セラムン二次創作小説『それぞれの路』


「美奈、進路希望もう出した?」

「いっけな~い!すっかり忘れてた!」


学校からの帰り道、中学3年生になりそれまで一緒のクラスだったひかるちゃんに声をかけられた。

小学校からの大親友の彼女とは何かと鹿が合う。何を隠そうアイドルにハマったキッカケを作ってくれた人だ。

そんなひかるちゃんとは3年になって離れ離れのクラスになってしまった。ーー後1年だったのに……。


「やっぱり。締め切りは今週末よ?」

「マジか?どーしよう……。馬鹿な私に行けるこーこーなんて限られてるしなぁ……」


スポーツ推薦って手もあったかもしれない。

だけど中学入ってしばらく経ったある日、アルテミスと出会いセーラー戦士になって徐々に忙しくなってバレー部は辞めてしまった。

残念だったけど、別に後悔はしてない。ーー自分で選んだ道だから。

でも、このことについてひかるちゃんには言ってなかった。ーー言えるはずなんてない。

勘のいい子だし、ずっと近くで見てくれてる大親友だから薄々勘づいてると思う。


「大丈夫よ、美奈!今からでも死に物狂いで勉強したら行ける高校は増えるわ」

「……うっ、やっぱり地道に勉強する他道は無いのね」


勉強は正直大嫌い!

それに今また新たな戦いに直面していて、正直それどころじゃない。

え?戦いのせいにして逃げてるだけだって?

ええ、そーよ!悪い?分かってるわよ!それとこれとは別だって事。

だけど先祖返りだの謎の2人の戦士だとか、分からないことや問題が山積みで勉強なんてやる気になれない。

私は四守護神のリーダーだもん!

リーダーとしてしっかりしなくちゃいけないし、敵の目的を把握してうさぎを護るために動かなきな行けないの。

進学するにしても、学力的にもうさぎと同じ高校になるだろうし、ひかるちゃんとはきっと別になってしまう。

そういう事、きっちり伝えておかないとと思ってはいても、どう話せばいいか……無い頭が痛い。


「美奈、お茶してかない?」


そんな私を察してか、久しぶりにひかるちゃんがお茶を誘ってくれた。助かる。

話さなきゃいけないこと、沢山あるからーー。


「行く行くぅ~♪」


近くの適当な喫茶店に2人で入って行く。

席を案内されて座り、2人ともメニューから適当にオーダーをする。


「で、美奈は高校どうするの?アイドル志望なのは知ってるけど、進学するんでしょ?」

「ん、一応そのつもり。ママにも高校だけは出ておけって言われたし……。受験勉強嫌だなぁ~」


敵と戦って死にかける方がよっぽどマシだとつくづく思う。けどひかるちゃんにはそんな事言えない。


「美奈とは小学校からずっと一緒だったよね……」

「そーだね。中学最後の学年だけクラス違っちゃって、寂しいよ……」


ひかるちゃんの顔を見ると何処と無く寂しそうで憂いを帯びた顔をしていた。

ひかるちゃんも高校は別々だって何となく気づいているのかも……。


「ひかるちゃん、あのね……?」


私は意を消してひかるちゃんにそれとなく言ってみることにした。



学校からの帰り道、見覚えのあるロングの金髪に赤いリボンの後ろ姿を見かけて声をかける。ーーそう、美奈だ。

彼女とは小学校からの大親友。

美奈の事はずっと傍で見てきたから何でも分かってるつもり。

出会った時から彼女は明るく元気で活発な女の子。

でも中学入ってしばらく経ったあたりから少しずつ変化が現れだした。

表向きは変わらず元気な美奈だけど、あれだけ大好きで熱中していたバレーを辞めてしまったり、何故か忙しそうにしていたりして。


変わらず活発で元気にしていて表立っては変化に気付きずらいここ2年の美奈だけど、いつも見ていたから薄ら何となく違うなって雰囲気で気づいた微妙な変化。

何処と無く違う、そう感じてしまった。

何も話してはくれないからこっちも聞けずに今まで来てしまった。

“親友”だと思ってたけど、違うのかな?

今まで何でも話してくれていたから寂しく思ってしまう。


“恋多き女”ですぐ人を好きになる美奈は恋愛の事も何でも話してくれる子だった。勿論今もよく恋バナをしてくれる。

頭が悪い(って失礼)彼女は成績が悪い事も包み隠さず話してくれる。

趣味の事から家庭のことから何でも……。


でもそんな何でも喋ってくれる美奈が話せない秘密が何かある、そう肌で感じていた。

親友の私にも簡単に話せない何か……。

それを知ってしまうともう後戻り出来ない、そんな予感も感じてた。


あからさまに違うと思ったのは今からほんの半年ほど前の事。

何処で知り合って仲良くなったのか、他の学校の子数人と仲良くなったと楽しそうに話してくれるようになった。

他の学校の子と仲良くなるのは変な事でも悪いことでも無い。

ましてや社交的でコミュ力の高い美奈だからおかしな話でも全然無い。

でも、とても嬉しそうに話して生き生きしてるし、何故か分からないけど前からの知り合いで強い絆で結ばれている様に感じた。ーーそう、私が入り込める隙がない感じ。


そんな事を漠然と、釈然としない頭で悶々と考えていると、あっという間に中学3年になり、受験の年になった。

この機会に美奈と進路について色々話したいと思っていたから、帰り道に見かけて思い切って話しかけてみた。

美奈自身も話したいと思ってくれたのか、快諾してくれた。良かった、忙しくないみたいで。


適当な喫茶店に入り、進路の話を進める。

聞くところによると成績の問題で行ける所が限られてる事に悩んで躓いていた。

まぁそうだよね。先ずはそこが重要だわ。

でも、多分それを抜きにしても高校は別々になりそう。それは大体想像出来ていた。



「ひかるちゃん、あのね……?」

「高校は別々になっちゃうよね、きっと」


どう切り出そうかとしていたらひかるちゃんから軽くマウントを取られた。

うーん、まぁ……そーだよね?

私の成績からしてもひかるちゃんが合わせてわざわざ偏差値低い学校に行って将来不利になる必要性無いもんね……。


「そーなるよね、多分……」


行先はそれぞれに違うこと、初めから分かってたことだったけど、いざひかるちゃんから直接その言葉を聞くとやっぱり寂しい。


「最近よく話してる違う学校の子達と同じ高校に行くんでしょ?」

「え?」


驚いた。やっぱり色々見透かされてる?

でも、まだ今の段階で進路や受験勉強の事は4人と話せてなかったから私一人が漠然と“一緒の高校に行けたらいいな~”って考えていただけだった。

やっぱりうさぎを近くで護るには同じ学校の方が安心だし何かと都合がいい。亜美ちゃんやまこちゃんを見ててそう感じたし、リーダーだし、影武者だし、お陰でうさぎとおツムも同じレベルだしぃ……トホホ。

亜美ちゃんは頭がいいから違う学校かもしれないけど、同じく同レベルのまこちゃんと2人ならうさぎをがっちり護れそう。

レイちゃんは狡いエスカレーター式だからそのままTA女学院よねぇ~。


「微妙な反応ね?違うの?」

「いや、違うって言うか……私はそのつもりでいるけど、まだ話せてないんだよね」

「そうなんだ。まぁどの学校に行くかはこれから成績次第で変わってきたりするからねぇ。ゆっくり決めればいいんじゃないかな」

「でも今週末までに進路希望調査票出さなきゃじゃない」

「第1回だから、先生が把握しておきたいだけでそんなに深くしっかり書く必要無いと思うわよ?そりゃあちゃんと決まってたらそれに越したことはないけど」

「ひかるちゃんは進路決まってるの?」

「大体はね」


そう言って言ってきた高校は普通よりレベルが高い学校だった。……やっぱりどう転んでも同じ高校には行けないと絶望した。

ひかるちゃん、ずっと塾通ってるもんなぁ~。

同じアイドル好きなのに頭の良さは全く違う。レベチに今更凹むわ。


「やっぱりひかるちゃんとは別々になっちゃうのね……うぅぅぅ残念!」


いつまでも同じじゃないって初めから分かってはいたものの、現実を突きつけられて一気に寂しくなった。


「本当、遅刻したりそそっかしくて騒がしい美奈と別々の高校は寂しいわ」

「ひかるちゃん……。別々の高校に行っても私たち、ずっと仲のいい親友よ!」

「美奈……うん!ずっと親友よ!」


この言葉は心からの本心だった。

ひかるちゃんとは鹿が合うし、アイドルの追っかけやたわいも無い話をこれからもずっとしていきたいと思っていたから。

うさぎやレイちゃん達も親友だけど、やっぱり前世からの腐れ縁と言うか運命共同体って感じで親友であり、戦友でもあるからどうしたって戦いが付き物になってしまう。


その点、ひかるちゃんとはそーゆーの関係なくホッとできて日常を感じられる安らげる場所だとセーラーVになった時から思っていた。

ひかるちゃんは私の癒しのオアシスで、戦士の私には必要な居場所になっていた。


「良かった。親友って言って貰えて」

「どうして?ずっとひかるちゃんは私の1番の親友だよ?」

「……うん、上手く言えないんだけどね?美奈が遠い知らない所に行っちゃうんじゃないかって不安に思ってたから……。違う学校の子達とも仲良くしてるし。美奈が時々知らない人みたいに見えてたりしたんだよね。でも、美奈は美奈だった!私、おかしいよね?」

「ひかるちゃん……ううん、そんな事ない!実は私、前世の記憶があってね?それで色々あって…」

「そっか……だから知らない人に見える事があったんだね。ありがとう、話してくれて」

「ひかるちゃん……」


勘のいい子だから“前世の記憶”それだけで何となく察してくれたみたいで、詳しく言わないでいい様に汲み取ってくれた。

それ以上は多分言えなかっただろうし、ひかるちゃん自身も聞きたくなかったと思う。ーー聞いてしまうと後戻り出来ないと察したんだと思う。

それに私たちの間にはこのやり取りで十分だとお互い感じていた。


この先もよっぽどの事が無い限りは詳しくは話さないと思う。

けど、ひかるちゃんは大切な大親友で私の居場所。これからもそれはずっと変わらない。


“よっぽどの事”、この前のブラックムーンとの戦いで見たあの未来。

うさぎはクイーンに、まもちゃんはキングになってこの地球(ほし)を治める未来がもしこの先あれば、色んな人に本当の事を言わなきゃ行けないだろうな……。

それ以外の“よっぽどの事”が今の私には思いつかないけど。

戦いがあれば死と隣り合わせでよっぽどの事と言えばそうなんだけど、死んだら終わりだから考えないでおこう。


「ひかるちゃんはずっと何があっても私の大切な大好きな親友だよ!」

「美奈、ありがとう!ずっと親友でいようね!」



この日はそんなこんなで何となく私が人とは違う事、ひかるちゃんとはずっと親友である事を確かめて終わった。

でも私たちにはそれで十分だった。

全て打ち明けて余計な心配をさせたくないし、して欲しくない。巻き込みたくないもんね。


これまでのモヤモヤした胸のつかえがスっと取れたみたいにとてもスッキリした有意義な時間だった。





おわり




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