セラムン二次創作小説『内緒の出来事(ジェダレイ)』



朝早く起きたレイは外を見て落胆した。

予報通り雪が積もっていて、神社の雪かきをすることが決定したからだ。

いつもは雪が降るだの積もるだのいいながらも結局降ってもパラパラですぐ止む事が多い。今回もそれだと思い期待していた。


積雪に慣れていない都民。外出は控えるだろうから神社に来る人もほとんどいないのは予想が着く。けれど、それとは反比例して雪かきはしておかなければならない。


もう歳を召している祖父に雪かきをさせるのは危険。足元も危険で、足でまといになる事間違い無し。

和永もこの雪だと来られず、期待は出来ないだろう。1人、神社の雪かきをする決意をしていた。


巫女姿にはならず動きやすい学校の体操服になり、戦闘態勢は十分である。

外に出て辺り一面雪景色の神社の敷地内を見て盛大にため息を着くレイ。

とりあえず適当に雪かきを始める。


何時間作業していたのだろうか?

そろそろ休憩を取ろうとした所で人の気配が近づいてきたことを敏感に気づく。こんな雪の日に参拝客か?と怪訝に思いながら、気にせず雪かきを進めて行く。

何にしろ、こんな時に参拝はありがたい。そう思っていたら、話しかけられる。


「レイ、手伝いに来たよ」


振り返ると和永が爽やかな笑顔で話しかけてきた。

思わぬ助っ人の登場に心の中でよく来てくれた!と思ったが、やはり素直に言葉に出来ないでいるレイ。


「大変そうだね」

「見れば分かるでしょ……」

「そうだね。手伝うよ」


適当に道具を取り、雪かきを始める。

若い男と言えど、慣れない作業に四苦八苦する。

作業中も、容赦無く降り積もる牡丹雪。

それが追い打ちをかける。やってもやっても終わらない。

繰り返される作業に、忍耐強い和永も流石に限界だ。


「せめて、雪が止んでくれたらなぁ……」

「文句言わない!修行の一貫だと思えば、頑張れるわよ」


二人とも主君を守る戦士。いつ何が起きても言い様に体作りをしておいて損は無い。

とは言え、終わりの見えない雪かきは辛い。


「衛やうさぎちゃんの聖蹟でならこの大雪、溶かせられそうだけどな……」


思わず心が折れ、現実逃避の言葉が盛れる。

しかし、レイは無視して黙々と作業をこなす。


「そうだ!レイの炎の技でなら、ここら一帯の雪も溶かせるのでは?」


飛んでもない名案が浮かび上がる。思わず、和永は絶叫する。

雪を溶かすには熱が必要。それに相応しい技を持っているのは、他でもないレイだ。


「何ですって?」


和永の突拍子も無い発想に、レイはただただ絶句する。


「言われてみれば……いや、でも」


レイ自身がその考えに行き着かなかったのは他でもない。単純に忘れていたから。

そして、こう言ったことに戦士の技を使う発想も、使っていいとも思っていなかった。真面目な性格故、思考にストッパーをかけていた。

こう言う事をしそうなのは、自分では無い。うさぎか美奈子だ。一緒にされたくは無かった。


「こんな事に技を使用するのは、ちょっと……」

「真面目だなぁ。拉致あかなんだし、柔軟に行こうぜ!黙ってれば問題無い無い!」


至極楽観的である。お堅いレイには、美奈子の様な気楽な考えの人があっているのかもしれない。


「俺が出来ればいいんだけど、生憎俺は氷にしてしまうから、逆効果だしな」


自分の技は向かないからと申し訳なさそうに和永は謝る。


「ここまで手伝って下さっただけで、有難いわ」


そう、素直に感謝してその場を去る。


そして、次に戻ってきた時は、セーラーマーズの姿だった。


「さっすが、その姿も美しいな」


久々のセーラー戦闘服にテンションぶち上げの和永。やっぱりこの提案して良かった。そう素直に喜んだ。


「マーズ・スネイク・ファイアー」


この場に一番効率の良い技を放つ。

その考えが項を制して、辺り一面あっという間に雪は溶けて行った。


「おお、ここまで威力絶大なんて、すげぇ!」


ここまでと思っても無く、感動する。


「力を使ったのは、くれぐれも内緒ですからね」

「モチのロンさ!」


技を放った直後は凛々しい戦士の顔をしていたマーズ。

しかし、やはり罪悪感はあるのか?気まづそうな顔で釘を指して来た。


和永自身も怒られたくは無い。彼女の為にも、自分の為にも、この事は墓場まで持って行こう。そう決意した。





おわり



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