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明日は6人目 〜マッチングアプリde婚活もどき日記60〜

電話で聞く声は、「本人の声そのまま」ではないという。

あらかじめ用意されたデータを組み合わせて、あくまで「似たパターンの合成音」を作っているに過ぎないのだと、何かで読んだ。

自分の声も、既製データの組み合わせで誰かの元に届くわけだ……。

となると、恋愛ドラマや小説でよくある「声が聞きたいから電話する」なんて描写も、なんだか微妙な気がしてくる。
(ここでいう「声」というのは物理的な音声だけではなく、会話内容まで含んだものと考えられるが)


アプリでマッチした相手の写真が並んでいる画面を見ていたら、そんなことを思い出した。

明日会う予定のVさん(仮)とは、実に順調である。順調すぎて、まだ数通メッセージを交わしただけだというのに、

「もしや……これが運命の人ってやつか?」

とか思い始めている節がある。

「まさかの海外系アプリで、運命の人、理想の彼氏と出会えました〜とか、そんなことあり得る???」


……いやいや、一度冷静になるべきだ。

至極当たり前の話ながら、こちらの「理想」の枠にぴったり当てはまってくれる男子など存在するわけがないのだし。

そもそも人間というのは、この世に生を受けて以降の膨大な取捨選択の結果完成した(そして生きている限り常に変化もする)オーダーメイド品である。
服と違って、既製品の人間など存在しない。

——が、特に、カタログのように並んだ写真から好みのものを選んでタップorスワイプし、その結果マッチした男子というのは、ついつい既製品を見る目で見てしまいがちな気がする。

「自分の理想」という既製の枠に当てはまる相手を探す——なんてことになったら、いつまで経っても埒が開かない。開くわけがない。

「みんな違ってみんないい」の精神でいかなければな……(便利に使われすぎているこのフレーズ、書かれた時の背景とはあまりに違う文脈で使われていることが多いが……しかし便利なものは便利だから使ってしまう)。


前にも書いたが、今使っている「出会い用アプリ」は婚活アプリと違い、プロフィール欄が極めて貧弱。パッと見では、学歴と居住地くらいしかわからない。
体型や職業や年収や恋愛観も、本人がわざわざ書いていなければサッパリである。

Vさんについてわかっていることも、
・30代前半
・京都市内の某私大卒
・言葉遣いや発言が他と比べてたいへんまともなこと(1通目で「はじめまして、プロフィール拝見しました^^」と来たのは強かった。紳士的な距離感があり、きちんと謙譲語が使えることもわかる——プロフィールに「僕のプロフを拝見してくださってありがとうございます」って書いてる奴もしばしば見かける世の中……教員時代、就職クラスの生徒に手紙の書き方や敬語を一生懸命教えたこともあったが、あの知識は今どこかで活かされているだろうか……)
くらいである。

こちらも人のことは言えないのだが、掲載されている写真も顔の一部にモザイク入りの「雰囲気写真」なので、実際会ってみたら全然違った、ということもあるかもしれない。全身写真がないと身長も推し測れない。

それに何より、夕方に来た、「ここまでの雑談をまとめるような発言+明日楽しみにしてます!」というメッセージにしても、実にソツがない印象……これまでの大部分の男子と違って、ここまでに全くボロが出ていないぞ……?

こいつァ、ほんまもんの文句無しエンダアアアアアア対象案件なのか?

あるいは「会ったら幻滅」要素が何か隠れているのか?

もしや詐欺では? 当日ドタキャンもあり得るかも?(と予防線も張っておく)

明日会った後、帰りの京阪電車で私はどんな顔をしているのであろう?


……等々考えながら、「私もとても楽しみです♪」的な返信をポチッとな。

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