セラムン二次創作小説『雪うさぎと幼き日の想い出(まもうさ)』


久しぶりに雪が積もった休日の東京。天気予報士が金曜日の夜更けから大雪になり積もる可能性があると言っているのを素直に受けたうさぎは、久しぶりの衛とのデートが出来なくなるのを懸念して前日から泊まりに来ていた。

朝早く目を覚ましたうさぎは窓からマンションの外の雪景色を見てテンションが上がる。

積もった雪に喜びピョンピョン跳ねている姿はさながら動物のうさぎのようだとはしゃぐうさぎを見て衛は微笑ましくなるが、上気分のうさぎとは反して落ち込んでいた。


この日はここの所ずっと大学の講義やゼミ、バイトと忙しく、更にうさぎも短大の受験があったりして久々のうさぎとの休日デートの予定だった。

この積雪では外には迂闊に出られない、そう瞬時に悟り雪を恨んだ。家の中でうさぎといられるのも勿論嬉しいが、デートもしたかったと思うのは贅沢な事なのだろうか?


「まもちゃん、雪だるま作りに行こ!」


滅多にふり積もらない雪に子供みたいにはしゃいで雪だるまを作りたいと言い出すうさぎ。


「外寒いだろ?」

「あったかくして行けば大丈夫だよ」


一歩も譲らない彼女の手に引かれ、外に行って雪だるまを作る事になった。


マンションから一歩外に出ると案の定極寒の真っ白な雪景色。寒さを忘れて雪景色に大はしゃぎするうさぎを衛は愛おしそうに見つめる。

雪で一通り遊んだうさぎは本題の雪だるまを作り始めた。


「ほら、まもちゃんも一緒に作ろうよ!」


一緒に作りたがるうさぎだが、寒い上に雪を触るのが嫌で渋る衛。


「俺は見てるだけでいいよ」


夏生まれの夏男衛は冬の寒さにとても弱かった。雪だるまを作っているうさぎを見るだけで満足だったが、あまりに楽しそうに雪だるまを作るうさぎを見て忘れていた幼い頃の想い出が突然蘇った衛も懐かしくなり作り始める。


「まもちゃん、何作ってるの?雪だるまじゃないよね?」


明らかに雪だるまとは違う形の物にとても不思議な顔をする。


「動物のうさぎ作ってるんだ」


さっきからずっと雪を見てはしゃいでる姿が動物のうさぎみたいだと思っていたのと幼い頃の初恋の女の子の事を思い出してうさぎを作る事にした。


「何でうさぎ?」

「うさがはしゃいでる姿が余りにも動物のうさぎみたいだったから。それに…」


意地悪く言うとうさぎはブーたれ顔でふくれっ面になる。言いかけて続けていた言葉を止める衛。


「まもちゃんのいじわる~」


このやり取りにフッとうさぎは遠い昔の記憶を思い出し話し始める。


「そう言えば昔、少し年上のお兄ちゃんが近所に住んでて雪の日にこうやって一緒に雪だるまと雪うさぎ作ったんだよね。来年も雪が積もれば一緒に作ろうねって言ってたんだけど、いつの間にか引っ越したのかいなくなってその約束は果たせなかったんだよね……。」


そのうさぎの話にハッとなり、先程言いかけて呑み込んだ言葉を続けて衛も話し始める。


「その日もこんな大雪で、大はしゃぎしているその子の事を見てまるで動物のうさぎそのものだなって思って、その子のために雪うさぎを作ったんだ…。また来年も再来年も雪が積もれば雪だるま作ろうって、その女の子と指切りげんまんして…」


衛はその後事故にあい、記憶をなくしてしまい退院後は親戚だと言う人の家を転々として麻布の家には帰ることが出来なかった。


「え?まもちゃん、それって…」

「その年下の女の子って」


お互いの話の共通点に驚く2人は記憶を擦り合わせるように質問する。


「15年位前の話じゃない?」

「ああ、それくらい前だったと思う。お姉ちゃんになるんだって言ってた気がするな」

「そう、進悟がお腹の中にいてあんまり構って貰えなくて寂しくて、近所のお兄ちゃんとばっかり遊んでたんだ。私の初恋の人」

「お姉ちゃんになるからしっかりしなきゃって言いながらよく泣いてたのを慰めてあげてたっけ。大きくなったらお嫁さんにしてあげるって約束したっけ」

「それ、私だよ!」

「やっぱりそうだったのか?」

「あの時の初恋のお兄ちゃん?」

「あの時の泣き虫な女の子?」


何と2人は幼い頃に会っていた。近所に住む幼馴染みとしてよく遊んでいたことが判明した。


「あの時の約束、やっと果たせた」


衛にとっても、とても大切な思い出であるあの時の初恋の幼女は、まさか運命の恋人であるうさぎだと知り、あの日果たせなかった約束を胸にこれから先の未来は悲しい思いをさせないようにしようと誓った。


やんでいた雪がまた降ってきてより一層寒くなってきたのと、昔の懐かしい思い出に愛おしくなり、雪だるまを楽しそうに作り続けるうさぎの後ろ姿をあの時の想い出と共に抱きしめながら幸せをかみ締めていた。





おわり



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