セラムン二次創作小説『衛とレイの愛、再び!?うさぎの嫉妬(旧作まもうさ)』

side 衛


衛と順調に愛を育んでいたある日、それは突然やって来た。
衛の部屋が壊滅状態になるが、レポートが遅れている。次の日までに仕上げたいと嘆く衛に騒動の一端となったレイは罪の意識から家に泊まりに来る様提案。
昔付き合っていた元恋人の二人。うさぎはそれを覚えていて、嫌悪感を抱いた。
阻止しようとするも、結局衛はレイの家へと行ってしまい、心配で夜も眠れなかった。
結果的に何も無かったが、気持ちは晴れぬまま。
先延ばしにしていたが、向き合う時が来たのだとうさぎは意を決して衛に問い詰めることにした。

「まもちゃんはレイちゃんの事、どう思っているの?」

レイとは気の合う親友だ。口も性格も良くは無いが、友達思いで優しい。面倒みも良くて、何でも相談出来る素敵な女性。
似ている為にぶつかり、よく喧嘩もするが、喧嘩するほど仲がいいとはよく言ったもので、正にそうだ。
誰よりもレイの魅力や素敵なところを身近で見ていたうさぎだからこそ、別れて自分を取ってくれた事が不思議だった。

「どうって?」
「昔付き合ってたでしょ?好きだったから、付き合ったのにどうして別れちゃったの?」

うさぎとしては当然の疑問である。
例え前世で恋人だったからと言って、現世はそれに縛られる必要など何も無い。
ましてや同情で付き合ってくれても嬉しくもない。

「レイちゃんの事、嫌いになっちゃったの?」
「いや、そうじゃないよ」
「じゃあ、どういうこと?」

うさぎは腑に落ちなかった。
以前、うさぎは衛に絶交を言い渡された。その時は、これ以上ない程コテンパンに拒絶の意を示し、愛情を感じられなくなったとはっきり別れを告げられた。
結果的にそれは、うさぎを守る為の嘘だったのだが、うさぎはそれ以来また同じ事が無いかと怖かった。

「本当に好きなのは、うさこだけだって気づいたんだ。うさこの方が、よりもっと愛してるって大切だって思ったんだ」
「いつから?」
「気づいたら、かな?」
「じゃあ、レイちゃんの事は?」

鈍感なうさぎだが、レイと付き合ったきっかけはレイの猛アタックだと知っていた。自身も、記憶を失くしてしまった衛に猛プッシュして今の関係に至っている。
それだけに、衛が押しに弱いと勘づいているからそこ不安を覚えた。

「まもちゃん、押しに弱いでしょ?レイちゃんともそうだったし……」
「最初はそうだった。付き合って行くうちに好きになるかと思ったけど、ダメだった。レイちゃんには、悪いけど……」
「そっか……」
「それに……」

衛は尚も言葉を続ける。

「好きになろうと努力はしたんだ。ただ、あの頃は自分の失くした記憶の為にタキシード仮面になって幻の銀水晶を探していて、それどころではなかった。セーラームーンの事も気になっていたし、知りたい。助けたいと言う気持ちが日に日に増していった」
「まもちゃん……」

衛の言う通り、あの頃は必死だった。タキシード仮面がその度に助けてくれた。
気になってどうして助けてくれるのか聞いた事があった。

“熱き血が騒ぎ、助けたくなる”

そう言われ、嬉しく思っていた。
あの頃はまさか、嫌味なヤツと忌み嫌っていたその人がタキシード仮面だとは思わず、レイと付き合っている事もそこまで気にならなかった。
けれど、今更ひとつ屋根の下で過ごした二人にあの頃の事がこんなに引っかかるとは思いもしなかった。

「レイちゃんの事は、何とも思ってないの?」

うさぎが一番聞きたかった質問だった。

「ああ、あの頃から今も何とも。レイちゃんには酷い事をしたと思ってる」
「本当だよ!」

好きでも何でもないのに付き合う。
好きなのに別れる。
どちらも酷い行動だ。うさぎにはどちらも理解出来ない。
気持ちが無いなら付き合わない。好きならどんな事があろうと付き合う。それが恋や愛だと思っていた。
しかし、衛は違っていた。

「じゃあレイちゃんとは、キスとか?」
「無かったな」
「そっか。一晩ひとつ屋根の下にいて裸見られても何とも思わなかったの?」
「ああ、レポートで必死だった。風呂に入って来た時は驚いたけど、それだけさ」
「そっか、それを聞いて安心した。レイちゃんは美人でスタイルも良いし、友達思いで素敵な女の子だから、また好きになって付き合ったりしたらどうしようって心配しちゃった」
「不安にさせてすまない。俺はうさこだけだよ」
「えへへっ私も、まもちゃんが大好きだよぉ」

レイの事は何とも思っていない。その言葉を聞いたうさぎはホッとした。
安心したうさぎは、涙を流して衛に抱き着くと、衛は笑顔で優しく抱き締めた。



side レイ


うさぎは、レイに確かめたい事があって火川神社へと来ていた。


「レイちゃん、まもちゃんの事はどう思っているの?」


ストレートに、単刀直入に問い詰める。


「どうって?」

「惚け無いで!まもちゃんと付き合ってたでしょ?」

「うさぎの知ってるとおり、確かに付き合っていたわ」

「レイちゃんはまもちゃんの事、好きだったの?」

「どうして昔の事を掘り起こされなきゃ行けないのよ!」


うさぎに問い詰められたレイは、逆ギレする。

終わった恋を再び思い出さされ、古傷が抉られそうだった。


「ひとつ屋根の下で過ごして、まもちゃんの裸まで見て、意識したんじゃないの?私だってまだまもちゃんとひとつ屋根の下で一晩共に何てして無いし、裸だってまだなのに。レイちゃんばっかりズルいよ!」


うさぎはそんなレイを羨ましく思った。

そう、うさぎはまだ衛の家に止まったり、裸を見た事がなかったのだ。


「へぇー、ちびうさちゃんって子供がいるのに、衛さんとはまだそーゆー関係じゃないんだ。子供ね、うさぎは。衛さんにも女として見られてないんじゃないの?」


うさぎの言葉に、レイはまだ衛と大人の関係では無いことを見抜き、負けじと反論する。


「放っておいてよ!大切にしてくれてるんだもん!」

「ふぅーん、どうだか」

「何よぉ!振られたからって、負け犬の遠吠えじゃない」

「譲ってやったのよ!有難く思いなさいよ」

「なぁんですってぇ!」


売り言葉に買い言葉。ついついいつものノリで口論に発展してしまった。

暫くして冷静になったレイは、静かに話し始めた。


「前にも言ったけど衛さん、私と一緒にいてもいつも上の空で楽しくなさそうだったのよね。でも、あなたと一緒にいる時は楽しそうにしてたわ。タキシード仮面として助けるのも当時からセーラームーンだけだった。入り込む隙なんて、最初からどこにもなかったのよ」

「レイちゃん……ごめんなさい」

「ううん、私の方こそ、うさぎを不安にさせていたわね。確かにそうよね。元カノが親友として近くにいるんですもの。もしかして……って気持ちになるわよね」

「私の方こそ、無神経にまもちゃんとのラブラブを見せつけちゃってごめんね。何も考えてなかった」

「衛さんはうさぎを取った。それが全てよ」

「レイちゃん……」


スキーに行った時に敵の魔の手に落ちて二人で衛の事を話し合った事をうさぎは思い出していた。

あの時も、レイは必死でタキシード仮面に“貴方の愛したセーラームーン”と言って説得し、応援してくれた。まだ好きで気持ちを整理出来ていないのに、必死で訴えてくれていた。


「好きだったわよ、すっごく!最初の動機は不純だったし、好きになってもらえていないって分かっていたけれど、どんどん好きになって行った。本気で愛していたわ。冷たくされても嫌いになれなかった。女心も分からない人だったけれど、それでも魅力的な人で好きにならずにはいられなかった」

「レイちゃん……」


初めてレイから衛への気持ちを吐露され、うさぎは複雑な気持ちを抱えながら聞いていた。


「うさぎだって、衛さんの事好きだから私の気持ち、分かるんじゃない?」

「そりゃあ、まぁ……」


うさぎ自身も衛に拒絶された過去を持っていた。どれだけ冷たくされても、嫌いになれないばかりか、納得出来ず諦める事が出来なかった。

これからと言う時に言い渡された別れ。それでも信じて説得し続けた。そして、何とか分かり合えた。

レイももしかしたらあの時の自分と同じで、根気強く付き合い続ければ気持ちが向いて好きになって貰えると期待していたのかもしれない。

しかし、それは結局叶わぬ恋だった。


「それに、衛さんとは話がついているのよ?」

「え、どーゆー事?」

「あら、知らなかったの?うさぎと付き合い始めてすぐにケリをつけに来たのよ」

「知らなかった。どうして?」


うさぎの知らない所で衛はレイと話をつけていた。初めて聞いた事実に、うさぎは驚いた。


「“うさぎと付き合う事になった”って報告と、“今までごめん。ありがとう”って。衛さんは律儀よね。どこかの誰かさんは、報告に来てくれ無かったけどね!しかも、今更嫉妬して蒸し返してくるとか」

「うっ」


確かにレイの言う通り、うさぎはレイへの報告を怠っていた。衛と漸く付き合えて舞い上がっていたこともあるが、どう報告していいのか分からずそのまま有耶無耶になっていた。

それがここに来て弊害になるとは思いもよらなかった。


「私も“うさぎをよろしく。泣かせたり、私みたいに冷たくしたら許しませんからね!”って」

「レイちゃん……」

「でも、私も分かってなかったみたい。親友と元彼がラブラブしてるのを近くで見るのがこんなに辛いなんてね!」

「アハハハ、面目ない」

「ま、お陰で見込みがないってはっきり分かって諦めがついて前に進む事が出来ながら、感謝してるわ。雄一郎もいるしね」

「色々疑ってごめん。レイちゃんも辛かったんだね」

「ううん、もっと早くちゃんと話しておけばよかったわね」


笑顔でそう言うと、レイは右手を差し出して来た。


「衛さんと、ずっと幸せにならないと火星に代わって折檻よ!」

「うん、絶対!幸せになるよ!レイちゃんも雄一郎さんの気持ちに早く答えてあげなさいよ」


うさぎも右手を差し出して、握手して和解した。





おわり





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?