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産業医の衛生講話に役立つ情報満載なスライド3選

産業医の職務として安全衛生委員会の出席があります。安全衛生委員会は職場の安全と衛生面の問題を話し合いながら改善していく場ですが、産業医としては企業に予防医学的なアドバイスをおこなう絶好の場です。委員会では衛生講話という時間を設けて、定期的に産業医が企業や従業員の方向けにちょっとした研修会をおこなうこともあります。

今回は衛生講話で役立つAntaa Slideを紹介していきましょう。

HPVワクチンの正しい情報提供をおこなおう

女性、特にHPVの無料接種対象やキャッチアップ世代の従業員がいる場合に、HPVワクチンの正しい情報を提供することは重要な産業医業務かと思います。若い人は病院にかかる機会もなく、産業医以外に医療従事者と話す機会も少ないかもしれません。

柴田綾子先生のゼロから始めるHPVワクチンのスライドで、HPVワクチンの情報をアップデートしましょう。

スライドではHPVワクチンの最新の情報がまとめられています。2022年4月から、かつて積極的推奨の差し控えがあった17〜25歳に、キャッチアップ制度で無料でHPVワクチンが接種できるようになりました。12〜16歳のHPVワクチン接種は、もともと無料です。

HPVワクチンは、17歳前に接種すると浸潤性子宮頸がんリスクを88%低減させます。ワクチンの効果は100%ではないため、2年に1度の頸がん検診と組み合わせて子宮頸がんを減らしましょう。

また、自費ではありますが、HPVは尖圭コンジローマや咽頭がん、肛門がんのリスク因子になります。そのため、HPVワクチンは男性にも推奨されるようです。

禁煙を希望される人に禁煙外来を紹介しよう

産業医として、受動喫煙防止法や健康増進に向けて禁煙率を下げるように企業をサポートする必要があります。企業側が禁煙100%を目指している場合以外は、産業医としては、禁煙に無関心な人に積極的にアプローチするのは難しいでしょう。

ただ、禁煙に興味はあるけどなかなかサポートなしでは難しい、相談する相手がいない......という場合には、産業医の情報提供が有効となることもあります。

ねねこ先生の傾聴から始める禁煙治療のスライドで、禁煙外来の勉強をしましょう。

スライドによると、禁煙外来に来るのは喫煙者のうち100人に1人のようです。産業医としては、この数をできるだけ増やして医療的な支援で禁煙を達成してほしいですよね。

スライドでは、行動変容ステージにわけたアプローチ法が紹介されています。無関心期や関心期では喫煙のデメリットを伝えるよりも、治療薬の飲み薬で楽に禁煙できる事実を伝えます。禁煙をしたくなった時に、禁煙外来を思い出してもらえるような情報提供が有効だそうです。指導の具体例は、産業医先の声かけでも使えそうな知識ですね。

ただし、現在、禁煙治療の中心的な薬剤であったチャンピックスが製造過程のトラブルで欠品しています。日本禁煙外来がチャンピックスなしでの禁煙外来治療のガイドラインを出していますので、こちらも参考にしたいですね。

歯の健康もからだの健康に影響を及ぼす!歯科健診を受けよう

コロナ禍における生活の変化や歯科検診の未受診が、歯科業界で危惧されています。(日本歯科医師会よりhttps://www.jda.or.jp/corona/

歯の状態や歯周病は、歯だけの問題ではなく、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化・糖尿病などとの関連性が指摘されています。KOTATSU先生のスライド歯科の知識を獲得しましょう。

フレイルは加齢による身体・心の活力が低下した状態で、要介護状態の前段階といわれています。フレイルが口腔内に起こることをオーラルフレイルというそうです。単に口の機能低下だけではなく「噛めない」→「食欲低下」→「柔らかいものを食べる」→「噛む機能の低下」→さらに「噛めない」状態になり、悪循環を繰り返してしまうんですね。

また、オーラルフレイルを起こすと健康な歯は抜けてしまいます。残存歯が少ないことは大腿骨骨折や早死に、認知症との関連があるようです。ますます高齢化社会を迎える日本にとって、オーラルフレイルは非常に重大な問題ですね。

スライドでは、オーラルフレイルの予防についても紹介されています。毎日の歯磨きはもちろんのこと、歯間掃除も重要です。

予防医学の情報をアップデートして正しい情報提供をおこなおう

産業医が相手にするのは働けるくらいには健康的な人たちです。健康な人に医学情報を提供することは、時に難しいこともあります。

Antaa Slideは基本的には臨床医向けのスライドが多いですが、中には産業医の講話に使えそうなtipsが詰まっていることもあります。上手に活用して衛生講話のネタにしてみてはいかがでしょうか。


文責:すたば@救急、産業医