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映画のはなし|「トラスト・ミー」(1990)

ハル・ハートリー監督の「トラスト・ミー」
一見男女の恋愛ものに見えるけれどメインテーマは恋愛でも家族愛でもない、愛を信じずにそれでも愛を語ろうとする物語なんです。

↑マリアの格好がキュートなので注目。パツパツのピンクのキャミソールに赤いミニスカ、白いベルトは大きい。打って変わってダボダボで袖の余ったスタジャン。極め付けはショッキングピンクのリュック、ポケットはからしイエロー。
イラストがわかりにくくて申し訳ない、耳にはピンクのイヤリング(そもそも描いてない…)、そして白の網タイツも履いてるのです!唇は紫のリップ💄で総合コーデ100点満点のかわいさ!


主人公のマリアもマシューも自分をこき使う片親の元で生活していて、精神的であれ身体的であれ彼らからの暴力を受けている。自分が死ぬまで一生こき使うと主張するマリアの母親、少しでもタバコの吸殻が落ちていようものなら部屋に怒鳴り込んでくるマシューの父親。彼らは日々、主人公たちの安寧を脅かしている。じゃあマリアもマシューも親から愛されていないのかと言われると決してそうではない。マリアの母からもマシューの父からも、彼らを愛しているような発言がときどき現れる。そう、そこが愛の複雑さなんだよね。

この作品は、「愛」を無条件に讃えられるような神秘的な存在としては信じません。「愛」ゆえに起きる歪みを見つめ、それでも互いを癒し、傷つけず、繋ぎ止める何かを探すのです。結局それは胸底では愛であるのだけど、タイトルにもなっているように彼らの求めるような愛を完成させる(愛の代わりになる)のが「トラスト」、互いを信じることなんだろうなぁ。

↑ある人を待つふたり。会話から彼らの考える愛や信頼が想像できる。マリアはマシューの亡くなったお母さんの水色のシャツワンピを着て、下は白タイツ。冒頭のケバケバギャルマリアも可愛いのだけど、ガーリーな服装も似合ってるね👗後ろの黄色い花も画面に彩りを添えます。


傷つけ合わずに互いを繋ぎ止めるものを、信頼という目に見えない不確かな物に求めるのがまた何とも愛おしく切ないんだよね〜。というのもこのふたりが信じる「信頼」でさえ、最後に彼らが期待したものとは違った形で現れるのですよ。切ないけれども薄い幸福の色も見通せるようななんとも言えないラストは胸に響きます。

ハル・ハートリーはこういう空気感を描くのが上手だなぁ。画面の空気が形容し難い感情や色でほんのりと染まっていて、それがとても心地いい。
もちろん空気の色だけでなく、洋服や小物の色使いも完璧です。少し褪せた感じがまた切なくて、視覚的にもとても素敵な映画だと思います。
鑑賞後、彼らや彼らのいた街のことを思わずにはいられない日々が続いた…。

↑国語に弱いマリアのためにパキッとした黄色の語彙辞典を持ってくるマシュー。左手にはピンクの花、包み紙は緑💐壁の色は薄い水色で、脇にはパステルピンクのラジオ。ね、画面の色彩を見ているだけで楽しいのです!



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