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働けるって幸せなこと


昔は仕事が怖かった。


自分には何も才能も無く、社会に役立つことなんて何もできないと思っていた。

頭もそんなによくないし、大学も有名どころじゃないし。

就活雑誌で見るような、仕事で「きらきら」することは自分には無いと思っていた。

初めてバイトした時も、「学校を卒業したら、これがっずーっと続くのか…」とすごく憂鬱になった。


超氷河期の新卒で務めた先は、一番厳しいとされていた業種の営業職だった。

辞めたいと毎日思いながら、外回り中に通りかかる公園でブランコに乗ってめそめそ泣いていた。

結婚すれば、この仕事から救われるのかも、とさえ思って、当時の彼との結婚も想像していた。

その仕事を辞めて次に就いた仕事は、もっと過酷な営業職だった。(苦笑)

毎日上司に罵倒されながら、やっぱり泣いていた。

私の人生の中で、これは意味があることなのか?

毎日罵倒されて、人格否定までされる意味はあるの?


でも、ある日にふと思った。

今の経験を精一杯味わおうと思った。

痛みも涙も、感じられるだけ感じよう。私は、生きているのだから。

なぜなら私の大事な親友は、突然亡くなってしまった。もう痛みも喜びも、こんな風に感じることさえできなくなってしまった。


それ以来、私は親友の気持ちも勝手に背負っている。

たまに、私の中の彼女が私に言う。

「ほんと、頑張ってるよね。怒られても気にすんな。Mは今、貴重な自分の時間を生きているんだから。人生なんて一瞬だよ。」と。

幽体離脱しているみたいに、自分を俯瞰で見ると、意外に私は頑張っていた。

そして、自分の良いところも、克服すべきポイントも見えた。

それを直したり伸ばしたりしているうちに、仕事が出来ると言われるようになった。

「仕事さえできればいい」と思えるほどに、仕事にのめり込んで、仕事が好きで・・・まさかあの私が、だ。

ワクワクし過ぎてほぼ一日中、仕事のことを考えていた。

一時期は同僚の男性にも女性にも妬まれても、諦めなかった。

早く出世したことでも「女はいいよな」と根拠もなく言われ、陰では「あの女」呼ばわりされたりもしてきた。

それでも、不思議なぐらい、仕事に夢中だった。


結婚して移住してから、仕事をしていないことで不安定になったのは確かだ。

語学の勉強をしながら、昔の「仕事していた生活」をどこかですごく恋しく思っていた。

夫に相談したところ、夫の勤務が不規則なので、もし私が定職を持つと休暇が一緒に取れずに旅行に行けなくなるかも…と心配していた。

結婚して幸せなのに、好きな人と暮らせて幸せなのに、家事だっておろそかなのに、まだ昔の仕事に未練があるなんて・・・と自分を責めた。

いつでもできると思っていた仕事も、時間が空くほど仕事の勘などが鈍ってくるんだろうし、もう働くのは私には無理なんだろうな・・・とも。


「やれることからやってみたら?」・・・また、彼女がささやいた。

そして少し動き始めたら、変わってきた。

今は、昔の同僚から紹介されたり、昔のクライアントから声をかけてもらったりする案件をこなしながら、興味のある案件などを自分からコンタクトを送って応募している。

年齢は関係ないとは言うけれど、新しい案件はやはり決まりずらく、やはりちょっと厳しさは感じている。

私のキャリアが中途半場かもしれない。ブランクが問題かもしれない。日本に住んでいないだけで、こんなに働ける職種が狭まるんだな…。

いろいろ考えすぎてたまに落ち込むこともあるが、こんな状況だから、働けるって幸せなことなんだなと本当に実感している。


失った親友の声を自分勝手に利用しているので、たぶん彼女からは

「勝手に利用して~!もう~!」

と言われているかもしれない。(苦笑)

でも、私の人生は彼女の人生だ、と思って大事に過ごそうと思っている。

彼女が亡くなってからの私の人生は、二人分楽しもうとしてきた。

そして働くことは、やっぱり私の目標だ。


次回は、季節行事として逃げられない、今いるヨーロッパの「クリスマス」について書いてみたいと思う。



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