セラムン二次創作小説『永遠花火(旧作まもうさ)



うさぎは衛と花火大会に来ていた。所謂デート。と言いたいところだが、残念ながら二人は別れた状態の為、そんな楽しいものでは無いのだ。


「来て、くれないかと思った」


誘ったのはうさぎである。単純に衛と花火を見たかった。


「お前が言ったんだろ?一緒に来てくれたらもう付きまとわないと」


だから仕方なく来たのだと衛は素っ気なく言い放った。

うさぎは、自分で言ったもののその言葉が深く心に突き刺さる。

どうしても一緒に見たかった。衛を諦めることも出来ず、ずっとストーカーの様に付き纏っていた。突然別れを告げられ、理由も分からず辛い日々を過ごしていた。

この花火大会はキッパリ衛を諦める為の言わば想い出作りだと衛に訴えて取り付けた。

けれど、まさかその理由で衛が来てくれると思いもせずうさぎ自身が驚いた。そして、当の本人である衛もーー


「ありが、とう。ごめんね?私のわがままに付き合わせて」


バンッバンッと花火が打ち上がった。二人の会話はその音と共に終了となり、打ち上がる花火に視線を移した。

花火を見ながら衛は、何故来たのだろうと考えていた。来ないと言う選択肢もあったはずだ。なのに、自然と待ち合わせ場所に脚が向かっていた。衛自身もうさぎと花火が見たかったのかもしれない。これが終わればもう二度と会えなくなるというのにーー

断腸の思いで別れた為、付きまとわれるのも辛いだけだが、これっきりと言うのも辛い。どちらを選んでも辛い決断だっただけに、攻めて思い出が欲しかったのかもしれない。

仕方なかったとはいえ、うさぎの未来を奪うくらいであるならばと別れを告げた。

しかし、本人に受け入れて貰えないのは独りよがりでただただ辛かった。それ以外の選択肢があればよかったが、これ以外思い浮かばなかった。自身にもっとうさぎを守る力があればと何度恨んだ事か。


「綺麗……」


好きな人と見る花火がこんなに綺麗なんてとうさぎは感動した。それと同時に、こんなにも切なくて儚いものだとは思わなかった。

楽しみたいのに、心の底から楽しめない。本当の恋人であれば。これからも関係が続くのであれば美しくて楽しいのだろう。

自分で言い出した事とはいえ、これが終われば関係も終わる。こんな切ない花火大会になるとは思いもしなかった。


夜空に輝く大輪の花々。それを眺めながら二人は共に考えていた。




ーーこの花火大会が、永遠に続いて欲しいとーー





おわり




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