バク転?しません!中国の語り物芸「曲芸」の事をほんのサワリだけ
はじめに
中国の音楽ジャンルの一つに「曲芸(きょくげい・quyi)」というものがあります。これは「説唱芸術(せっしょうげいじゅつ・shuochangyishu)」または単に「説唱(せっしょう・shuochang)」とも呼ばれる、「説(語り)」と
「唱(歌唱)」の芸で、曲芸と聞いて我々が思い描く宙返りやバク転などのアクロバットの事ではなく「音曲の芸」の事です。確かに日本人が耳にするとちょっと誤解を生じやすい言葉ですね。今日は日本の中国音楽シーンでさえ殆ど話題になる事がない「曲芸」のお話を少し綴ってみたいと思います。もっとも私も深く知っている訳ではありませんし、ましては専門でもありませんから、どうぞ気楽にご覧ください。
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さて、日本では限られた数種類しか目にする機会がありませんが、中国には数百に及ぶ大変豊かな音曲語り物芸のバリエーションがあります。けれどもこれらの曲種の本質はあくまでも語り芸で、その芸が発達した地元独特の方言による押韻や言い回しなどが、太鼓や三弦などによる独自の助奏によって弾みが付いたり美しかったりします。けれども音楽に比重を重く置いてしまうと、楽器は語りの補助的な役割を果たすだけで、短い同じ手を繰り返すパターンが多いので器楽曲を聴き慣れた人には単調に思えてしまうかも知れません。曲芸には細かい分類も色々あり、中には一定の節や決まった曲に填詞(歌詞を当て嵌める事)するパターンのものもありますが、多くは独立した楽曲という感じではありませんから、鑑賞もさる事ながら、そのバック音楽だけを我々外国人が抜き出して演奏するというのは特別な目的でもない限り、なかなかありません。一般的にはもっぱら「演る音楽」より「聴く音楽」にならざるを得ないという訳です。もちろん、純粋な研究対象として、これらの芸能を捉えている日本人の学者は何人もいらっしゃいます。ただ、娯楽としては当然ながら聴衆もその意味を聞いて理解できなければ成立しないので、今のところ日本で愛好者が増えるには至りません。ただ、中々味わい深いので、中国語ができる方の中に少しでも興味を持ってくれる人が増えたらと思って、誰に当てる訳でもなく書き綴っている次第です(私は良く蘇州評弾や南曲※後述を部屋で流してお茶を喫しています)
代表的な曲芸の例
大きく分けると代表的なものには「評話(ひょうわ・pinghua)」という日本でいう所の講談みたいな語り芸と、「弾詞(だんし・tanci)」という節が付いた語り物があります。評話は「評書(ひょうしょ・pingshu)」と呼ぶこともあります。これら二つの要素を合わせ持つのが「評弾(ひょうだん・pingtan)」という訳です。語りと節を合わせた「説唱」という言葉も良く使われます。検索の時にお役立てください。それぞれの芸能の比重は様々で、中間型とも言えるものもあり、厳密な線引きができないものもありますから、あまり気にせずゆるゆるとご鑑賞ください。さて、よく引き合いに出される物を順に見て行きましょう。
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