セラムン二次創作小説『初デートに行こう(まもうさ)』


付き合って初めての休日。まもちゃんと初めての外出の日、私はいつになく舞い上がっていた。

その上、まさかまもちゃんにちゃんと告白して貰えるなんて嬉しくて更に有頂天になってしまった。

私たち、本当に付き合ってるんだ。隣で歩くまもちゃんの顔を見上げながらついついニヤケてしまう。


「どこに行きたい?」

「え?」


不意にまもちゃんから質問され、少し驚く。

手を繋いで歩いているけれど、確かにどこに向かっているのか分かっていなかった。ただ宛もなく、と言うかまもちゃんが計画してくれているんだって思っていたから。


「うさこはどこか行きたいところはあるか?」

「うーん」


初めてゆっくりデート出来るって思っていたから私はどこに行きたいとか特に決めていなかった。

と言うか、デートって男の人が決めてリードしてくれると思ってた。

でもまもちゃんも何も決めていないみたい。どうしよう。まもちゃんと行きたいところなんていっぱいあるよ。


「まもちゃんは?」


逆に質問してみた。まもちゃんが行きたいところってどこだろう。


「うーん、うさこが行きたいところ、かな?」


まもちゃんも特に考えてなかったみたい。

これって私の事を尊重してくれているのかな?


「うさこがいつも行っているところがいい。うさこの事、いっぱい知りたい」

「まもちゃん!」


私の事、いっぱい知りたいって。なんだか嬉しい。私もまもちゃんのこと、何でも知りたい。

これから、ゆっくり色々知っていけるんだね。


「行きつけの店、とか?」

「行きつけの店かぁ……あ、そーだ!」


どこに行けばいいのか迷ったけど、迷った結果、ある場所に向かって歩き出した。


「ここ!」


数分後。その店の前に立ち、店の中を指さした。


「ここって、ゲームセンター?」

「うん、ゲーセン。来たこと、ある?」


そう、まもちゃんの手を引き初めて来た場所は凡そデートとはかけ離れた場所だった。


「いや、ないなぁ」

「そうだよね。あはははは」


私が連れてきた場所は、ゲームセンターCROWN。まもちゃんは来た事ないって言ったけど、本当は知っているの。

記憶にないのかもしれないし、忘れてるだけかも知れない。だけど、まもちゃんがクラウンに来たのは初めてなんかじゃないってこと。

何度も来て、一緒にセーラーVゲームを何回もした。その時は“遠藤”って名乗っていて、別人みたいだった。

結局は同一人物だったけれど、まもちゃんは遠藤だった頃の事を全く覚えていないみたいだった。そりゃあそうだよね。あの時のまもちゃんはただ敵に洗脳されていただけだもん。忘れていて当たり前だし、その方がまもちゃんにとってもいいんだって分かってる。

だけど、私はちょっと複雑。


「入るか?」

「うん!」


少し戸惑いを見せていたまもちゃんだったけれど、迷うこと無く入ってくれた。

無理、してないと良いけど。


「色々あるけど、何する?」


入口で店内を見回すと、まもちゃんは色々ゲームが揃っていて驚いていた。


「これ、しよ?」

「セーラーVゲームか?」

「そう、美奈ちゃんのゲームだよ」

「ああ、アイツの」


分かったと言ってまもちゃんは何台かある中から適当に選んで座った。


「そこは……」


適当に座ったその場所は、正に遠藤だったまもちゃんが好んで座っていた所だった。

偶然とは言え、本当に驚いてしまった。


「ん、何か言ったか?」

「ううん、やろ!」

「ああ、レクチャー頼む」

「まっかせなさい!」


せっかくまもちゃんとのデートなのに、遠藤さんの事ばかり考えてしまっている。まもちゃんは私の事を考えてくれているのに。これじゃあ、浮気じゃない。しっかりするのよ、うさぎ!

気持ちを切り替えて、まもちゃんとセーラーVゲームを楽しむ事にした。


「って、まもちゃん上手すぎ!」


結果から言うと、まもちゃんはセーラーVゲームが上手かった。私の出番なんて何処吹く風で。逆に私のターンではまもちゃんが教えると言う逆転現象に。

何か納得いかない。初めてなのにどうしてこんなに上手いの?

やっぱり遠藤としてやっていた事が身についているのかな?遠藤さんも、相当上手かったもんなぁ。

いや、男の子だから?もしかしたらタキシード仮面としての経験値かも知れない。

美奈ちゃんが言っていたもんね。ゲームを通して戦い方をレクチャーしてたんだって。だったら戦い慣れている人がしたら難なくクリア出来る仕組みになっているのかも。


「いやぁ、たまたまだよ。うさこには負けるさ」

「そんなことないよ!これ、結構難しいんだよ?初心者は中々クリア出来ないようになってるの。私も最初は苦労したもん」


ゲームが趣味の私だけど、このゲームは本当に奥が深いと初めてやった日感心した。

それがゲーム初心者がここまでスムーズにクリア出来るなんて、凄い。

そう言えばまもちゃん以外にも初心者で難なくクリア出来た人が一人いたっけ。


「亜美ちゃんに続いてまもちゃんが二人目だよ。こんな高得点でクリアしていってるの。流石はタキシード仮面だよ」

「うさこは褒め上手だな」


まもちゃんも、亜美ちゃん同様頭が良い。

このゲームは頭脳も必要なのかも知れない。そう考えると楽だし、色々腑に落ちる。



「そうだ!ついでに案内したい所があるの」


セーラーVゲームでの私の見せ場がないと分かった私は、突然閃いた!

まもちゃんの手を引いて、次に案内したのはゲームセンターの中に作られた私たち戦士にとって大切な場所。


「ここは?」

「司令室よ」

「司令室……」

「そう」

「そんな所があったのか?」


私が連れて来た場所とは、司令室だ。

クラウンの中にある、私たちの大切な場所。

そして、かつて遠藤さんが探し求めていた場所。

侵入されて戦場になり、かなり破損したけど私の銀水晶の力で元通りになっていた。


「ここでルナとアルテミスが色々敵について調べているの」

「そんな大切な場所……」

「まもちゃんももう私たちの立派な仲間だもん」

「うさこ……」


仲間。ルナからは敵かも知れないと言われ、ずっと警戒されていたタキシード仮面。

結果的に彼は、前世でセレニティである私が命を懸けて最も愛したエンディミオンの生まれ変わりの姿だった。

記憶を失っていても惹かれあった運命の人。

成り行きでまもちゃんに案内したけど、ルナも許してくれるよね?


「こんな大事な場所に案内してくれてありがとう、うさこ」


そうか、仲間になったのかとまもちゃんは感慨深そうに呟いた。

私の恋人だもん。仲間以上だよ。教えない理由がどこにもない。これからもここで作戦会議があるかもしれないし。いや、無いことを祈りたいけど。


「ううん、まもちゃんは私の大切な人だもん。当然だよ」

「そう、だよな。この先もここを利用する事があるかも知れないしな」

「出来れば、金輪際無いで欲しいけど」

「確かに」


初めて来た司令室にまもちゃんは興奮を隠しきれないようだった。

無理も無いよね。私にはあまり分からないけど、高機能なコンピュータや探索機と色々調査に必要な設備が整っているみたいだから。

ゲームセンターの時とは明らかに違う眼差しで目の前に広がる光景に興奮している。

ゲームセンターの時もだけど、やっぱり遠藤さんの時の記憶は全くないみたいだった。今のまもちゃんは純粋に地場衛なんだと実感する。


「こんなに喜んでもらえるなんて、私も嬉しい」

「ああ、仲間っていいな」


まもちゃんが何気なく言った仲間と言う言葉がなんだかかなり重かった。

今までまもちゃんは一人で記憶を取り戻すためにタキシード仮面となって戦っていた。私たちとはまるで違う。別行動。仲間なんて当然いなくて。


「これからは一人じゃないよ。私がいるから」

「ああ、そうだな。寂しくないな」


寂しく無い。この言葉が私の胸に突き刺さる。

きっとずっとまもちゃんは一人で寂しかったんだ。本当は分かってくれる仲間が欲しかったけど、一人で大丈夫と強がっていたのかな。

そんな事を考えると胸が苦しくなった。


「これからは、ずっとまもちゃんの傍にいるから!」

「うさこ……」


まもちゃんの身体をギュッと力の限り抱き締める。寂しさも孤独も、まもちゃんが不安に思っている全てを包みたい。


「うさこ、離さないから」

「まもちゃん、大好き」


同じ様にまもちゃんも私を抱き締めてくれた。

まもちゃんを好きになってよかった。心から幸せだなって思える。

やっぱりここに連れてきて良かった。


まもちゃんとゲーセンに来たのは、私の事を知って欲しい。それは勿論あったけれど、遠藤さんとの想い出を塗り替えたかったから。

ちゃんとまもちゃんと想い出を紡いで行きたいと思ったの。まもちゃんと作るはずだった想い出の一ページが、遠藤さんのままはやっぱり嫌で。まもちゃん自身も忘れている遠藤さんの記憶。私の中からも追い出したかった。なんて言ったらまもちゃんも遠藤さんも嫌かな?


「まもちゃん、大好き」

「うさこ、俺も愛してる」


まもちゃんとの初デートは、色気のない場所だったけれど。私はとっても気持ちが温かくなった。





おわり




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