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読んだ本【2023.02】

火星の人

 アンディ・ウィアー/小野田和子 訳 (ハヤカワ文庫)

 最高だった。じゃがいも食べたい。
『オデッセイ』という映画の原作。映画も面白かった記憶が薄っすらとあるけれど、原作も名作だと聞いて読んだ。今年の目標はSFを読むことなのだ。
 全編通してワトニーのユーモアが楽しいし、数々の困難を切り抜ける頭脳と行動力に感動する。想定しうるアクシデントを丁寧に描いていて出来うる対処をさせている作者の力量に脱帽、という感じだ。(おそらく)科学考証がしっかりしているため、引き込まれる。素晴らしすぎる名作だった。
 同じ状況に自分が陥ったとして、ワトニーのようにユーモアたっぷりに記録を残すことができるだろうか? そして知識を総動員してサバイバルを戦い抜けるだろうか? 誰もが無理だと思う反面、それぐらいのメンタルを持っていないと宇宙飛行士になるのは難しいのかもしれない。そして、たったひとりの命のために、何十億ドルもの費用をかけて大勢の人間が行動することが一番の感動なのだ。NASAの天才集団が、最後は祈ることしか出来ない、人間の無力さを描くけれど、祈りこそが人間の力強さだと僕は思っている。火星に移住できる日が来ても読みつがれてほしい名作だった。

中国行きのスロウ・ボート

 村上春樹 (中公文庫)

 眠れない夜に読み終えた。
「ところで、寝れない夜はいつも喉が渇く。あまりにもひどく。どうしてだかわかるかい?」
「どうしてなの?」
「わからない」
 やれやれ。
 まるで村上春樹の初期の小説に登場する比喩のようだ。「まるで~のようだ」という言葉を多様しすぎな気がして、しかも全然ピンとこないから、「まるで~のようだ」と言いたいだけな気がしてならない。 そして、羊男がまさか衣装だとは知らなかったな。てっきり羊男は羊男なのだと思っていたよ。村上春樹は未年の生まれなのかと思いながら読んだけれど調べたら違った。
 割と好きな短編集だと思った。でも、全盛期の文章(?)にはまだ到達していないなという感想。世界観は村上春樹の世界だとは思ったけれど。 

話の終わり

 リディア・デイヴィス/岸本佐知子 訳 (白水Uブックス)

格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか

 オデッド・ガロー/柴田裕之 監訳・森内薫 訳 (NHK出版)

 地理的条件というのは冷静に考えればたしかにそうだと特に納得した。現代社会を知るためにはもっと世界史を勉強しないと行けないなと思った。農業革命や産業革命には理由があって、現代社会の格差にも説明できる理由があると述べる本。
 前半はいかにして人類が繁栄してきたかを述べる。農業革命やら産業革命で、人々は豊かになった。食料も増えて人口が増えるが、その後に増えた人口のせいで食料が足りなくなってまた人口は戻る。長期的に見た人口の変化を述べたマルサス説を検証していく。やがて人類は子供の数を増やすことより、子供に投資することを覚える。以前より子供が死ににくくなった社会では量より質が求められる。文明が発展して工業化が進めば、より良い教育を受けることが重要になっていく。そんな過程を前半で述べる。
 後半では、現代社会の格差の問題に切り込んでいく。現代から逆に時間をさかのぼって。工業化が遅れている国はどういった社会的文化的背景があるか。産業革命はなぜヨーロッパで起きたか。そして文明が発展したのはどのような地域か、人種の多様性の広がり方を述べてアフリカに人類が生まれたところに格差の起源を見る。
 納得がいく箇所が多くて面白かった。格差がなぜ世界中であるかに深く考えたことなんてないのでそれを考えるきっかけになる。もちろん現代社会においては様々な要因があるわけである。もっと世界を知らないといけない。『銃・病原菌・鉄』も『サピエンス全史』も読んでいないので、そろそろ読むかと思った。そうやって世界を少しだけわかった気になりたい。

星を継ぐもの

 ジェイムズ・P・ホーガン/池央耿 訳 (創元SF文庫)

 今年の目標はSFを読むことなので、避けては通れないだろう本作を読んだ。奥付を見たら104刷でやばすぎる。
 それはともかく、超面白かった。ミステリ的要素も楽しくさせる要素で、色々と考えながら読んでしまって良い。タイトルを理解できる最後の展開は感動だった。
 チャーリーの持ち物から、未知の言語を紐解いていくのは興奮した。数字の体系から徐々に理解していくの、研究者なら楽しそうだと思った。
 月の裏側の地形について合理的な説明を作中でしようと試みて、物語に関わらせようという魂胆がとても良かった。理屈のわかっていないことを、いかにもそれっぽく物語を使って説明しようという試みはワクワクする。この物語に描かれている理屈が嘘だという理由はどこにもないもの。ロマンがあるよね。 

ナイフが町に降ってくる

 西澤保彦 (祥伝社文庫)

 今月も積み西澤保彦を消化した。
 時間を止めてしまう能力者に女子高生が巻き込まれた。まず設定がいかにも西澤保彦で、その中でルールに則って推理していく。真相はほぼそれ以外考えられないから途中で察してしまうけど、あーだこーだと推理をこねくり回すのが西澤保彦の面白さなのだ。脳天気な少女が主人公の『殺意の集う夜』に雰囲気が似た作品だった。

まとめ

 花粉がつらいので早く冬になってほしい。
 ベッドで本読むときに背もたれのクッション的なものがほしいと思った。


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