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読んだ本【23.03】

祐介・字慰

 尾崎世界観 (文春文庫)

 才能しかなかった。彼の音楽は全然知らないから逆に新鮮な気持ちで読めた。自伝的小説、かどうかは知らないけど、かつての自分がいた世界を描くのは勇気がいることのようで一種のオナニーでもあるなと思った。やるせなさやもどかしさが寄り添っていた「祐介」だった「世界観」が痛々しくも愛おしくもある。少なくとも私にはもうそんな若さはないのかもしれない。

屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理

 春日武彦 (河出文庫)

 こういう本を永久に読んでいたい。屋根裏などに潜む幻の同居人というくくりを意識したことはないから、そこに焦点を当てて書いているという点が非常に面白い。昔の座敷牢や都市伝説、様々な事件、統合失調症や認知症などを引き合いに様々に考察を巡らせる。それが可能なのは筆者の経験や興味が大きく、それゆえに本書は成立している。考えたこともなかった事象について考える機会が生まれたので文庫で再販して手に取れたのは嬉しい。俗っぽい事件やフィクションを紹介しながら進んでいくのがまた親しみが湧く。

ちょっとふしぎ 吃音・チック・トゥレット症候群のおともだち あの子の発達障害がわかる本 4

 藤野博 監修 (ミネルヴァ書房)

 よく分かる本だった。
 でも世の中こんなに優しくないよと思ってしまう。現代ではどうかは知らんが。僕が子供のときに吃音に理解を示してくれる親や教師がいたらこんなにひねくれることはなかったのかもしれない。誰も助けてはくれなかった。人類は皆、敵だと思った。そんな奴らに復讐しようと生きてきたのだった。そんな人間にならないように、子を持つ親や保護する立場の教師などはほんの少しでもいいから気にかけてやってください。
 教師の人は全員こういう教育を受けないんだろうか?

新潮 2023年04月号

 (新潮社)

 舞城王太郎『恐怖は背骨になる。』。
《普通》に名作だった。思いを言葉にするのは難しいし、言葉にすれば嘘っぽくなるし、でも言葉にしないと伝わらない。そして舞城王太郎の言葉は僕の血となり肉となる。
 親と子が真剣に話し合えるってすごい。そんなことありえない。そして母親の再婚相手とも主人公は真剣に話し合うことができて、血はつながってなくてもそれはもう家族なのかもしれない。人間を信じられない僕には家族などいないのかもしれない。
 世間の感じ方と自分の感じ方が違っても、いいんじゃん? と言ってくれる。こういうときはこういうふうに振る舞うべきなんていうのはなにかの模倣で、そんな生き様で生きたほうが楽なのかもしれないけれど僕には気持ち悪くてできない。そんな僕にとって救いの作品だった。

キクタンTOEIC® L&RテストSCORE600

 一杉武史 編著 (アルク)

 英単語力がなさすぎると思ったので、1月1日から毎日、70日続けた。耳で聴くと身につきやすいって本当だったんだなとようやく知った。いや、知っていた。そういうふうに聴いたことはあった。でも初めて実践した。そして毎日続けることが大事だと気づいた。10代のうちに気づいていればよかった。
 家から駅まで歩く間や晩ごはんを作ったり食器洗っているときに聴いていた。音で聴いていると日本語が時々理解できないことがある。「彼女は並の科学者ではない」が「波の科学者」? となって一瞬戸惑う。
 基礎的な単語の本書でも知らない言葉がいっぱいあった。全部完璧に理解して次に進みたい。

異邦の騎士 改定完全版

 島田荘司 (講談社文庫)

 浦賀和宏さんが好きだと言っていた作品。ようやく読んだ。浦賀作品の原点を見た気がする。めちゃくちゃ面白かった。そんなに都合よく記憶喪失になんかなるものだろうかとか思うのは野暮でしょうか。
 御手洗潔最初の事件ということだが、小説書いてみようと思い立っていきなりこんなのが書けるものなのか。もちろん当初の原稿とは違うとは言え。

図解 橋の科学

 土木学会関西支部 編 (ブルーバックス)

 やっぱり橋が一番興奮する建築物。わかりやすく丁寧で橋の入門にはうってつけだった。
 橋は魅力的すぎるし、橋を見るたびにジロジロ見てしまう。みんなもっと橋の素晴らしさに気づくべきである。

どろどろのキリスト教

 清涼院流水 (朝日新書)

 神聖ローマ帝国が神聖でもローマでも帝国でもないということが改めてわかった。主題はそこではないが。
 笑ってはいけないキリスト教史という感じだった。当時を生きていたわけでもキリスト者でもない我々からしたらなんやこいつら、ていうエピソードを集めているのだ。面白かったぞ。同様のキリスト教本をまた書いてほしい。
 キリスト教の話をしていると同時に、それは西洋の歴史でもあるので、日本人が世界史を学ぶときにキリスト教のことをもっと知るべきだよなと改めて思った。

しあわせの理由

 グレッグ・イーガン/山岸真 編・訳 (ハヤカワ文庫)

 型にとらわれない発想の数々で描かれるSF短編集。クセになりそう。
 解説にもあるけど、哲学のエッセンスを随所に感じる。哲学的な問いを描く手段としてSFという体裁をとっているのではないかと思える。それが心地よい。それから、実在の絵画や物理学者等を引き合いに出すことでこの物語たちがこの世界の延長線上にあると思わせてくれる。

スナッチ

 西澤保彦 (光文社文庫)

 西澤保彦の魅力の一つに、ああでもないこうでもないと推理をしていってそれしか考えられない結論にいたるんだけど、それが本当に正しいのかはわからないという危うさがあるけど、今回は珍しく犯人に自白させていた。
 特殊設定とエセ科学をきちんとロジックに落とし込んでいてさすがだった。そしてエセ科学をおとくいの巧みなロジックで描くから、説得力をもたせているのがよい。熱を下げる必要はないというのは同意だけど、癌がそんな風に転位はしないとは思う。これはフィクションで、物語の構造として利用されているからそれでいいのだろうけれど。

50歳から始める英語

 清涼院流水 (幻冬舎新書)

 何歳から始めたって大丈夫と背中を押してくれる。
 英語勉強するの楽しいよね。
 流水先生式の英語学習メソッドが載っていて、自身の体験を交えて紹介してくれるから説得力がある。
 ドリームキラーを相手にしないのはそのとおりだし、自分が英語を学びたいと思ったらすぐに始めるべきだし、英語が苦手なら成長しかないのでやらない手はない。TOEIC受けようかな。


ひとこと

 早く冬になってほしい。


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