セラムン二次創作小説『君にはかなわない(キンクイ)』



「無事、デス・ファントムを倒したようだね」


役目を終え、キングの元へと戻ってきたクイーンを見て安堵する。

30世紀に再び平和が訪れ、キングはホッとした。


「ええ、3人なら必ずネメシスを打ち破ると信じていたわ」

「昔の君はとても強くて無敵の戦士だったからな。勿論、今も強いけど」

「まぁ、エンディミオンったら褒め上手ね。あなただって強いわ。私はあなたがいなければ、ここまで頑張れなかったもの」


クイーンは常々、強いのは自分では無く銀水晶の力によるところが大きい。そして、タキシード仮面としてずっと戦士時代を支えてくれた、側にいて励ましてくれたお陰だと感じていた。


「俺の方こそ、君がいなければここまでやって来れなかったよ」


キングも又、クイーンがいたからこそ何も無かった自分の人生に彩りが与えられ、人として普通の幸せを掴めた。そう感じていた。


「前にも言ったけど、銀水晶(と私)の存在を肯定して、迷わず戦えって言って貰えて嬉しかったの。その言葉で私自身がとても救われて、心が軽くなったのよ。まもちゃんの言葉とゴールデンクリスタルの力が合わさって強くなるの」


昔の愛称で呼ぶクイーンは、恋人時代のあどけない笑顔になっていた。


「ゴールデンクリスタルだって銀水晶が無いと非力さ。うさ、君の力になる為のクリスタルだよ」


キングも昔の愛称に戻すと、たちまち昔のように愛おしそうな顔でクイーンを見る。

そして、どちらからともなく何度と無く交わしてきたキスをする。


「力が戻ってきたわ」


先程のクリスタル・パレス復刻と戦士達への新たなパワーと戦士の称号を与えた事で少なからず体力を消耗していた。

キングとのキスにより、体力が復活する。


「あまり無理するなよ」

「まもちゃんが治してくれるって信じてるもん」


少女のような弾ける笑顔でクイーンは悪戯っぽく言ってのける。


「セーラームーン達により強い力と、戦士の称号を与えていたの」

「君は神秘の戦士だっけ?」

「ええ」


自身の称号に照れ臭くなり、顔を赤らめる。


「エンディミオンも、タキシード仮面に騎士の称号与えてあげて」

「昔の俺に称号?考えてもなかったな」

「でも、あなただけ何も無いって、寂しいわ。私にも、四天王にもちゃんとあるのに……」


前世で王子直属の配下として本格的に仕える事になった時、王子である自分自身が四天王にそれぞれ騎士の称号を与えていた。


クンツァイトには“純潔と慈愛の騎士”

ゾイサイトには“浄化と癒しの騎士”

ネフライトには“知恵と安らぎの騎士”

ジェダイトには“忍耐と調和の騎士”


皆それぞれ、その名の元によく仕えてくれていた。

しかし、だからと言って自身にも騎士の称号を与えるとなるととても気恥しい。


「どうして四天王に騎士の称号があるって知ってるんだ?俺、言ったことあったかな……」

「まもちゃんには聞いてないよ?美奈P達が教えてくれたんだもん」

「また美奈か……」


戦士一、お喋りでミーハーな名前を聞き、キングはどっと疲れる。深いため息が漏れる。


「さ、まもちゃん♪ステッキとゴールデンクリスタルを持って!」


キングとは正反対に、キスした事により元気になったクイーンは楽しそうにしている。


「いや、いいよ」

「ダメよ!私にも戦士達にも四天王にもれっきとした称号がちゃんとあるんだから、まもちゃんに無いなんて不公平だわ」

「そう言われてもなぁ……」

「これはクイーンとしての命令です!タキシード仮面にも騎士の称号を与えなさい!なんてね」

「こーら、うさ!こう言う時ばかりクイーンの立場を利用するな!」

「だって、こうしないとまもちゃん頑固だから」


クイーンは至って本気だった。

常々、四天王にも戦士にも自分にもちゃんとした称号があり、その名の元に務めてきた。

タキシード仮面には称号がない事が気がかりだった。

前世では王子だったけれど、今は立派に最前線で戦う騎士だ。称号があっても何らおかしくはない。

そしてそれを与えるのはクイーンの役目ではない。キングである自分自身であるべきだと立場を弁えていた。


「分かったよ……」


クイーンの真剣な眼差しに、観念する形で折れる。


「君にはかなわないなぁ……」


実質の敗北宣言である。

押し切られる形で、自身のステッキとゴールデンクリスタルを用意する。


「俺に相応しい称号、か……」

「何にするの?」

「うーん、じゃあ……“支援と誘導の騎士”かな?」


決めると同時に、タキシード仮面へと力が行くようステッキとゴールデンクリスタルをいるであろう方向へと翳す。


「わぁ、ピッタリね!お疲れ様♪そして、よく出来ました」

「……///恥ずかしい」

「私だって自分に“神秘の戦士”って付けるの、恥ずかしかったのよ。だけど、これでより強い心で力を合わせて戦って行けるわね」

「ああ、そうだな」


そう、デス・ファントムは倒したが、これからも強大な敵が次々現れる。どんな困難にも乗り越えられるよう与えたパワーと称号。

戦いはこれから、まだまだ続いて行くことを2人は知っている。

しかし、その度力を合わせ、乗り越えて行くこともまた分かっていた。


「戦う力は無くなってしまったけれど、セーラームーン達に平和を託しましょう」

「ああ、ここで見守ろう」


クイーンとキングとして、静かに見守る決意を固めるのだった。





おわり



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