セラムン二次創作小説『隣の芝生は赤い(ジェダレイ)』


夏休みも目前に近づいてきたある日の休み。朝からレイちゃんに会いたくて、神社へと向かう。

梅雨も空け、待った無しに照りつける太陽にヘタリながら階段を上がる。境内に着けば涼しいし、レイちゃんがいるから頑張れる。涼むんだ。そう考えていた。

暑さに負けそうになりながら、何とか鳥居をくぐる。視界の先にはお目当ての黒髪ロングの美少女。では無く、金髪短髪の男。


「って、レイちゃんは?」


あからさまにガッカリする私に、嫌な顔をするイケメン。


「レイなら部活に行った」

「うっそー」


ガッカリである。当分帰って来ない事が容易に想像出来た。その間、コイツと一緒にいなければならないのか。そう思うだけでため息1000回は着けそうな勢いだ。


「残念だったな」

「本当よ。レイちゃんの顔、拝みに来たのにぃ〜」


どうしようもない事だけれど、不満をぶつけずにはいられなかった。コイツも、レイちゃんが不在の中での仕事の上、私にまでストレスの捌け口にされて気の毒だと思ったけど、そんな事知ったこっちゃない。

同情などしない。逆に遠慮してやってんだから、こんな時こそ愚痴を受け止めろって話しよ。


「当分の間来てもレイには会えないぞ」

「何でよ?夏休みなんだからいつでも会えるでしょ?」


嫌な事ばっかり言ってくる。この口、縫い付けてやろうか?医者志望の亜美ちゃんにご協力頂いて縫ってもらおうか?


「レイ、国体出場だからな。聞いてねぇの?」


うっぜぇ。マウント取ってるつもり?

ただ単に忘れていただけですけどぉ〜?

絶対に、悔しがったりしないんだからね!

本当に口、縫うわよ?


「そうだった!そんな事、言ってたわ」


私は一回戦敗退しちゃって、三年生だからそのまま引退してしまった。だから、つい同じ感覚で考えていた。

それのせいでコイツにマウントを取る猶予を与えてしまった。最悪だ。


「親友なんだから、覚えててやれよ」

「うっさいわね!つい、自分と一緒だと思ったのよ」


いちいち嫌な事言ってくるじゃない!

自覚はあるのか?はたまた、わざとか?

どっちにしろ、腹立たしい事に変わりない。

これは本格的に口を縫う事を考えておかないといけないわね。


「ああ、一回戦敗退したんだっけ?」

「何で知ってんのよ?レイちゃんね?レイちゃんのお喋り〜!!!」

「ちげーよ!公斗から聞いたんだ」

「チッ!余計な事を……」


レイちゃんが私の事喋ったのかと思って驚いたら、公斗だった。寡黙な奴なのに、何でこんな事をコイツに喋ってんの?

ってか、いつそんな話したんだろ?四天王の連絡手段が謎すぎる。怖い。

まぁ、こいつの事だ。レイちゃんが国体出場が余程嬉し過ぎて自慢したら、公斗が私の話をすることになった。と言うところでしょう。でないと公斗は饒舌に喋るなんて、億に二つも無いもの。

それに、私のことを喋ったならどこまで喋っているのか気になった。悔しくて泣いて、公斗に慰めてもらった事まで知ってたら、マジで恥!恥ずか死ぬ!


「レイちゃん、頑張ってたもんなぁ〜」

「ま、レイだし国体出場は当たり前だよな」


何それ、負けた私への嫌味と当てつけ?引っかかる発言だな。


「それ、嫌味?」

「アホなのに考え過ぎだろ?」

「カッチーン!一言多いわ!」

「わりぃわりぃ。前世からマーズはアーチェリーが得意だったろ?だから当然だと思っただけだ。お前は技にバレーなんて無かったろ?団体競技でもあるし、一人強くても仕方ねぇしな」

「そうなのよねぇ。頑張っても報われない事もあるのよ。チーム戦はセーラー戦士で培って来たけど、発揮出来なかった。悔しい!」


って、なんで私は乗せられてコイツに悔しさを吐露してんのよ!何か、それも悔しいわ!同情されてるのも何か腹立つ。


「で、アンタは応援行くの?」

「ああ、勿論!お前は?」

「行きたいのは山々だけど、遠いでしょ?お金無いから無理」

「そうか。残念だな」


何だろ。この残念とも思ってなさそうな言い方。

やっぱりバイトしてお金があるのは余裕があって良いな。ママはケチだし、応援だからって旅行代出してくれるような人じゃないし。

早くアイドルになって、お金稼いで自由にどこでも行きたいわ。


「お前の分も応援しといてやるから、任せとけって」

「はいはい、よろしくお願いしまーす」


行けるからって偉そうな和永に、最早腹立ち過ぎて逆にどうでも良くなった。行けないのは自分のせいだからどうする事も出来ないのを棚に上げて。


「もう帰るわ」


レイちゃんがいない神社にこれ以上いても仕方が無い。感情が高ぶったせいで暑くなりはしたけれど、充分涼んだし帰ることにした。


帰る前に、賽銭にお金を投げて、レイちゃんの必勝祈願を願ってーーー





おわり




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