セラムン二次創作小説『空を見上げて(ネフまこ)』


まことと外でデートを何度かしていて気付いたことがある。
まことは、空を見上げ無い。いや、俺はまことより身長が高いから、必然的に見上げるが、俺限定。
何だそれ、自惚れかって?そう言う単純な話ならそれで良かったが、それがそうでも無い。結構、深刻な話だ。

「まこと!」
「ん、なんだ?」

俺が呼べば笑顔で振り向き、俺を見上げる。それはいつもの事だ。

「いい天気だよなぁ~」
「ああ、そうだな」

梅雨も明けて、夏が到来した天気のいい日。久々に外でデートをしようと連れ出した。
天気がいいのは当たり前だが、あえて言う。そして、まことが俺を見る。相変わらず空は見上げない。俺に視線を合わせるだけ。別に見つめ合うのは悪くない。寧ろ歓迎だ。
だけど、事の真相を確かめておきたいと俺は意を決して核心を突こうと口を開いた。

「俺じゃなくて、空を見ろよ」
「見てるよ」

嘘だな。顔は俺の顔の角度で、瞳も動かず俺を凝視してる。

「見てねぇぞ。空を見上げるのが、怖いか?」
「なんでだ?」
「飛行機が飛んでいるかもしれないから?」
「それは……」

まことの顔が曇る。やっぱりな。
幼い頃、両親を飛行機事故で亡くしたまこと。TVCMの飛行機の音でも怖がる程のトラウマ。と言うよりはPTSDを持っている。
そんなまことが本物の飛行機を目にするのもきっと怖いはずで。空を見上げられないのは仕方がない事だと思う。

「図星、だな」

バレたまことはバツが悪そうに下を向いてしまう。
別に悪い事では無いし、仕方の無いことで攻めている訳では無いのに。

「バレてたの?」
「俺、まことの事愛しているからな!」
「……敵わないなぁ」

頬を赤らめて恥ずかしそうにするまこと。単純に可愛い。

「飛行機、怖いんだろ?」
「うん」

素直に白状するまこと。高いはずのまことが小さくなった様に見えた。思わずギュッと抱き締める。

「おまっここ、そと!」

俺の腕の中で、離れようと必死でバタバタと暴れるまこと。外とか関係ねぇ!今、抱き締めたい!抱き締めないとと思ったから抱き締めているのだ。
力持ちなまことだが、それを上回る俺の腕力。まこととてこの力には勝てない。それを分かっていて力を強めて抱き締めているんだから、俺もずるい奴だ。

「怖かったら俺がこうして何処ででもまことを抱き締めて守ってやるから、安心しろ!だから、いつでも頼ってくれ」

更に強く抱き締めてそうまことに呟く。その為に俺がいるのだから。そうまことを安心させるため。

「バカッ!!!」

バタバタと暴れていたまことだが、観念したのか一言暴言を吐いてギュッと抱き締め返して来た。ヤバい、可愛い。

「もう下ばかり向かなくて良いからな!」
「……それもバレてたのか?」
「まことの事はずっと見てたからな」
「草花を見てたんだけどな」

まことが草花を好きなのは知っているし、下を向いていたのも草花を見るため。嘘はついてないだろう。
だけど、空を見なくていい口実になっていたら?それはそれで切なすぎねぇか?

「せっかく背が高いのに勿体ねぇ」
「背は関係ないだろ?」
「俺の事を見つめてくれるのも嬉しいけど、せっかく守護星や月があるのに」
「いつか見上げたり、行けたらいいんだけどな……」
「そん時は俺も行きてぇな」
「勿論!」

今はまだ傷は癒えないが、克服出来た時は一緒に喜びを分かち合いたい。
その時まで気長にまことの傷ごと抱き締めてやろうと思った。

おわり


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