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あなたはどこまで見えている?(夢の学び19)

あなたの思考力あるいは内的視力は、何キロ先まで、あるいは半径何キロぐらいの範囲をカバーしているでしょう。これは物理的な距離や範囲というより、あなたの意識が届く範囲ということであり、いわば具象的な意味でも抽象的な意味でも、あなたの認識力とも言うべきものだとします。
一般にこうした認識力を養うために、見聞を広げることが推奨されますが、多くのものを見たり聞いたりするだけで、本当に認識力は養われるでしょうか。

「プロフェシー」という映画があります。
マーク・ペリントン監督、リチャード・ギア主演、実際にあった「モスマン事件」を題材にしています。主人公は謎の死を遂げた妻が遺した手掛かりを追ううち、様々な予兆や怪奇現象に見舞われ、それらの謎を解き明かしていくうち、最後にすべてが一本の糸でつながる、というストーリーです。
その中で、印象深いシーンがあります。
主人公は超常現象を研究しているある博士に参考意見を求めに行きます。そこで博士が予言について主人公に説明します。
博士は、街角に立って、高層ビルの外壁にへばりついている窓ふきのゴンドラを主人公に指し示して言います。あのゴンドラに乗っている窓ふきの作業員は、高いところから下を見下ろすことができるという理由だけで、何ブロックも先で起きている出来事も簡単に知ることができる。しかし、街角に佇んでいるわれわれは、せいぜい1ブロック先の出来事が目に入る程度だ、というわけです。
高いところから下を見ている窓ふき作業員は、何も特別な能力の持ち主ではありません。ただ、下にいる人間と見ている視点が違うというだけです。誰でもそこに上がれば、数ブロック先まで広く見渡すことができるわけです。
物理的な視界を稼ぐには、単になるべく高いビルに上がればいいわけです。一方、抽象的な認識力を、横方向の見聞というかたちではなく、縦方向の視野の高さというかたちで獲得するにはどうしたらいいでしょうか。

人間の意識が成長・発達(進化)するということは、無意識の中身がひとつひとつ順番に段階的に意識化されていくプロセスであると述べました。ということは、無意識の中にないものは意識化されない、ということであり、あなたの無意識の中身を超える成長は望めない、ということでもあります。
でも、ご安心ください。人間が生きていくうえで必要なものは、たいていすでに無意識の中にあります。
ただし、無意識は「層」になっていて、下の層から上の層に向けて順番にしか意識化されない、という性質を持っています。いわば高層ビルを下の階から上の階へと昇っていくようなイメージです。一階上へ上がるごとに、より広い視野を獲得する、ということです。つまり、誰でも成長のための高層ビルを無意識の中に持っている、ということです。

前回、人間の成長を「ジグソーパズル」にたとえました。人生の完成とは、ジグソーパズルのピースをひとつひとつ定位置にはめ込んでいった結果、一服の絵が完成することだと述べたわけです。
これをさらに意識成長の高層ビルにあてはめてみます。たとえばこのビルが10階建てだとしたら(実際に何階建てかは研究者によって異なりますが、「層」になっているという点では全員一致しています)、10種類の異なるジグソーパズルが層になっていると考えてください。下の階のパズルが全部埋まって一服の絵が完成したら、ひとつ上の階のパズルにとりかかるようなイメージです。これら順番に完成した10種類のジグソーパズルを全体的に眺めてみると、ひとつの大きな絵が完成している、というわけです。
無意識の構造について、ここではこれ以上触れません。

私が言いたいのは、無意識のどの中身(パズルのピース)をどの順番でどの位置にはめ込むか、それを本人が正確に認識するのは難しい、ということです。したがって有能なガイド役が必要です。このガイド役としていちばんふさわしいのは、私の知る限り、やはり「夢」なのです。夢は、「高層ビルの何階のどの位置にどのピースを」といったことを本人に意識させずに、今このときに本人が取り組むべき課題(パズルのピース)を、ちょうどいいタイミングで提示してくれるのです。場合によっては、本人が真っ先に完成させるべきジグソーパズルの全体像(いわば心の地図)を見せてくれもします。このことは、理屈より、ドリームワークを一度でもやってみれば実感できるはずです。

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