セラムン二次創作小説『宵闇に一番星が輝く(クン美奈)』





「今夜も星が美しいな」


学校が終わると、すっかり日が暮れていた。自然と空を見上げると、いつもの様に宵の明星が美しく輝いていて安心する。


何故だろうか?思春期になった頃から、宵闇の明星ーーー所謂一番星が妙に気になった。気づけば空を見上げて一番星を探していた。


普通ならば、月が綺麗とか気になるのだろうが、俺は月には興味が無く、寧ろ何故か気分が悪くなる想いがした。


「やはり一番星が一番輝いているな」


一番星と言われているだけに、他の星に比べるとずば抜けて美しく輝いていると感じる。近くで輝く月をも凌駕するほどに、その美しさは際立って主張しているように見える。

まるで、“私が一番美しいでしょ?もっと私を見て”と言わんばかりに目立っている。

俺はそんな一番星を見ると、妙に落ち着く。それと同時に、どこか落ち着かない。心が乱される。そして心が満たされもした。矛盾しているがーーー


「俺の前世は金星人だったのだろうか?」


前世などあるはずもない。そう思いながらも、いつも決まって金星を眺めているからふとそんな風に考えてしまった。

金星に何らかの関係がなければ、こんなにも気にならないだろう。惹かれないだろうと邪推したからだ。


それとも、俺自身が所謂根暗で寡黙なタイプだから一番輝く金星と言う星に憧れを抱いているのかもしれない。


実際、俺は夜の暗闇が好きだ。自身の性格が緩和される様な気がする。そして、一番星が見えて綺麗に輝くからな。

こんな俺でも、少しでも明るい気持ちになれる。そんな気がした。一番星が俺を照らしてくれる。見守ってくれていると心強く感じられた。


しかし、一番星が見えなくなり、根暗な性格が浮き彫りになる朝や昼が嫌いだった。どうしても好きになれない。朝が始まると早く夕方にならないかと時が流れてくれることを祈った。


別に学校が嫌いとかではない。寧ろ、勉強は好きだ。やればやる程、実力となり武器となる。理解出来ると楽しい。ワクワクする。

部活も楽しいな。体力を付けることはこの先にも役立つだろう。身体が資本だ。筋肉を付けることも大事だ。筋肉は裏切らない。


金星を見ることの出来ない昼間は、学校生活が充実している。金星を見られないのは残念だが、仕方が無いと腹を括っている。


充実しているからこそ時が経つのは早い。また学校が終わると、そこには美しく輝く金星が出ていた。


「今日もの金星が一番美しいな」


ホッとした俺は、金星に見守られながら帰路に着く。





おわり



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