セラムン二次創作小説『死してなお(A美奈)



オレは何のために生まれ変わってきたのだろう……?

何故転生してきてしまったんだろう……?


前世でずっと恋焦がれていた母星、金星のプリンセスであるセーラーヴィーナスとこの世でやっと出会えたのに……

漸く対等に肩を並べこれからという所で潰えてしまった、君への道ーー。

今度こそ本当の恋人同士になれると思っていたのに、また閉ざされてしまった。


一緒になれないなら何故またこの世に転生してしまったのか理解出来ない。

転生したのは今度こそセーラーヴィーナスと本当の恋をする為だと前世の記憶が蘇り、セーラーヴィーナスその人に会った時に確信していたのに……。


やっと彼女に届いたと思ったのに……。


やはりまた彼女はオレを選んではくれなかった。

前世の記憶を失っていてもやはりどこかで守るべきはオレではなく別にいることを感じ取っていた。ーー完敗って奴だろう。

やはり敵わない。ーープリンセス・セレニティその人には。

そして前世でも今世でも上司だったクンツァイト様にも……。


避けては通れない運命だったんだろう。

生まれ変わってもダークキングダム四天王リーダーであるクンツァイト様直属の部下ダンブライトとしてセーラーVの元に敵として彼女の前に立ちはだかり、記憶を取り戻したセーラーヴィーナスと戦う決意をした。


セーラーヴィーナスに殺されるなら本望だ。

前世とは違い好きな人の手により最上エース、ダンブライトとしての生を終えられるならまだ少しは救われる。例え初恋が永遠に成就しなくともーー。


また彼女に選んでもらえなくとも、前世よりは大分ましだろう。

前世では認知すらしては貰えず、一方的に想いを寄せていた。


だが最上エースとしてのオレは違った。

怪盗として、そしてアイドルとして彼女の前に姿を現す事を許され、近づき、肩を並べるまでになった。

ちゃんとオレをオレとして認識して貰えたばかりか、一瞬とは言え好きになって貰えたし、気持ちがクロスし重なった。上出来だ。嬉しかった。

その一瞬に縋りたくて指輪を贈り、必死に美奈子の心を繋ぎ止めようとした。


しかし、重なった瞬間にまた夢は打ち砕かれた。


仕方がない。彼女の使命は月の姫君を守る事。

所詮は現世でも階級が下っ端の戦士のオレでは彼女にやはり釣り合わなかったんだ。


「君の恋は永遠に叶うことは無い。恋か使命か、この究極の選択にもう頭を悩ます必要無く生きていける」


彼女の手により致命傷を負って死ぬ直前にハートのエースと共に贈ったメッセージ。

ハートのエースの意味は“究極の愛”

きっとこれからもずっと月の姫君を四守護神のリーダーとして守り続けなきゃ行けない。

前世の様に責任感が強く迷わず戦い続けられるように、恋より大切な物があると贈った言葉。

きっと彼女ならオレの真意に気づいて戦士としてこの先立派にやって行けるだろう。オレが好きだったかつての彼女の様にーー。


しかし彼女に贈った言葉は無常にもオレ自身にも当てはまることだった。

ーーオレの恋も永遠に叶うことは無い……。

愛の星、金星を母星に持つオレ達の宿命なのだろうか?

何とも悲しい運命なのだろう……。

愛が嘲笑っているかのようだ。


前世に今世にと叶わなかったオレの初恋。

死してなお、彼女を想い続ける程に深く愛していたのだから。

母星である愛の星金星よ、オレの切なる願いを叶えておくれ。

どうか来世では彼女に愛され恋人にますようにーー。




おわり



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