セラムン二次創作小説『Distance(エリちび)』



エリオスはいつもの様にいつもの時間に祈りを捧げようと神殿の中心部である“祈りの塔”に啓示を受け取る為に来ていた。


最近、小さな乙女に会えておらず逢いたいと雑念を抱きつつ、エリュシオンとクリスタルパレスはとても距離がある為仕方ないと悟りの境地だった。


雑念は捨てて祈りを捧げていると暫くしてスモールレディの姿が映し出され、驚きで絶句する。

先程の雑念が形になってしまったのかと後悔していると、笑顔で動くスモールレディが陽気に話しかけてきた。


「えへへぇーエリオス、元気?」

「本物…ですか?」

「本物だよ。驚いた?実はパパにルナPを改良して貰って遠くのエリオスとリモート通信出来るようにして貰ったんだ♪」


聞くところによるとルナPボールを介して遠くてもいつでも顔を見て話せる様にキングに秘密裏で頼み込んでいたらしい。

これでいつでも気兼ねなく顔を見られるというわけだ。


そしていつも同じ時間に祈りの塔で祈りを捧げている事を知っていたスモールレディは、その時間に合わせてリモート通信出来るよう待ち構えていたとの事だった。


リモートと言う言葉が分からなかったが、遠く孤立しているエリュシオンにいると地球では何が流行っていてどんな事が出来るとか文明の発展が分からない。

今は通信一本で顔を見て長く話せる時代になったのだとスモールレディが教えてくれた。


「これでいつでも顔みて喋れるね」

「そうですね」


聞けば私があげたクリスタルカリヨンを今も大切に持っていてくれていて、良く鳴らしてくれているらしい。

でもあの時とは違って鳴らして呼んでも来ないのでとても寂しくなってしまい、かと言ってすぐに会える距離でもないからと知恵を絞り、苦肉の策でルナPを改良するに至ったと経緯を切なそうに話してくれた。


私と同じでなかなか会えず、ずっと寂しい思いをしていたのかと愛しく思ったと同時に少し救われた。


「勉強等は大丈夫なのですか?」

「私、優秀だもん!エリオスと話す為に頑張るよ!」

「では毎日同じ時間に通信出来るのでしょうか?」

「毎日はダメだ!」


久々のスモールレディとの再会?に楽しく会話をしていると、まさかのキングが乱入して来る。


ルナPボールを改良した張本人でスモールレディを溺愛するキングは、たった1人の愛娘の頼みを渋々聞き入れ、改良するに至ったが、彼氏とラブラブトークを毎日する事にはとても複雑で受け入れ難い事実のようだった。


「キ、キング!?」

「ちょっとパパ!久しぶりのエリオスとの会話なのに、突然入ってこないでよ!」

「本当よ、エンディミオン!大人気ないわよ!」

「ママ、パパを引き留めててって言ったのに!役立たず!」

「ちょっと目を離した隙にいなくなっちゃったのよ。ごめんねスモールレディ」


キングを探して追ってきたクイーンまで乱入してきてしまいてんやわんやになっているリモートの向う側に戸惑いつつも少しホッコリするエリオス。


「エリオス、お久しぶりね。これからもスモールレディをよろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願い致します、クイーンそしてキング。そしていつでも通信出来るようにして頂き、ありがとうございます」

「ああ、ルナPボールも時代の流れに合わせてグレードアップする必要があると思っていたからね。まぁ何だ、次いでってやつだ」

「素直じゃないわね、エンディミオン」


照れ臭いのか言い訳をするキングを楽しそうに見るクイーンはまだまだ僕達以上にラブラブなことが伺える。

こういう2人みたいな夫婦関係になれればなと理想と尊敬で微笑ましく見る。


「もういいから2人は早くあっち行って!エリオスが見てる前で恥ずかしいったらないよ…」

「いや、僕は別に。楽しいですよ?逆にこんな形で挨拶になってしまって申し訳ないです」

「そこは全然気にしなくて大丈夫よ!私たちが、と言うかエンディミオンが勝手に我慢出来ず乱入して来たのが悪いんですもの」

「俺はただ、スモールレディが心配で」

「はいはい。2人のラブラブの邪魔だから私たちはもう行きましょうね」

「いいかい、エリオス?君の事は好きだし信用もしてる。でも毎日はダメだ!時間と曜日を決めて節度を持って楽しんで欲しい」

「分かりましたキング。ありがとうございます」

「ふふっエリオスのが一枚上手ね。あなたには私がいるでしょ?」

「それとコレとは別だー!」


終始楽しそうなクイーンとは逆に、終始悲しそうなキングはクイーンに即され絶叫と共に去っていった。正に台風の目だった。


「ふぅーやっと行ってくれた。ごめんねエリオス」

「何も謝ることはありません。私も久しぶりにお顔を拝見してキングとクイーンに挨拶が出来たので」

「エリオスがそう言ってくれて良かったぁ~。パパもママも恥ずかしいったらないよぉ」


呆れながらも何だか嬉しそうに話すスモールレディ。


その後、近況報告を少しばかり話した後、キングの言いつけ通りリモート通信をする曜日と時間帯、そして1回につきどれくらいの時間にするかを決めてその日のリモート通信は終わった。


あまりに突然で怒涛の初回のリモートだった為、その後暫く夢だったんじゃないかと祈りの塔の啓示の前で放心状態になってしまった。


しかしこの時久しぶりにスモールレディの顔を見られた幸せを噛み締めていたエリオスにはまだ分からなかった。

結局顔を見ると余計愛おしさが募り会いたくて仕方なくなるということをー。





おわり



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