セラムン二次創作小説『天邪鬼』



「うさぎ、お前は将来俺の嫁になるんだからな!」


うさぎを見ると決まり文句のように繰り返し口説く兄さんを見ていつもウンザリしていた。

今日もまたうさぎを見るやいなや決めゼリフを吐いていた。


「無理だよ!私、結婚の約束してる男の子がいるもん」


兄さんの求婚にうさぎの方も決まってこの台詞で断りやがる。

全く、僕の兄さんの求婚を断るなんてこの女、何様のつもりだよ?

寄りによって結婚の約束してるとか何なんだよ?どこの誰だよ!

兄さんが求婚してやってんだから有難く受け取りやがれ!

受け取られてもイライラするけど。


「毎回その決まり文句で断るけど、本当なのか?」

「本当だよ!うーんとうーんと小さかった時、近所に住んでた優しくしてくれた少し年上のお兄ちゃんと指切りしたもん!嘘じゃないもん!本当だもん!」


ウンザリだ!近所のお兄ちゃん?

そんな奴いないばかりか、近所のお兄ちゃんは兄さんと僕だけだ。

周りにうさぎより年上の同年代のお兄ちゃんなんていない。

夢か幻覚、もしくは空想や妄想の中の近所のお兄ちゃんなんじゃないかと益々疑う。

有り得る!大いに有り得る!うさぎなら幻想の中に理想の男の子を作り上げてそうだ。

そこから派生して現実化して存在しない理想の男の子を待っているに違いない。空想が好きなうさぎのやりそうな事だ。可哀想に…。


って言うかそのお兄ちゃんって案外兄さんの事なんじゃ無いのか?

バカだから記憶があやふやになってて違う奴と思い込んでるんじゃ…?

そうだとしたら兄さんに対して失礼過ぎるし、相思相愛って事になるからそれはそれで面白くない。


その事に2人ともまだ気付いてないみたいだから言わないでおこう。

くっつかれるのも癪だし。


「空想の中の話だろ?」

「違うよ!ちゃんと現実のお話だもん!あーちゃんのいじわるー」

「意地悪で結構、兄さんは僕のものだからな!」

「大ちゃんはお兄ちゃんみたいな存在だから、好きとは違うもん」

「2人とも大人気ないぞ」


そりゃそうだ。僕達はまだ小学生だ。大人じゃない。些細な事で言い争うのは当たり前だ。

その中心が兄さんとなると尚更だ。

うさぎに兄さんは勿体ない!あげない!


「大体兄さん、何でうさぎなんだ?」

「好きに理屈は無い!うさぎがいい!気づけば好きになっていた。ただそれだけの事だ」


知的な兄さんにバカなうさぎなんて似合わない。

最初からうさぎが好きなんて、心奪われる魅力がコイツのどこにそんなもんがあるんだ?

全く分からない。最も分かりたくなんてないけど。


「うさぎのどこがそんなにいいんだ?」

「うさぎだから、うさぎの存在そのものが好きだ」


ベタ惚れって奴か?面白くない!

そしてこれだけ愛されているにも関わらず、全く靡かないばかりか他に好きな奴がいるとか、気に入らない!


「こんなに兄さんが想っているのに贅沢だぞ、うさぎ」

「んな事言われても…。約束してるんだもん!大ちゃんと結婚は出来ないよ…」

「またそれだ。もうウンザリだ」

「何をそんなにイライラしているんだ、蒼」

「僕はただ、兄さんには幸せになって欲しいだけだ。報われない恋で人生を無駄に過ごして欲しくない!」

「蒼の気持ちは嬉しいが、俺は十分幸せだ。うさぎと蒼がいてくれるからな」

「兄さん…」


兄さんの優しい言葉に泣きそうになる。

感動していたその時ー。


「蒼ももしかしてうさぎが好きなのではないか?」

「はぁ?」


泣きそうになっていた涙が物の見事に引っ込む。

僕がうさぎを好き?嫌悪感に虫唾が走る。

どうしてそうなった?


「好きな子にはいじめたくなると聞いた事がある。蒼がその類かと思ってな」

「…」


よくある“嫌よ嫌よも好きのうち”って奴か?

僕に限ってそれはない!

こんなバカを好きなはずない!

断じてない!





おわり



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