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世代間格差がすごかった...! 3世代でデジタルと医療について語り合ってみた。(後編)

司会「前編に引き続き今回も、異なる世代の3名にデジタルと医療というテーマでお話し頂きます。」

前編はこちら

今の医学生は勉強ツールを駆使していて優秀

司会「学業に役立つデジタルサービスはありますか?」

医学生C(以下、医学生)「スマホでmediLinkというアプリを使って、国家試験の問題集のクエスチョンバンクを解いています。year noteや病気がみえるといった参考書も閲覧することができます。」

若手救急医A(以下、若手)「私は国家試験の対策として予備校のビデオ講座をPCで受講していました。MECの孝志郎先生、TECOMの三苫先生が人気でした。」

医学生「今はmedu4Q-assistがよく利用されています。穂積先生や清澤先生が人気です。」

麻酔科指導医B(以下、指導医)「私も、国家試験の対策にyear noteやクエスチョンバンクを利用しましたが紙媒体です。ビデオ講座はなく、予備校が試験対策の講座を大学で開いていました。」

司会「国家試験の勉強ツールはデジタル化が進んでいますね。」

指導医「以前は、大学の卒業試験は教授の好みの問題が多かったです。国家試験とは別の対策が必要でした。現在は大学の試験勉強が、国家試験の勉強にもなりますよね。CBTもあり、4年生でもきちんと知識があります。」

若手「最近の学生は総じて優秀です。」

指導医「ポリクリに関して、医学生は見学者という立場でした。カルテも書いたことがなかったです。今の医学生は医師とコミュニケーションをとり、手技も多くやっています。」

若手「臨床の知識にアクセスできるツールが豊富ですね。Antaa Slideもその一例として読まれているようですね。」

司会「医師のお二人は国家試験の勉強も病院実習も、今の医学生の方が優秀と考えています。理由としては勉強ツールが発達し、効率的に勉強できるからということなのですね。」

■起業家やYoutuberなどマルチな医学生が増加中

司会「最近は起業をする学生もいます。」

指導医「起業や副業に抵抗がなく、発想が豊かですよね。SNSやYoutubeで発信する人もいます。」

若手「Youtuberの藤白りりさんなど活躍している方がいます。戦略的な行動を尊敬しています。医学生さんも学業以外の活動をされていますか?」

医学生「実はモデルの仕事をしています。」

若手「素晴らしいですね。部活とバイト、ときどき勉強というのが典型的な医学生像でした。現在は医学生のスタイルも多様化していますね。」

医学生「モデルの仕事は、事務所を通して仕事を受ける個人事業者です。確定申告の方法を学ぶいい機会にもなっています。事業に関連するさまざまな仕組みに目がいきやすいです。」

指導医「医師としてのスキルの他に得意分野があるのが理想です。自分の子どもにもそのように話しています。」

司会「医学生も多様性の時代ですね。個人事業について学んだり、SNS戦略を考えたりできる機会が増えました。医学以外の学習ができるチャンスが以前よりも多いのですね。」

■多様性のある学び方、働き方でいい
ー最初に頑張った方が長期的にみて働きやすい

司会「医師の働き方についてご意見はありますか?年代ごとに違うものでしょうか。」

若手「ゆとり世代の私は『若いときは病院に住み込む覚悟で修練が必要』という言説を聞くと聞くと身構えてしまいます。一方で成長できると感じたら、身体的に辛くてもたくさん働きたいです。」

指導医「私は40歳まで忙しかったのですが、若いうちに経験を積んでおいてよかったです。急変時でも焦らず対処し、全身管理ができる医師になるという目標を達成できました。今は医療以外のことにも目を向けられています。」

医学生「今は外科医になりたいと思っています。若くて体力があるうちに働いて、手技を身につけたいです。医師として困らないスキルを得た上で、多方面に挑戦したいです。緊急オペで忙しいのもいいなと思います。」

若手「例えば、ショックで不穏の患者への気管挿管には、知識、手技力、度胸のすべてが必要です。デジタルコンテンツやシミュレータで効率よく学べる時代ですが、最終的には経験がものを言う局面があります。」

指導医「急変時に冷静に対処できるのが度胸の一例ですね。冷静でいるために、数をこなす必要があります。短期集中で回数を増やした方が手技がうまくなるので、修行期間を設けるといいと思います。」

若手「度胸が育つのは、人手の少ない夜間に重症患者と対峙したときだったりもします。」

指導医「たしかに、麻酔科医になって比較的すぐに一人立ちしましたが、夜間の緊急手術ではたくさん怖い思いをしました。」

医学生自分がやるしかないという状況が、知識や手技を本当の意味で身につけさせるのですね。」

若手「若手医師が定時で帰ることに苦言を呈する医師もいますが、指導医先生はどう思いますか?」

指導医「みんなが帰れないのは当たり前という時代に比べ、医療以外のことを考える時間のある勤務の方が人間らしいと思います。人それぞれでいいんです。ただし医師をやっていると、緊迫した場面は必ずあるので、最低限は対処できるように研修時代の頑張りが必要です。」

医学生「とてもいい先輩です!」

司会「何かを極めようとするとコストパフォーマンスは低下する。しかし医師として最低限のラインに立つために、最初は頑張っておいた方が長期的な目線で見ると働きやすいということですね。」

ー医学生の姿勢は二極化している

司会「理想とする医師のイメージはありますか?」

医学生「私が志望する外科の先生方は、とても親切で、臨機応変で、バリバリ働いていて理想的です。実習中は教科書的な事項ではなく、臨床に即した疑問を医師に聞いて学ぶようにしています。」

指導医「医学生時代はキャリアのことを考えたことはなかったです。研修医の頃は上級医がかっこよく見え、金魚のフンのようについて回り、たくさん手技をやらせてもらいました。将来を見通して考える間もなく仕事をこなす日々でした。」

若手「医学生さんは将来は忙しくてもいいと考えています。私の思う令和の医学生像は、医学生さんとは違いコストパフォーマンス重視のイメージです。同学年の風潮はいかがでしょうか?」

医学生忙しいところで働きたい人と、余裕のあるところで働きたい人に二極化しています。」

若手「学業に対しても二極化していますよね。米国の医師試験の勉強をする人も増えました。単純に医師として働く以上の自己実現を目標にしています。極度にコストパフォーマンスを意識する人も自己実現の形なのでしょうね。」

司会「医師免許があるといろいろなことにチャレンジしやすくなりますよね。」

指導医「医師になっても、やりたいと思ったことは何歳からチャレンジしてもいいですね。」

司会「今回のまとめとしましては、

・勉強ツールの発達で、医学生は試験対策の面でも、病院実習の面でも優秀。
・医学生の活動は多様化し、個人事業など医学+αの活躍のチャンスが増加。
・医師も医業だけでなく、多方面に付加価値を形成するのがトレンドである。しかし若いうちにしっかりと修行することが、長期的なQOLを向上させることにつながる。

というところです。以上で今回の座談会を終了します。みなさま、ありがとうございました。」

執筆:ゆっくり救急医