セラムン二次創作小説『ライバルは王子(クン美奈)』


「で、衛がな?」


私の彼氏は無口だ。寡黙で、余り自分から喋るタイプでは無い。だから、と言う訳では無いけれど、喋り役はいつも決まって私だ。

顔を合わせるなり機関銃の様に喋り、それを聞いているのか、いないのか。分からないけれど、黙って聞くと言うのが彼の役目。

けれど、今日は違う。私の顔を見ると同時に、彼の方が口火を切って来た。そして、止めどなく喋り続けている。こんなに饒舌なんて珍しい。

だから聞いてあげたいとは思っているのだけれど……


「……7回!!!」

「は?」

「今日会ってからアイツの名前が出た回数が全部で7回」

「アイツって、衛の事か?」

「そう、まもちゃん!」


そう、その話の内容とは……地場衛、エンディミオン王子。四天王風に言えば、マスターの話だった。

私は、はっきり言って地場衛が嫌いだ。大っ嫌いだ。

この男の存在のせいで私はいつも一番になれない。うさぎも、公斗も。前世も現世も。そして、恐らく未来も。


うさぎの事は仕方が無いと諦めている。恋人だし、幸せそうにしているし、その顔を見ているとこちらも嬉しい。


一方、こちら公斗。こいつはただの友達。彼女は私。その彼女を差し置いて、彼女が嫌いだと分かっている相手の事を喋り続けるとは、一体どういう了見か?


「ああ、無意識だった」


無意識……ねえ。喋るなとは言わないけど、話の中心が王子ってのが気に食わない。公斗の事は色々知りたいとは思っている。

だけど、こいつが張り切って喋る話の中心が王子だけ。たまに出て四天王と言うところが何とも寂しい奴だなと感じる。


薄々気づいていたが、こいつ、もしやまもちゃんと四天王以外で友達いない寂しい奴なんじゃ……と心配になる。


「すまん」


私が昔から王子のことが嫌いなのを知っていて、尚且つ機嫌があからさまに悪いから謝ってきた。


「別に良いわよ。アンタが“衛Love”なのは知ってるし、諦めてるわよ」


口ではこう言ったけど、納得出来ているかと言われると別だ。

余りにもあからさまに“衛Love”なので、もしかしてまもちゃんから好きだと何気なく言われたら勘違いして付き合うのではないかと疑う自分がここにいる。

真面目故に、そっち方面に走りそうで怖い。

寧ろ、本当はそっちなのではないかと思ってしまうことがある。考え過ぎだって分かっているし、私の事大好きなのは知っている。

けれど、理屈じゃなく怪しい!

だから気が抜けない!


「気をつける」

「別に良いわよ。久しぶりのまもちゃんだったわけだし」


ここの所私は芸能活動が忙しく、公斗に構ってあげられなかった。これは私自身もかなりキツくて、辛かった。

けれど、これは私が望んだ夢で、弱音を吐くのは違うと思ったし、今日まで頑張って来た。

でも、久しぶりの公斗は、その間構って貰えないのをいい事に事もあろうかまもちゃんに会っていたのだ。

本当はもっとまもちゃんと会いたいみたいだけど、うさぎに遠慮しているみたい。後、やっぱり一番は私に気を使っているんだと思う。その結果が爆発してこのザマと言うわけだ。だったら意味ねぇだろ!と思うけど、それはもう突っ込まないわ。


「私の方こそ、ごめん。うさぎの話、いっぱいして無神経だった、かも」


自分の行動を思い返してみた。私もうさぎの話ばかりしているなと思い出した。人のふり見て我振り回されるって奴だと気づいた。

私がまもちゃんに腹が立っている様に、公斗もうさぎにイライラしてたのかもしれない。それはうさぎ大好きな私には悲しいけれど、公斗を傷つけているのは嫌だなと思って。


「別に構わん。寧ろ、大歓迎だ」

「え?は?何で?」

「うさぎさんの話をしている美奈子は、良い顔しているし、こちらも幸せだ」

「なっ///」


何よ、それ?????

そうだったの?私、うさぎの事話してる時、そんなに美しいの?←そこまで言っていない

って、いやいや、待て待て。

だったらコイツもまもちゃんの事話している時、良い顔してるのか?

私は、本の数分前の公斗を思い返す。しばしのシンキングタイムで分かったこと、それはーーー


いや、いつもと変わらん!変わってなかった。普通。全然表情読めなかったわよ?

本当にコイツ、ポーカーフェイスだな。

彼女といてても、まもちゃんの話をしていても変わらないとか、やっぱりコイツの中で私とまもちゃんは同じなのか?

これは、やっぱりもっと彼女として頑張らないとまもちゃんに取られるんじゃ……


「公斗!」


私は、いつも私が喋りすぎている時に公斗がする方法で。女として、まもちゃんより愛される為に。嫉妬心と、恥ずかしさを隠す様に、公斗の唇を奪ってやった。





おわり




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?