セラムン二次創作小説『温かい場所(ネフまこ)』


「まことー出来たぞ!来いよ」


うさぎ同様、翌日の積雪予報を鵜呑みにしてまことのマンションに前日の夕方に泊まりに来ていた勇人は、案の定積もった雪を見て嬉しくなり朝から外でかまくらを作っていた。

彼女と一緒に作りたかったが、寒いのはちょっと…家事もあるし朝は何かと忙しいからと断られ、あえなく1人で作業する事になった。

近くの公園へ行き、空いてるスペースに目一杯かまくらを作ろうと意気込んだ。


元々何かを作るという事が好きな性分な事もあり、創り出すと止まらず夢中になってしまい、小さくシンプルな物にするつもりがとても大きく凝ったかまくらを器用に作りこんでしまった。


作り終わり、まことを呼びに行った時はもうお昼の時間が迫っていた。


「遅かったじゃん!心配してたんだぜ?」

「悪ぃ~悪ぃ~、ついつい作り込んじまってさ」

「もう昼飯も出来上がりそうだぜ」

「それは後に回して、俺の作ったかまくら見に来いよ。まことに見せたいんだ」


仕方ないと言いながら折れて付き合う事にしたまことはダウンジャケットを羽織って公園へかまくらを見に行く事にした。


公園へ着くとデカデカとした立派なかまくらが存在感を醸し出している。


「うわ、マジか!?すげぇ立派じゃん!ウチら2人だけじゃなくて美奈達も全員入れんじゃ無いのか?」

「ガハハハ、でっかくて広いだろ?俺の心みたいに笑」

「バカ!言ってろ!でもこんなデカいの作ってたらそりゃ時間もかかるよな…」

「な?すげぇだろ?」

「恐れ入ったよ。でもこれだけ大きいと中はそれ程暖かく無いんじゃないか?」


まことの言葉にハッとなった勇人は、暖かい物より自分の創作意欲を優先していた事に愕然となった。

何も考えず、欲望の赴くままに時間とスペースが許す限り創作していた事に今頃になって気付いた。


「いや、まぁくっつきゃぁ大丈夫だろ?」

「流石に無理あるだろ?」


小さく作ればまこととくっ付いてラブラブかまくら生活が送れたのに、なぜ気付かずデカいものを作ったのか?と愕然とする勇人。


「まぁとりあえず入ってみろよ!」


寒い積雪の中、ずっと外で喋っていた2人はとりあえず中に入る事にした。


「うっわぁ~マジで広い!」

「本当だ。マジで広いわ笑」


実はまことと一緒に入りたいと思い作っただけでまだ入っていなかった勇人は、初めて中に入り、改めて広いかまくらを作ったと自分で感心してしまった。

外で見ているより中に入った方がより広く、より高い作りになっており、言葉を発すれば声が反響し、そして思っていたより暖かかった。

背の高い勇人とまことだが、立っていても余裕がある。


「勇人はモノ作りの天才だな!さっぽろ雪まつりみたいに色々作れるんじゃないか?」

「そうか?嬉しいなぁ~もう夢中で作ってたからそんなにまことに褒めてもらえるなんてもう天にも登る気分だ」

「大袈裟だな…」


中で和気あいあいと数分穏やかな時間を過ごしていた2人だが、外で子供たちのはしゃいでいる声が数人いることに気づく。


と、その時である。遊んでいる子供たちが雪遊びに夢中になり駆け回り、かまくらに勢い余ってかまくらにぶつかってしまった。






ドドドドドドーッ!






頑丈に作っていたものの、その衝撃でせっかく作ったかまくらは儚く崩れ落ちてしまい、中に入っていた勇人とまことは雪の下敷きになってしまう。


しばらく何が起きたかいまいち把握出来ずに時が止まっていた2人だが、雪まみれのお互いを見て指さし合って大爆笑する。


「何だよお前、その格好」

「まことこそ、めっちゃ雪まみれだぞ?」

「せっかく勇人が作ってくれたのに、壊れちゃったな?」

「ああ、まぁ仕方ないさ。いつかは壊れてなくなるもんだろ?また作ればいいさ!今度はまこととくっ付けるくらいの大きさのやつをさ!」


今回のかまくらは儚く終わってしまったけれど、失敗を生かしてまた次の機会が与えられたと思えば儲けものだと思う勇人であった。



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