セラムン二次創作小説『愛の言葉の一つでも(遠うさ)』


君の事が分からない。

分かっていたのに分からなくなってしまった。

いや、分かっていると思っていただけだったのかもしれない。


君の好きな男の容姿や声で近づけばすぐにでも落とせる、堕ちてくれると思っていた。

でも君はいくら暗示をかけようとも、口説き落とそうとも全く落ちてはくれない。


“月の王国シルバーミレニアムのプリンセスを抹殺し、「幻の銀水晶」を奪って来るのだ”


クインベリルの命令の下、俺の中の少し残っていた記憶を頼りに辿り着いたのがうさぎちゃん、君だった。


君に近づいたのは紛れもなくセーラームーンだと思ったから。

うさぎちゃん、君がセーラームーンなんだろう?

月のプリンセスで幻の銀水晶を持っているんだろう?

どうすれば秘密を教えてくれるんだ?


すぐに手中に入ると思っていたのに、思いの外手こずってしまい焦ってしまう。


特徴のあるお団子頭を褒めても、得意のセーラーVゲームの腕前を褒めても全く俺を見てはくれない。

俺は毎日君だけを見て、君だけを想い続けているのに……いくら俺が君を想っていても君は俺を、俺自身を見てはくれない。

俺を通して違う誰かを見ている。

誰だ?君の心を繋ぎ止め、魅了して止まない奴は?


「うさぎちゃん、君は本当に可愛いね」

「……そんな、こと、ない、です」


今日もまたゲームセンターCROWNで君を口説く。

そしてやはり君は落ちてはくれない。


命令の為の行動のはずが、いつの間にかムキになって行く中で本気で好きになってしまっていることに気づいてしまった。

落とすつもりが落ちていた。


どうすれば君に好きになってもらえるのだろう……。


「うさぎちゃん、愛しているよ」


気づけば抱きしめてした。

そしてもう打つ手のない俺は在り来りにも愛の言葉のひとつでも呟き、抱き締めれば君の愛が手に入ると思っていた。そんな潜在意識が出た行動。だけど……。


「い、いやぁ…!」


拒絶の言葉と共に強く体を引き離されてしまった。

こんなはずではなかったのに……。

ただ俺は君が欲しいだけ。

ただそれだけなのだから。


どうしても君が欲しい。

どうしたら君が手に入る?

どうすれば俺の物になってくれるんだ?


俺の十八番の暗示と色仕掛けにも動じない君を手に入れるにはどうすればいい。

中々落ちないうさぎちゃんの事を考えるだけで胸が高鳴る。


どんな手段を使っても必ず君を手に入れてみせる!




おわり



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