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脳卒中診療を通じてチーム医療のバトンをつなぐ|菊野 宗明先生(東京医科大学病院)

こんにちは、Antaa運営です。いつも素敵なスライドを投稿くださり、ありがとうございます! Antaa Slideに投稿いただいている先生方に、投稿のきっかけや投稿後の変化、今後の展望をインタビューするこちらの企画。

今回は、「急性期脳梗塞 初期診療」「内科医のための脳出血とくも膜下出血」などの脳卒中を専門としたスライドを投稿してくださっている菊野 宗明先生(東京医科大学病院)にお話を伺いました。

全国の脳卒中診療にポジティブな影響を与えたい

ー菊野先生がAntaa Slideを使い始めたきっかけを教えて下さい。

医師としてのキャリアが10年目に差し掛かったタイミングで、「自分自身が学ぶことの意味をあらためて考え直したい」と思い、Antaa Slideに投稿したのが一番最初のきっかけです。

私のキャリアについてお話をすると、もともと一般の大学を出てから24歳で医学生、30歳で研修医になりました。はじめから医師を目指してきた方よりも、そういう意味ではキャリアが少し短いのです。なので周囲に追いつくためにも、医学生・研修医時代は必死に勉強していましたね。そして実際の臨床現場に立ち日々の治療に奮闘しながら、医師9年目の終わりでカテーテルを使って血管の中から脳梗塞やくも膜下出血を治療する、脳血管内治療専門医になることが出来ました。

目標に掲げていた分野の専門医になれたことで、多少気持ちの余裕も出来てきました。すると次第に、「もっと日本全国の脳卒中診療にポジティブな影響を与えられないか?」と思うようになりました。私が臨床現場で直接関われる患者さんは、物理的にどうしても限られてしまいます。しかし、直接的に関われない患者さんに対しても何かしらの形で手助けがしたいと思い、Antaa Slideを通じて全国の医師・医学生に向けてスライドを投稿しはじめました。

ー菊野先生は脳卒中に関する様々なスライドを投稿してくださっています。どのようなきっかけでこうしたスライドを作ろうと思われましたか?

最近投稿した「内科医のための脳出血とくも膜下出血」のスライドは、公開するのはAntaa Slideがじつは初めてです。このスライドを投稿しようと思ったきっかけも、脳神経系のさまざまなスライドを拝見している中で、出血性脳卒中は一般的な病気だけれど、スライド自体の数は多くないかもしれないということに気づきました。需要はあるはずなので、それならばと思い投稿しました。

また私自身、内科医から血管内治療医にキャリアシフトするなかで感じたことが、内科医と外科医の間で出血性脳卒中に関する認識のギャップがあるということ。そうしたギャップを埋めて、さまざまな医療分野の先生方を繋ぐ架け橋として、私のスライドが活用されれば良いと思っています。

本当に届けたかった人にスライドを見てもらえた喜び

ー菊野先生のスライドは非常に多くの先生方に見て頂いてますね。

想像していた以上に、沢山の皆さんに保存やシェアをして頂けたので大変うれしく思いました。特に印象的だったのは、ある島で唯一の総合病院の医師である方が保存して下さったのを知ったことです。「本当に届けたかった人のもとに届いたんだ」と思うと、感無量でした。他にも、母校の後輩が見ていてくれたりするのも非常に嬉しいですね。

ーそれは嬉しい反響ですね!ちなみにスライドを作る際に工夫している点などはありますか?

私は医学を勉強する上で、なるべく頭に入りやすいよう”意味づけ”を普段から意識しています。例えば、NIHSS(脳卒中神経学的重症度の評価法)は評価スケールが15項目ありますが、それをただ丸暗記するというのはなかなか大変なことです。そこで、意識・目に関する5項目、運動機能に関する5項目、その他高次機能に関する5項目などと3つのカテゴリに分けることで、覚えやすいようにしました。何かしらの意味づけをすることで記憶が定着しやすくなるので、その点はスライド作りの際にも意識しています。

また、スライド内の症例はこれまで私自身が出会った経験を元に、調整しています。そうすることで、臨床の現場で実際に出来たこと・出来なかったことを振り返るいいキッカケになります。それを見た方にとっても、現場の臨場感や有用性がより高まるかと思います。未来のより良い医療に貢献できる形で私の経験を活用させて頂ければと思っています。

ーAntaa Slideで菊野先生がおすすめするスライドはありますか?

印象に残っているものとしては、山本 大介先生(湘南鎌倉総合病院)のスライドです。やはり同じ脳神経内科医として非常に勉強になりますし、山本先生のスライドはメッセージを明解に伝えて下さっています。あと、総合診療や救急分野のスライド全般はよく目を通すようにしています。私自身専門領域の医師ということもあり、普段ほかの領域の知識がアップデートしづらいです。なので、Antaa Slideから専門領域外のスライドに目を通すことでインプットさせて頂いています。

Antaa Slideを通じてチーム医療の大切さを伝えたい

ー菊野先生がAntaa Slideを見てくれている方達に伝えたいメッセージはありますか?

脳卒中診療という分野は、決して一人では成し得ない医療です。
例えば、どんなに腕のいい外科医の先生がいても、その方だけで患者さんの治療を完結することは難しいですよね。最初に患者さんを診療する総合内科の先生や救命医、研修医などが上手くバトンをつないでくれることで、外科医の先生の手に渡ります。また治療を施した後も、リハビリの先生が診てくれたり、さまざまな分野の先生が治療に携わってはじめて、一人の患者さんの健康が回復していきます。

そのため私としては「チーム医療」の大切さを伝えていきたいし、私のスライドを読んだ先生方が何かしら感じ、日々の臨床現場に持ち帰って活かしていただけたらと思います。私は”より良い脳卒中診療を全国に広める”ということを自身のライフワークのテーマとして掲げており、今後も人生をかけて取り組んでいきたいと思っています。

ー最後に、菊野先生は将来こんなことをやってみたい!と思われてることはありますか?

そうですね、まず母校である東京医大の脳卒中診療チームを今後より発展させていきたいということ。あとは、私自身がひとつの脳卒中診療チームを運営していけたらという想いがありますね。そこでより多くの患者さんの助けになるような医療を展開していきたいです。

ー素敵なお話をたくさんありがとうございました!

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