セラムン二次創作小説『リボンの天使』


クインメタリアとの壮絶な戦いを終えた私たちは、戦士を休息して普通の生活を送っていた。

うさぎ達より先に戦士として目覚めて戦っていた私にとってはかなり久しぶりの普通の日常。これがどれだけ幸せで凄い尊い事か!


忘れかけていた青春が、今やっと始まる。漸くスタートラインに立てる!


これはそんな普通の生活を送り始めたとある日の話。

根っからの戦士の私は、刺激を求めてゲーセンへと遊びに来ていた。バレーを辞めてしまったから体がなまっている。この先何があるか分からない。プリンセスを守る使命は終わっていない。それどころかこの先ずっと変わらない揺るぎない使命。


「美奈ちゃん」


ゲームをしていると甲高い元気な声に大声で呼ばれる。声の方向へとチラ見すると、ツインテールをお団子に結った特徴ある髪型の女の子ーーーうさぎだ。

と、もう一人同じセーラー服の知らない女の子もうさぎの横に立っていた。


「うっさぎぃ~」


こちらも大きな声で答える。

ゲームをしていた手を止めて、うさぎがいるところまで移動する。隣の女の子が誰だか気になるし、聞かなきゃ。


「美奈ちゃん、こちら大阪なるちゃん。私の小さい時からの大親友なの」

「大阪なるです。よろしくね」


大阪なると紹介されたその子は、私と同じで大きなリボンが特徴のとっても美人な女の子。

合流した当初から、度々名前が上がっていたうさぎとしての親友。話を聞いている中で、実はどんな子なのかな?って結構気になっていた。

だから、このタイミングで紹介してくれて嬉しかった。


「なるちゃん、こちらは愛野美奈子ちゃん。昔っからの腐れ縁よ」

「愛野美奈子でぇ~っす!よろしくね、なるちゃん」


どう紹介してくれるのかと思ったら、“腐れ縁”ってプリンセス……それ、酷くない?

まぁ実際そうだし、一般の人への説明としてはこれが最善なんだけど。


「うさぎがいつもお世話になってます」

「こちらこそ、ご迷惑かけてないか心配で……」


昔からうさぎをよく知る者同士、何故か親みたいな会話を繰り広げる。

実際、本当に迷惑かけてないかとっても心配で。

前世でのプリンセスは、兎に角お転婆で天真爛漫!アイツにも何度か“天真爛漫なプリンセス”と揶揄されたほど。

それがこの世界に転生したからと言って、そうそう変わらないだろうと思う。悲しいかな、自分自身で実感済み。


「迷惑なんて、かけられてますけどぉ~。そこがうさぎのいい所でもあるし、憎めないから」

「ちょっと、なるちゃん!美奈ちゃんも!ヒドイ……」

「何よぉ、本当の事でしょ?」

「……そぉだけどぉ」


ちょっといじめ過ぎちゃったかしら?美奈子、反省。


それにしてもなるちゃん、本当に美人さん。

私と同じで大きなリボンがよく似合ってる。

うさぎの話曰く、なるちゃんは頭が良くて、

あのでっかい宝石店の娘ーーー所謂お嬢様って奴なんだっけ?


似ていると思ったけれど、こうして羅列してみると似てないどころの騒ぎじゃない!全く違う。全然違う!ぐうの音も出ない程の完敗具合。


私は頭は悪いし、オマケにパパは一流企業だけど普通の会社員。役職は一応着いているみたいだけど、名ばかりのかたなしって言ってたっけ?役職名は教えてくれなかったけど。

私は前世も今もリーダーと言う役職の下、頑張ってるからパパとは違うわよ?そこんとこよろしく!


そうねぇ、前世を持ち出しても良いのなら、私だってプリンセスだったのだからそう言う意味ではお嬢様かもしれないわね。

オツムの方は、ノーコメントで一つ!お願いしたく。


「ふふふっやっぱりめーわく、かけてたか」


このわがままプリンセスが、この世でも迷惑かけてないわけ、ないわよね。予想的中!

それでも、なるちゃんは笑顔で楽しそうに今までどんな迷惑をかけられたかを語って聞かせてくれた。


「遅刻は当たり前!テストも散々!ママに怒られて泣きついてきたり、弟くんとの喧嘩は私は悪くないとか愚痴ったり。一目惚れしては追いかけてったり」

「な、なるちゃぁん……」

「なぁによぉ!まだあるのよ?」

「アハハハハハハーーーッうさぎ、アンタ本当に迷惑かけまくりね?」

「うっ美奈ちゃんまで……」


迷惑武勇伝を暴露され不貞腐れるうさぎを横目に、生まれ変わっても相変わらずのお転婆っぷりに、私は嬉しく思った。

これだけ迷惑かけられても、それでもこうしてずっと親友として文句も言わずに隣で見守ってくれて感謝しかないわ。なるちゃん、とっても良い子!


わがままや迷惑をかけてもこうして人を惹きつけて魅了して好かれる。プリンセスの頃もだったけれど、この世界でも変わらず周りに好かれている事を実感する。すごい人だ、プリンセスーーーうさぎと言う人は。


「アンタはそれでいいのよ」

「そうよ、うさぎ!それがあなたの良いところなんだから、ずっとこのままでいてね」

「これからもうさぎの世話、させたよね」

「……二人ともぉ」


本当になるちゃんって良い子だな。うさぎの前世や使命なんて知らないハズなのに。

これからも仲良くしてくれるって。迷惑かけて欲しいって言ってくれる。



私と同じ大きなリボンを頭の後ろで結っている少女ーーーなるちゃんと私はもっと個人的に仲良くなりたいと思い始めた。

うさぎに最も迷惑をかけられている、うさぎの親友同士、きっと仲良くなれると思うんだ。


「今日も来てるね!うさぎちゃんに美奈子ちゃん。それになるちゃんも久しぶりだね。美人三姉妹、勢揃いってところだね」


古ちゃんお兄さんの登場だ。大学終わったのかな?これからバイトかしら?


「美人だなんてぇ……そんな事、ありますけどぉ」

「美奈ちゃん……はぁ」


元祖美人戦士セーラーV、愛と美の女神の化身であるヴィーナスの生まれ変わりの私。美奈子は美人だと言う事は自覚済み。謙遜なんて、しないんだから!

って、そう言えばここはゲーセンだった。騒音の中、デカい声で喋っていた事を何故だか忘れていた。

私がここに来た理由の一つ。それは、この古ちゃんお兄さん目当てでもある。ここのオーナーの息子で、その上イケメン。そして、優しい!

アイツに似たヤツばかり追っていた私の唯一、全く面影の無い純度10000%のイケメン!いつか絶対、落とす!


「古ちゃんお兄さん、今からバイトですか?」

「ああ、だからゆっくりしていってね」

「勿論ですぅ~」

「あ、私は塾があるからこれで」

「えぇぇ~~~!せっかく仲良くなれそうだったのにぃ~」

「ありがとう、美奈子ちゃん。またゆっくりお話しましょう。今度は美奈子ちゃんのうさぎの迷惑話聞かせてね」


そう言って、左手を上げて大きく降ると笑顔を向けてゲーセンを後にした。

なるちゃんとはうさぎを抜きにしても、ずっと興味があった。あのでっかい宝石店。行ってみたいなぁって思っていたけど、一流企業だけど社長でもないパパの給料じゃ買えたもんじゃないってママが嘆いていた。

友達としてなら気軽に入れるかな?とかちょっとずる賢い事を考えていた。

後、探している宝石数点に巡り会えそうだなって思って。


「ねぇねぇ美奈ちゃん?」

「ん?どうしたの、うさぎ?」

「もうすぐなるちゃんの誕生日なんだけど、相談に乗って欲しいんだ」

「お易い御用よ♪でも、毎年あげてるしなるちゃんの事はうさぎが良く知ってるでしょ?」

「そうなんだけどさ。ほら、美奈ちゃんと色々似てるから、何かヒントになるかなぁ~、なんて」


なるほどねぇ。やっぱりうさぎも私となるちゃんが、似てるって感じたんだ。

と言うか、うさぎが、うさぎの中の潜在意識が似た人を選んでるんじゃないのかな?とフッと思った。迷惑をかけても怒らず笑って許してくれる人を、うさぎは無意識に自分で引き寄せているのかもしれないわねぇ。それもまた才能って奴ね!


「そぉねぇ……やっぱり宝石店の令嬢だから光り物は見飽きてるハズ。普通の方が喜ばれそう」

「普通……ってゆーと?」

「私と同じで大きなリボンが特徴だったでしょ?リボン好きなんじゃないかなって」

「なぁるなる♪もーてんだったわ!ありがとう、美奈ちゃん♪やっぱり頼りになるお姉さんだよ」

「お姉さんなんて……それ程でも、ありますけどぉ~」

「……美奈ちゃん、アハハ」


その後、ゲーセンを後にした私たちは、私が通うリボン店へと向かい、なるちゃんの誕生日プレゼントを二人で選ぶ事になった。


私のアドバイスの下、買ったリボンをなるちゃんの誕生日にプレゼントしたうさぎ。後日、とっても喜んでくれたと報告を受けた。





おわり




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