セラムン二次創作小説『ストロベリームーンに恋をして(エリちび)』



この星と王子エンディミオンの守護祭司である私の使命はエリュシオンとこの星、地球と王子エンディミオンを見守り続けること。

そして、祈りの塔で祈りを捧げ、様々な啓示を受け取る事。


しかし、あの日ーーデッドムーンの侵略という悪夢が終わったあの日から、それ以外の事も考えることが日課となっていた。


それは、小さな乙女ーーセーラーちびムーンの事。


私が探していた乙女では無いと気づき、必要とされていないと嘆き苦しんでいた小さな乙女。あなたに助けられてから、私の中ではあなたを思わない日は一度たりとも無くて。

小さな乙女の事ばかり考えていると知ったら、あなたはどう思うでしょうか?軽蔑する?それとも、喜んでくれるでしょうか?


「小さな乙女よ……」


エリュシオンから月を、空を見上げる事が増えていた。毎日の日課と言えるかもしれない。

月に乙女が住んでいる訳では無いことくらい承知の上だけれど。同じ地球でも、同じ刻を生きていない特殊な環境にいる乙女。

そのふんわり優しい笑顔を思い浮かべるのに、月を見る他思い浮かばない。


「今日は満月か……」


この月を一緒に見られたら。そう思っていると、声をかけられた。


「ストロベリームーンって言うそうですよ」

「ミニマムーンとも呼ばれているようです」


メナード達だ。何だかニヤニヤした顔でこちらに話しかけてくる。


「6月はアメリカではイチゴの収穫時期で、その頃に月が紅くなる事からそう呼ばれるようになったそうですよ」

「日本では梅雨と重なるので、1年に1度しか見られない紅い月は願いが叶うと言われているのです」


メナード達が、天体に詳しい事に驚きを隠せ無い。女性というのは皆、ロマンティストで、こう言った類のものが好きなのだろうか?

小さな乙女もまた、こういう物が好きなのだろうか?


良く考えると、小さな乙女の事を私は余り知らないと漠然と思い知らされた。

私を救ってくれた、強く優しい乙女。戦士として、プリンセスとして悩んで苦しんで。それでも立派に戦っていた乙女。そんな姿しか見ていなかった。


もっと会って話がしたい。

何が好きか、何を思っているか。ーーーそして将来の事など。


ストロベリームーンに、ミニマムーンか……


「正に……」

「正に、小さな乙女!ですね?祭司エリオス」

「小さくてストロベリー色の乙女にピッタリの月ですね、祭司エリオス」


くすくす、と二人で私と交互に見てくる。

言おうとしていた言葉を取られ、若干ムッとする。


「エリオスは分かりやすいですね」

「小さな乙女は元気でやってますでしょうか?」

「きっと、今頃は立派にプリンセスの修行をしているよ」


そう、だからこそ頑張っている彼女の為にも気軽に会いに行くなど出来ない。


「エリオス!きっとよ!ーーーきっと、また会いにゆくから」


目尻に涙を貯めながら、そう言ってくれた乙女の心を踏みにじる行為は出来ない。乙女が立派に成長して会いに来てくれるその時まで、私は辛抱強く待っています。

待つのは慣れていますから。何年、何十年、何百年と待ち続けます。


「だからどうか乙女よ、それまで健やかに幸多からん事をーーー」


あなたとこの月を一緒に眺めたかったけれど、会うその時まで楽しみは取っておきましょう。

その代わり、私はここであなたの幸せをこの月に祈ります。

この祈りよ、乙女に届きます様にーーー。


ーーーその頃、30世紀にて。


同じく月を眺めていたスモールレディは、遠くの方で何が聞こえた気がしてハッとなった。


「エリオス?」


想い人の声に似ていた気がして呼びかけながら周りを見渡す。

しかし、自分以外誰もおらずガッカリと項垂れる。


「そんなわけないか……」


同じ時空に居ない2人。そう簡単に会えるわけないし、声も届くはずはない。分かりきっていた事だったが、もしかしてと期待せずにはいられない。

そんな奇跡が起こりそうな神秘的な月の輝きだった。


「本当の乙女になるまで会わないって決めたんだから!」


エリオスもそれを尊重してくれているのだろうとスモールレディは考え、眠りについた。

その日、スモールレディは愛馬のペガサスに乗って会いに来てくれたエリオスと、空を駆け抜けるデートをしている夢を見て幸せな気分になっていた。





おわり



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