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脱社会的交換日記

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小市民たちの日記。交換日記と名乗ってはいるけれど、その実、ペン売り場の長いロール紙のような無法さである。
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2023年9月の記事一覧

向かい続ける

みました? 『こっち向いてよ向井くん』 面白いドラマや映画は数多くあるが、心にパンチを喰らうようなものは少ない。現実社会から受けた疲労とストレスを解消するためにエンタメをみている側面があるから、むしろ喰らいそうなものはタイミングを図らなければいけない。社会問題を捉えたもの、自分の古傷に触れそうなものは気力体力が満ちているときにみる必要がある。 心にパンチを喰らいながらも、欠かさずみてしまったこのドラマ。 前半はシンプルなラブストーリーとして進行する。恋愛に悩みを抱える主

長いものにごまかされる

 長編小説がどうして素晴らしいのかと言えば、それは読むのに時間がかかるから。文字通り長い。どれだけ頭の良い人であっても、少なくない時間と労力をかけなければ、長編小説を読み終えることはできない。  読み終えたあと私は満足感に浸る。わざわざ買って読んで良かった。アイスコーヒーをちびちび飲みながら、少しづつ別のことを考え始める。あれ、具体的に何が良かったんだっけ?  一般にひとは自分のかけた時間と労力になんとかして価値を見いだそうとする。だから長編小説を買って読んだあとの満足感も、

どっちつかずでいる体力

夜風がこの部屋を通るたびに、窓にかかっている薄いブラインドが呼吸するみたいにふくらんだりへこんだりしている。わたしはそのゆったりした呼吸をじっと眺めている、憧れている。わたしはこの部屋で呼吸がしづらい。 社会にぶつかりながら進んだせいで自分の理想とはかけ離れた形をしている流れの跡を振り返ってみたとき、その不格好さを自分で笑えない。まっすぐ、ただ何かに向かってまっしぐらで進めたなら、きっと深く息が吸えるんだろう。 このセリフを言われて、わたしなら、なおも面と向かって話せるだ