セラムン二次創作小説『オレハナニシニココへ(クン美奈)』



今俺はとある店の前で立ち往生している。

勿論美奈子に連れてこられたんだが、その店が俺と美奈子で入るには似つかわしくないというか、俺が入っていい様な所ではないというところでとても迷っている、というのが正解だ。


その店と言うのは“ランジェリー店”である。


事の発端は数日前、2人で旅行に行く事になり、ならば持っていく物を2人で買いに行ってデートも楽しもうと美奈子の提案に乗った形になった。

その時はまさかこんな所にまで連れてこられるとは思ってもおらず、この展開に戸惑いを隠せずにいる。


しかも色々店を回ってから数件目でここならまだしも、初っ端からここに引っ張ってこられたもんだから心の準備など出来ておらず、連れてこられて思考回路が完全にショートした。…美奈子、お前、マジか!!?


「おい、どういうつもりだ?こんな所に連れて来て!」

「へ?何で?」

「何で?って…はぁ(とても深いため息)あのなぁ?俺は男だぞ?」

「何当たり前のこと言ってんの?馬鹿なの?」


バカを極めている奴にバカ呼ばわりされるのは心底心外な上に、何も分かってない美奈子に腹が立つのを通り越して呆れてしまう。


「男と入る場所では無いだろ?」

「古臭いわね!今は彼氏と入れるのよ」

「だからといって俺は入りたいと思わない!後日うさぎさん達と選びに来ればいいだろ?」

「私は公斗と入りたいのよ!公斗に選んで欲しいの!」

「俺はお前が身につけてるものならなんでもいいし、問題ない」

「相変わらず頑固で冷たいわね!公斗が選んでくれたものを身に付けたいのよ!一緒に選びたいの!」


最初は小声で話していたものの、2人とも譲らない言い争いについついヒートアップして声が大きくなり、店の前で人目もはばからず喧嘩をしているとギャラリーが集まってきてしまいバツが悪くなり我に返った。

美奈子を見ると顔を真っ赤にして少し泣きそうな顔をしている。

彼女の笑顔を奪ってまで入らないのは流石に俺も気が引ける。


滅多に入れる場所では無い為、少なからず女の園のその場所に興味がなかった訳では無い。寧ろ俺も男だ、それなりに興味があった事は認めよう。とりあえず後学のために入る事にした。


やましい気持ちなど一切ない!断じてないぞ!美奈子が泣いて頼む(←脚色し過ぎ)から入るのであって下心など無いから勘違いしない様によろしく頼む。


「入るぞ!」


意を決して入る宣言をし、美奈子の手を取り一緒に店に入って行く。

俺の突然の心変わりに驚きつつも嬉しいのか見る見る笑顔になる美奈子。


中に入ると当然だが下着ばかりでどこに目をやっていいやら分からずバツが悪い。

とりあえず美奈子について行くことにした。


当の本人は俺にお構い無しに楽しそうに色々下着を物色している。

店内に男は俺1人という何ともアウェーな状況だが、店員は慣れているのかスルーで何も言ってこない。


「公斗~♪これ、どうかな?」


この状況に心ここに在らずになっていた俺は急に話しかけられ、美奈子に目をやるとまた思考回路が停止した。


笑顔で選んだブラジャーを胸に当てている。

いやまぁ当たり前の光景ではあるが流石に下着を当てているのを見るのが初めてで目のやり場に困る。

それにどうと言われても…。


「良いんじゃないか?」

「ホントに?わーい」


無邪気に喜ぶ彼女の笑顔を見て気持ちも幾分か楽になっていく。


「お客様、よろしければご試着いかがですか?」


下着も試着が出来ることに単純に驚く。

そうか、サイズが合ってるか確認が必要なのか?女は大変だな。

だが、美奈子が試着室に入ってしまったら俺1人待つ事になるから心細くて益々この場にいる事が辛くなるぞ。


「ありがとうございます。大丈夫です。」


断る美奈子の声にホッとする。


「試着しなくて良かったのか?」

「いつものサイズだから大丈夫よ。それにランジェリーも選びたいし」


ホッとしたのも束の間、今度はランジェリーも選ぶという。

これ以上長くいるのは精神的にキツいから長くなるのを阻止する為にも適当に選ぶ事にした。

掛かっている物を数点適当に見繕って手に取って美奈子に見せる。


「これなんかどうだ?」

「結構大胆ね?こんなセクシーなのが好みなんだ?」


ニヤニヤしながら痛い所を突いてくる。

適当に取っただけなんだが、何故こんなに責められないといけないのか?


「嫌なら別のを選べ!」

「ううんコレにする♪公斗がせっかく選んでくれたんだもん♪」

「そうか、なら良かった」

「じゃあコレ買ってくんね!ありがとね♪」

「ああ」


レジで会計を済まし戻って来た美奈子はとても嬉しそうで、入る前とは打って変わって楽しそうだった。


「さぁて、次はどこ行こっか?」

「旅行で必要なもの揃う所だろ?脱線するなよ?」

「しないわよ!今の店だって必要だから入ったんだからね?」

「分かっている。くれぐれも脱線しない様に釘打っとかないとお前はすぐ脱線するだろ!」

「失礼ね!大丈夫よ!」


美奈子の謎の自信に半信半疑になりながらも旅行用品を揃える店巡りを再開する。


元々全て揃うようにとアウトレットモールに来ており、先に目に入ったのがまさかのランジェリー店と言う下りだった。


色んな店を巡り、帰ろうとしたその時、美奈子が何かを考えながら立ち止まった。


「どうした?」

「公斗の下着買ってないわ!」

「俺のはいい」

「良くない!私が選びたい!」

「別に選んでくれとは頼んでないぞ」

「良いじゃない!付き合ってくれたお礼よ♪」


俺の許可はさて置き、今度は美奈子が俺の手を取り男性下着店へ向かっていった。


さっきとは完全な逆パターンになるが、違うのは男性店員が突然現れた元気にはしゃぐ金髪美女美奈子を見てあっけに取られた挙句、引いていたことと、俺が完全に置いてきぼりをくらったことだ。


まさか店員も女性が入って来て楽しそうに彼氏の下着を選んでいて、彼氏の方が一歩引いて見ているだけの現場に居あわせることになるとは予想だにしていなかっただろう。

思わず心の中でコイツがすまないと店員に謝ってしまった。


その間も当然男性下着ショップには女性客は美奈子1人だ。

だがそんな事などお構い無しに終始俺の下着選びに没頭していた。

そして美奈子好みの下着を強制的に買わされ、後日旅先で身につけさせられることになったのは言うまでもない。





おわり



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