セラムン二次創作小説『“キミ”と永遠のサヨナラを(まもセレ)』




メタリアとの戦いが終わった日の夜、俺は久しぶりにゆっくりとした眠りに着いた。

うさことこれから共に歩んで行くこと。そして何より記憶を取り戻した事に安堵し、一気に力が抜けたのだ。


もうあの夢も見なくて済むのだ。繰り返し訴えられた“銀水晶を探して”と言う言葉。

銀水晶は無事見つかった。

そしてどうして銀水晶を探さなければならなかったのか。全てが合致し、点と点が見事に線となり形になった。


「銀水晶を……」


寂しく思っていた矢先、またあの少女が夢に出て来た。

この前まではボンヤリとしていて、顔も何も分からなかったその少女は、今度はハッキリとした姿形をして俺の夢へと再び現れたのだ。その少女に見覚えがあった。いや、確信していた。


「セレニティ、君だったんだね」


そう、“銀水晶を探して”と繰り返し懇願して来た謎の少女はセレニティその人だった。

彼女が導いてくれていた。

俺は、銀水晶を探す事で六歳以前の記憶を取り戻せると思っていた。でも実際は違った。俺が取り戻さなければいけないのは前世の記憶。

セレニティはそれのキーマン。

何者であって、何故産まれ、一人孤独に生きなければならなかったのか。彼女がそれを思い出させるようにしてくれていたのだ。


「良かったわ」


セレニティはそう安堵の言葉を口にはしていたが、表情は余りそう思っていないような曇った顔をしていた。


「君のお陰で俺は無事、記憶を取り戻せたし、君の生まれ変わりにも逢えた」


セレニティの夢がなければ俺は何者であるかを知らないまま、うさこにも会うことも無く一人孤独に生き続ける所だった。

彼女はそんな俺を孤独と言う暗闇から救うための希望の光だったのだ。感謝してもしきれない。


「君の言葉がなければ俺は、ずっと一人孤独だった」


孤独で押しつぶされそうになっていた時に見始めた“銀水晶を探して”と言う夢。それに支えられて生きてきた10年間だった。

生きる意味と、生き甲斐を貰っていた。


「ずっとあなたを縛ってしまったと思って苦しかったの」

「そんな事は無い!決して!」


セレニティの後悔しているような言葉に俺は強く否定した。


「君のお陰で生きたいと思えたし、銀水晶を探して喜んで欲しかった。君には感謝してるんだ」


確かに最初は狼狽えた。意味が分からなかった。

けれど、そうしなければいけないような気がした。

何故か記憶を取り戻せるヒントだと確信のようなものがあった。


「君に逢えたから、俺は今まで頑張れたんだ。嘘偽りないよ。でもまさか六歳以前の記憶じゃなくて、前世の記憶を取り戻すためだとは思わなかったし、セレニティだと思いもしなかったけどね」

「ごめんなさい。ありがとう」


ここで漸く少し笑顔を見せてくれた。

けれど彼女は本当の笑顔は見せてくれない。

そう言えば前世でも彼女は幸せな時もどこか憂いを帯びた寂しそうな笑顔だったなと遠い記憶が蘇った。

夢の中では知っている人や情景しか出てこないんだっけ。と言う事は夢の中のセレニティも本当の心からの笑顔は見られないのか。


「セレニティのお陰で、生まれ変わりの君に会えたし、ちゃんと守る事が出来た」


俺はタキシード仮面となり、宝石店を巡り銀水晶を探していた。そのため、鍛えていたし経験値も上がっていき、セーラームーンに会うまでに既に戦いはある程度経験していた。

お陰でセーラームーンには頼りにされていたと認識していた。自惚れでは無く、本当に彼女は俺を必要としてくれた。


「君が俺を鍛えてセーラームーンが頼れる様に導いてくれたんだろ?」


強くて頼れる男。それは彼女の理想。

きっと戦う事に慣れていない彼女をリード出来るように理想の男にしたかったのかと考えた。

そこまで深く考えて、セレニティがそこまで計算出来る人だったかとふと思った。

どうあれ、セレニティのお陰で今がある事には変わりが無い。


「私はただ、あなたに見つけて欲しかっただけ」

「君の生まれ変わりを?それとも銀水晶を?それとも……」


そう聞いた瞬間、セレニティの身体は見る見る透けて行った。お別れの日が近づいている事を悟る。


「ありがとう、エンディミオン。どうか、お幸せに……」


寂しそうな笑顔でそう言い残し、セレニティは消えていった。

結局、最後まで本当の笑顔は見られなかった。


「セレニティ、俺の方こそ支えてくれてありがとう」


届くことの無い言葉を、セレニティが立っていた場所に投げかける。


これを機に、“銀水晶を探して”と寂しそうに懇願するセレニティは二度と俺の夢に現れることは無かった。





おわり




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?