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デザインセンスがなくても見やすいスライドを作る方法

Antaa Slideには、楽しくて勉強になるスライドが多数ありますね。人気があるスライドの特徴は、テーマが魅力的であることや見やすいデザインであることです。私が作成したスライド「救急外来で気軽に使える漢方入門 漢方はじめるならこの症候 3選」も、ありがたいことに見やすいとご好評をいただきました。そこで今回は、私が実践している工夫を紹介します。

まとまりのよさは余白が作る

見やすさを演出するための方法、それは余白を作ることです。余白を作ると、まとまりがよく、どこを見たらよいかわかりやすくなります。脳が情報を処理する負担が減るため、内容に集中できます。余白を作る4つのテクニックを説明します。

カーニングを広くする

カーニングとは、文字の間隔のことです。Powerpointのフォントパネルに、以下のアイコンがあります。間隔の設定は「広く」がおすすめです。窮屈さが取れると、読みやすさに加えて、親しみやすい印象になります。

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行間を1.5倍にする

文字の間隔だけではなく、行間も広げてみましょう。アイコンから、行間の設定が可能です。「1.5」を選択すると余白ができます。1.5だと広すぎると感じた場合は、同アイコンの中にある「行間のオプション」からポイント数を指定して設定できます。

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すべての行間を一緒にするのではなく、複数の広さを組み合わせることで情報のまとまりを作れます。下図は私が作成したスライド「救急外来で気軽に使える漢方入門 漢方はじめるならこの症候 3選」の1ページです。下部の補足事項のみ、行間をあえて1.0に設定しています。

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フォントはメイリオ+Montserratが見やすい

すっきりとしたフォントは、見やすさを向上させます。私がよく使うものは以下の4つです。

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メイリオはしっかりしたゴシック体で少し窮屈な印象ですが、カーニングを広げると柔らかくなります。ヒラギノ角ゴは、Macに標準装備されているゴシック体のフォントです。メイリオに比べて太字が美しいという特徴があり、時には使います。太さの種類がたくさん用意されており、見出しや強調で役立ちます。太字を太くしすぎないというのも、余白を作るテクニックです。

英語はメイリオを流用せず、英語用のフォントを適用しています。Montserratは大きめのゴシック体で、デザインとサイズ感がメイリオと相性がよいフォントです。Century gothicはやや個性的ですがスマートな印象があり、利用することもあります。

私は、Antaa Slideではメイリオ+Montserratの組み合わせを主に利用しています。どちらも人気が高く有名なフォントです。パソコンにデフォルトで入っていることが多くあります。

文字は小さめ、ちょっとだけグレーに

一般論として、大文字を大きくすれば情報は伝わりやすいです。しかし私は、小さい文字もおすすめします。文字が大きいことは、素晴らしいことです。スティーブ・ジョブズは、少しの大きな文字とイラストのみで新製品プレゼンテーションをしていました。ところが医学情報はどうしても一定の文字数が必要です。病歴や治療法など正確に書くべきことばかりで、それなりの文字数を要します。文字数が多い場合、文字サイズを大きくすると、圧迫感が強くなるからです。

またコロナ禍で、スライドをパソコンの画面で閲覧する機会が増えました。画面で見る場合は、従来よりも小さい文字でも耐えられるのではないでしょうか。メイリオで20〜24pt程度であれば、読んでもらえる範囲と考えています。

文字の色を濃いグレーにすると、文字の圧迫感を減らすことができるため、よく使う設定です。フォントの種類や色、行間やカーニングを整えて、以下のようなスライドを作っています(救急当直で血小板減少に出会ったら 夜間検査でも鑑別できる?より)。

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書かなくていいことを探す作業に時間をかけよう

Powerpointのテクニックも大切ですが、スライドの内容における構成はもっと重要です。

テーマを狭くすると伝わる

見やすいスライド作成は、テーマ設定からはじまります。Powerpointを開く前の話です。わかりやすくしようとすると、あれこれ書きたくなります。しかし内容量が多すぎて伝わらなければ、何も書いていないのと同じです。テーマを狭く設定することで、記載する内容を絞りましょう。

たった1人の顔を思い浮かべてスライドを作る

テーマを効果的に狭めるためには、特定の人の顔を思い浮かべてみましょう。救急当直で血小板減少に出会ったら 夜間検査でも鑑別できる?では、「夜間当直で電子カルテの前で困っている研修医」を思い浮かべ、その人に宛てて書きました。ニーズが明確になると、伝わりやすくなります。ニーズが曖昧なままスライドを作ると、総論的な説明が増え内容がぼやけるので注意が必要です。読んでよかったと思ってもらえることが大切なので、実用的な知識の比重を増やすことも意識しましょう。同じことを伝えるとしても、一般論よりも実際の行動につながる形に言い換えます。

削ぎ落とす作業に時間を使う

スライドが完成したあとに、さらに削れる場所がないかをチェックする作業も重要です。シンプルな言い回しを検討したり、類似の文章の反復がないかに気を配ったりしながらスライドを確かめます。深夜に書いたラブレターをそのまま渡してはいけないように、スライドも少し寝かせてからチェックします。極論、文量を減らせば減らすほどクオリティが上がるという心持ちです。

デザイン力を高めてくれる2つのサービス

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私はデザインの素人なので、スライドのデザイン性を高めるのには限界があります。そこで2つのサービスを役立てています。

Canva(キャンバ)

Canvaはデザイン特化型サービスで、パソコンからもスマホからもアクセスできます。相当数のデザインテンプレートが利用可能です。アイコンや写真の素材も充実しています。商用利用が可能で、無料利用することもできますが、有料登録する価値が高いサービスです。

Pinterest(ピンタレスト)

Pinterestは画像共有を軸にしたSNSです。デザイン性の高い画像が集まっており、お気に入りのものをアプリ内で保存できます。自分の好みに合うような画像がどんどんサジェストされるようになるのです。色の組み合わせや文字の並べ方など、プロの仕事を学び、盗んでいます。SNSから学ぶ利点は、トレンドにも触れられるところです。最近はグラデーションが人気とわかり、Antaa Slideにも取り入れています。

デザインセンスよりも重要なこと

デザインに関する知識がゼロの私でも実践できる、スライド作成テクニックを紹介しました。

・ニーズをよく考える
・シンプルさにこだわる
・デジタルサービスを活用しクオリティを上げる


以上のことに気を配って、伝わりやすいスライドを作成していきましょう。

執筆:ゆっくり救急医