったな。やっぱり俺たちは運命だ」


そんな会話を繰り広げながら、目的も無く歩き始める。

行くあても無い、ささやかなクリスマスデート。


「ごめんな、どこにも連れて行ってやれなくて」

「ううん、こうして会えただけで私は充分幸せだよ」


12月に入ってから今日まで、会う時間がほとんど無く。お互い学業が大変なので仕方ないとしても、寂しい気持ちは込み上げていた。


笑顔を見せて喜びを爆発させるうさぎを見て、衛は救われた気持ちになった。

クリスマスだからと言って、どこかへ行き、特別な夜を過ごさなくてもいい。こうしてこの日に会える。それだけでも充分、特別だ。


「月が綺麗だね、まもちゃん」

「ああ、そうだな」


母星を見上げるうさぎの姿は、何よりも美しく。月明かりに照らされ、より一層美しく見えた。


「きっと、月が俺たちを会わせてくれたんだな」


それは綺麗は満月で。今日まで会えなかった二人への、クリスマスプレゼント。そんなロマンティックな事を衛は考えていた。


「クイーンに、感謝だね」


前世のうさぎの母親が、すれ違う二人を会わせてくれた。そううさぎは考えて、月に手を合わせ、祈り始めた。


「クイーン、お母様。ありがとう」


そう感謝をして、もう一度空を見上げると。


「あ、流れ星♪」

「本当だ」


慌ててうさぎは願い事をし始める。


「叶うといいな」

「何を願ったんだ?」

「な・い・しょ、だよ♪」


珍しく内緒にするうさぎに、愛おしさが込み上げてキスをしようと、顔を近づける。

うさぎも気付いて、目を瞑りながら近づいてくる。

キスまで後数ミリ、と言う所で、近くから声が聞こえた。


「おーい、おだんこ!衛さーん」


キスを止め、目を開けると、そこには思わぬ人物の走る姿が目に入って来て。二人は声を上げ、驚いた。


「せ、せーや?」

「星野……くん?」


スリーライツの星野光だ。

地球にいないはずの星野が現れた事で、二人は絶句した。


「せーや、何でここに?」

「今日はクリスマスだろ?」

「クリスマスは関係ないと思うが……」


地球の行事であるクリスマス。それは外宇宙の星野光には全く関係ない事だった。


「関係あるさ。クリスマスの夜の事を何て言う?」

「聖夜、だな」

「そうだろ?で、俺の名前は?」

「……せーや、ね」


言わされた感満載のうさぎと衛は、頭が痛くなるのを感じた。


「2人とも、よく出来ました!そう、俺の名前は星野光!名前からして、ピッタリだろ?」

「……」

「……」


最早、面白くないダジャレに、答えるのも虚しくなって来た2人。声にならず、黙ってしまった。


「何だよ、2人とも。ノリわりぃな?」

「いや、余りにもバカバカしくて。声にならなかっただけよ」

「呆れてものも言えない。とはこの事かと、今初めて体現したよ」

「二人とも、ひでぇな……」


酷いのはあんたの思考回路よ!とも言う気力もうさぎは失われていた。


「それに……」

「何?まだ何かアホな理由あるの?」

「俺のスーツの色は赤色だ!」


ジャーンと言ってスリーライツ時代の赤スーツに身を纏った姿を見せる星野。

それは正に、サンタクロースと同じで。


「はぁ……」

「名前にスーツのカラー、何から何まで今日は俺の為の日だろ?」


嬉しそうにはしゃぐ星野。


「ダジャレに次ぐ、ダジャレ、だな」


衛はやっと思いで、言葉を発した。


「別に、せーやの日じゃないわよ!恋人たちの日よ!」

「何だよ?俺に会えて嬉しいだろ?」

「嬉しくなーーーい!せっかくのまもちゃんとのクリスマスが……」

「ああ、台無しだな……」


本の数分前まで、二人きりのクリスマスをロマンティックに過ごしていた衛とうさぎ。

思わぬ人の登場に、気持ちが全くついていけずにいた。

そんな二人を他所に、星野は一人、大はしゃぎ。久しぶりにうさぎに会えて喜ぶ星野。


二人の気持ちを置いて、聖夜に久しぶりの星野の歌声が響き渡るのだった。





おわり



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