あの日もらったエンジン
卒業式の日。大好きだったアイツに言われた言葉。
「大人になったら、お前にまた会いたいわ」
18の私にとってその言葉はエンジンだった。
早く大人になりたい、ならなきゃと
大学の4年間は一丁前に化粧を覚えて
バイトで貯めたお金で買った一丁前のブランド服を着飾った。
26の冬。私はまだ、アイツに会えていない。
大学を卒業してもうすぐ4年が経つ。
大人になろうと頑張ることはもうなくなった。
あの頃のエンジンをふかしてひたすら大人への道を突っ走っていた、燃費の悪い私はもういない。
だけど、あの言葉をもらってしまった日から恋をできないでいる。
思い出は時に自分を強くする。
同時にどうしようもなく過去に置き去りにされる。
私の気持ちとは裏腹に、幸せの最中にいる親友と飲み明かした金曜日。
終電で最寄りに着いて家まで歩く帰り道、携帯が震えた。
懐かしいあの名前に胸が締めつけられ、久しぶりに私のエンジンがかかる。
「俺、大人になったから。お前に会いたいわ」
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